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第9話 王宮に届いた贈り物! リリア姫、あぶないミルクを見抜けるか!? ◆◆◆ただいま、王宮!

第9話 王宮に届いた贈り物! リリア姫、あぶないミルクを見抜けるか!?

◆◆◆ただいま、王宮!


別荘から帰る馬車が、王宮の正門をくぐった。


美しい湖畔での休暇を終え、リリアたちはようやく帰ってきたのだ。


「リリア、帰ってきたぞ」


皇帝アレクが優しく声をかける。


「うー!」


リリアは窓の外を見て、ぱたぱたと手を動かした。


王宮の建物が見えると、なんだか嬉しくなってしまう。


(おうきゅう、ただいまぁ!)


リリアにとって、ここは大好きなお父様とお母様がいる場所。


そして、仲良しのアリアにも会える場所だった。


馬車が止まると、侍女のミレがリリアを抱き上げた。


「リリア様、お帰りなさいませ!」


出迎えた使用人たちが一斉に頭を下げる。


リリアはにこにこしながら、両手を振った。


「あー!」


「まあ、リリア様。別荘では楽しく過ごせましたか?」


ミレが尋ねる。


「ちゃぷちゃぷ!」


リリアは水遊びを思い出したのか、両手をぱしゃぱしゃと動かした。


「ふふっ。とても楽しかったようですね」


エレナが微笑む。


そのとき、廊下の向こうから小さな女の子が駆けてきた。


「リリアちゃーん!」


第二夫人ヴィクトリアの娘、アリアだった。


アリアはリリアと同じく、まだ幼い王女である。


「アリア、走ると危ないわよ」


侍女のクララが慌てて後を追う。


アリアはリリアの前で立ち止まり、嬉しそうに手を伸ばした。


「リリアちゃん、あいたかった!」


「うー! あー!」


リリアも両手を伸ばす。


二人は顔を見合わせ、にこにこと笑った。


その光景を見たエレナは、優しい笑顔を浮かべた。


「二人とも、本当に仲良しね」


「はい、第一夫人様。アリア様も、リリア様に会えるのを楽しみにしていらっしゃいました」


クララも嬉しそうに答えた。


けれど、その和やかな時間を、少し離れた場所から見つめている人物がいた。


第二夫人ヴィクトリアである。


「お帰りなさい、エレナ様。リリアも元気そうね」


ヴィクトリアは穏やかな笑顔で近づいてきた。


「ただいま、ヴィクトリア様。アリアも元気そうで安心しました」


エレナはいつもどおり、優しく返事をした。


ヴィクトリアはリリアの顔をのぞき込む。


「まあ、少し大きくなったかしら?」


「うー!」


リリアはヴィクトリアを見つめた。


その瞬間、リリアの小さな鼻が、ぴくりと動いた。


(……あう?)


なんだか、いやな感じがする。


でも、まだ何が起きているのかはわからない。


リリアはエレナの服をぎゅっと握った。


◆◆◆第二夫人からの贈り物


その日の午後。


エレナが自室でリリアと過ごしていると、使用人が美しい箱を持ってやってきた。


「第一夫人様。第二夫人様から、リリア様への贈り物でございます」


「まあ、ヴィクトリア様から?」


エレナは少し驚いた。


「はい。リリア様の健やかな成長を願い、特別なミルクをご用意くださったそうです」


箱は上質な布で包まれ、美しいリボンで飾られていた。


エレナは微笑んだ。


「わざわざ用意してくださったのね。あとで、お礼を申し上げなくては」


使用人が箱を開けると、中には立派な瓶が入っていた。


高級な乳牛から採れた、王族のための特別なミルク。


瓶には上品なラベルが貼られ、丁寧に封がされている。


「とても高価な品だそうでございます」


使用人が説明した。


エレナは感心したように瓶を見つめた。


「リリアのことを気遣ってくださったのね」


その隣では、リリアがミレに抱かれていた。


「まんま!」


リリアはいつものように、元気よく声を上げる。


ミレが笑った。


「リリア様、ミルクは先ほど飲んだばかりですよ」


「うー!」


リリアは両手をぱたぱたさせた。


けれど、その視線はミルクの瓶から離れなかった。


(……あうぅ)


リリアの胸の奥で、何かがちくりとした。


瓶そのものはきれいだ。


見た目にも、変なところはない。


それなのに――。


リリアには、瓶の周りにまとわりつく、嫌な気配が感じられた。


(これぇ……いやぁ)


リリアは小さな手を伸ばした。


「あー! あー!」


「どうしたの、リリア?」


エレナが優しく尋ねる。


リリアは瓶を指さし、首をぶんぶんと横に振った。


「いや! いやぁ!」


エレナは驚いた。


普段なら、ミルクを見ると喜ぶリリアが、今日は嫌がっている。


「リリア、このミルクは飲みたくないの?」


「いやぁ!」


リリアはエレナの服にしがみついた。


ミレも不思議そうに瓶を見つめる。


「いつもなら、ミルクを見ると喜ばれるのですが……」


エレナは娘を抱きしめ、頭を優しくなでた。


「わかったわ。無理に飲ませたりしませんよ」


リリアは、ほっとしたようにエレナの胸に顔をうずめた。


(まま、のんじゃ、だめぇ……!)


リリアはまだ、うまく言葉にできない。


けれど、あのミルクを飲ませてはいけない。


それだけは、はっきりと感じていた。


ポポとピピも気づいた!


人間たちが部屋を出たあと。


エレナはリリアを抱いて窓辺に座り、ミレは贈り物の箱を片づけようとしていた。


そのとき、ポポが箱の陰から顔を出した。


「ふむ……このミルク、何か変なのだ」


ピピも瓶の近くへ寄った。


「リリアちゃん、さっきからずっと嫌がっているよね」


リリアは二匹を見つめ、小さくうなずいた。


「うー……」


「リリア、何がいやなのだ?」


ポポが尋ねる。


リリアは瓶を指さした。


「これぇ……だめぇ」


ピピは瓶の周囲をじっと観察した。


「見た目は普通だけど……魔力の気配が変だよ」


ポポも鼻をひくひくさせる。


「うーん……おいしそうな匂いはするのだ。でも、なんだか嫌な感じがするのだ」


「ポポ、味見しちゃだめだよ!」


「しないのだ! ポポだって危ないものはわかるのだ!」


「さっき、知らない木の実を食べようとしてたでしょ!」


「それは別のお話なのだ!」


二匹が言い合っている間も、リリアはミルクの瓶を見つめていた。


(これぇ、ままが、もらったのぉ……)


エレナは、ヴィクトリアが自分たちを気遣ってくれたのだと思っている。


もし、ミルクに何かが入っていると伝えられなかったら。


もし、お母様が飲ませてしまったら。


リリアは小さな手をぎゅっと握った。


「だめぇ……!」


その声は、いつもより少しだけ強かった。


ポポとピピは顔を見合わせた。


「リリアちゃん……本当に危険だと思っているんだね」


「うん。これは、ちゃんと調べなきゃ」


ピピが真剣な表情でうなずいた。


「でも、人間にわかるように伝えないといけないのだ」


ポポが考え込む。


「どうすればいいのかな?」


リリアは二匹を見て、少し考えた。


それから、瓶のそばにちょこんと座り――。


ぽんっ!


小さな光を瓶に当てた。


すると、瓶の周りにまとわりついていた黒っぽい気配が、一瞬だけ揺らめいた。


「やっぱり……!」


ピピが声を上げる。


「リリアちゃんの魔法に反応したよ!」


ポポも驚いた。


「これは、ただのミルクではないのだ……!」


リリアはむっと頬を膨らませた。


「めっ!」


その一言に、ポポとピピは思わずうなずいた。


◆◆◆第一夫人の優しさ


翌朝。


エレナは、ヴィクトリアにお礼を伝えようと考えていた。


「せっかくリリアのために贈り物を用意してくださったのですもの。お礼を申し上げなくてはね」


エレナはそう言って、贈り物の箱を持ってきてもらった。


リリアはその箱を見るなり、エレナの服をぎゅっとつかんだ。


「あー! いやぁ!」


「リリア、どうしたの?」


エレナが尋ねると、リリアは首をぶんぶんと横に振る。


「いや! いやぁ!」


エレナは困ったように微笑んだ。


「本当に、このミルクは嫌なのね」


リリアは何度もうなずいた。


(まま、わかってぇ……)


リリアはエレナの顔をじっと見つめた。


その目には、いつものいたずらっぽい輝きとは違う、真剣な色があった。


エレナは少し考えたあと、ミレに声をかけた。


「このミルクは、まだリリアに飲ませないでおきましょう」


「よろしいのですか?」


「ええ。せっかくの贈り物だけれど、リリアがこれほど嫌がるのですもの。念のため、宮廷の医師に確認してもらいましょう」


ミレはすぐに頭を下げた。


「かしこまりました」


リリアは、エレナの胸に顔を寄せた。


(まま……ありがとぉ)


まだ人間の言葉では伝えられない。


それでも、エレナは娘をぎゅっと抱きしめてくれた。


「大丈夫よ、リリア。あなたが嫌がるものを、無理に飲ませたりしませんからね」


その言葉を聞き、リリアは安心したように笑った。


「ままぁ!」


「はいはい。ここにいますよ」


エレナは優しく頭をなでた。


だが、贈り物に隠された危険は、まだ完全には明らかになっていなかった。


◆◆◆ヴィクトリアの計算違い


その日の午後。


ヴィクトリアは、自室で使用人から報告を受けていた。


「第二夫人様。第一夫人様は、まだミルクをリリア様に飲ませていないそうです」


ヴィクトリアの指が、ぴたりと止まった。


「……何ですって?」


「リリア様が嫌がられたため、宮廷の医師に確認を依頼されたとのことです」


ヴィクトリアは、笑顔を保とうとした。


「そう……赤ちゃんは気まぐれですものね」


けれど、使用人が退室すると、その表情は一変した。


「なぜ……?」


彼女は机に置かれた扇を強く握った。


「ただの赤ちゃんが、どうして……」


リリアがミルクを嫌がることは、想定していなかった。


エレナがすぐに飲ませなかったことも、計算外だった。


「まだ、何も決まったわけではないわ」


ヴィクトリアは自分に言い聞かせるようにつぶやいた。


「医師が何を見つけるか、それを確かめなくては……」


彼女は窓の外を見た。


王宮の庭では、使用人たちがいつもどおり働いている。


何も知らない者たちにとって、今日は平穏な一日だった。


しかし、ヴィクトリアの心には、少しずつ焦りが広がっていた。


馬車襲撃の失敗に続き、今度も計画どおりに進まない。


その理由が、まだ幼いリリアにあるかもしれない。


そう考えると、彼女は不安を抑えられなかった。


天界の神々が見たもの


そのころ、神界。


ゼノたちは、水晶を通して王宮の様子を見守っていた。


水晶には、リリアがミルクの瓶を嫌がり、エレナの服をぎゅっとつかむ姿が映っていた。


「……リリアが気づいたようだな」


ゼノが低い声で言った。


アテナは、真剣な表情で水晶を見つめる。


「瓶に、よくない魔力の痕跡があるようです。ですが、何が入っているのかは、まだ確かめる必要があります」


オルフェは目を細めた。


「人間界の陰謀が、また動き始めたか……」


フィオナは心配そうに胸に手を当てた。


「リリアはまだ小さいのに。大好きなお母様を守ろうとしているのね」


ゼノは、しばらく黙っていた。


やがて、静かに口を開く。


「リリアは、ただ力が強いだけではない。周囲の危険を感じ取り、大切な者を守ろうとしている」


アテナもうなずいた。


「けれど、まだ赤ちゃんです。これから先、同じような危険が何度も訪れるかもしれません」


「だからこそ、見守らねばならぬ」


ゼノは水晶の中のリリアを見つめた。


その小さな手は、エレナの服をしっかりと握っている。


「リリアよ。お前が守りたいものを、守れるように……」


神々は、静かに祈るように水晶を見つめ続けた。


◆◆◆まだ終わらない陰謀


夜。


リリアはエレナの腕の中で、すやすやと眠っていた。


そのそばでは、ポポとピピが小声で話し合っている。


「今日のリリアは、いつもより真剣だったのだ」


「うん。あのミルク、絶対にちゃんと調べてもらわないと」


「でも、リリアはまだ赤ちゃんなのだ……」


ポポは、眠っているリリアを見つめた。


「大人たちが守ってあげなきゃいけないのに、リリアが大人たちを守っているのだ」


ピピは静かにうなずいた。


「だからこそ、わたしたちもリリアちゃんを守るの」


二匹はリリアのそばに寄り添った。


一方、王宮の別の部屋では、ヴィクトリアが一人、窓の外を見つめていた。


贈り物のミルクが、医師の手に渡った。


その結果がどうなるのか。


彼女には、まだわからない。


「……次は、失敗できないわ」


ヴィクトリアは、誰にも聞こえない声でつぶやいた。


彼女は、自分の計画が崩れ始めていることを感じていた。


だが、彼女の背後にある陰謀は、彼女一人の考えで始まったものではない。


遠く離れた隣国では、皇帝が静かに国を治めていた。


その正体も、その真の目的も、まだ誰にも知られていない。


王宮の陰謀は、まだ始まったばかりだった。


そして翌朝。


宮廷の医師から、エレナのもとへ報告が届くことになる。


リリアが嫌がったミルクには、いったい何が隠されていたの



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