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第75話 小瓶に隠された猛毒! 神々が恐れる黒幕の影

第75話 小瓶に隠された猛毒! 神々が恐れる黒幕の影


白く可憐な花に隠された恐ろしい毒


法廷に、兵士が持ち込んだ小瓶と、アリア王女のぬいぐるみが置かれていた。


皇帝アレクは、小瓶を見つめながら、厳しい表情で口を開いた。


「この小瓶の中身が何なのか、詳しく調べる必要がある。中身を特定し、それが毒入りのミルクと関係しているのかを確かめよ」


「はっ!」


兵士は深く頭を下げた。


ヴィクトリアは、何も言わずに小瓶を見つめていた。


その顔からは血の気が引いている。


「陛下……私は、本当に何も知りませんわ」


かすれた声でそう訴えたが、アレクはすぐには答えなかった。


「今はまだ、何も決めつけてはいない。だからこそ、調べるのだ」


アレクは裁判に集まった者たちを見渡した。


「小瓶の中身が判明するまで、今日の裁判はここまでとする。明日、改めて裁判を開く」


「承知いたしました」


兵士たちは小瓶を慎重に保管し、宮廷医師のもとへ運んだ。


ヴィクトリアは、その様子を黙って見送った。


(お願い……ただの薬であって。何も見つからないで……!)


心の中で祈りながらも、彼女の指先は小刻みに震えていた。


一方、宮廷医師たちは、小瓶を受け取るとすぐに調査を始めた。


「中身をこぼさないよう、慎重に扱ってくれ」


「はい。成分を詳しく調べましょう」


医師たちは、わずかに残された粉末を器具に取り分け、色や匂い、含まれている成分を一つずつ確認していった。


時間が過ぎていく。


やがて、一人の医師が調査の手を止めた。


「……これは、まさか」


別の医師が顔を上げる。


「何かわかったのか?」


医師は検査結果を見つめたまま、信じられないという顔で答えた。


「スズランの粉末です」


「スズランだと……?」


部屋の空気が、一瞬で張り詰めた。


スズランは、白く小さな花を鈴のように咲かせる、可憐な花だ。


その姿は清らかで、見る者の心を和ませる。


しかし、その美しい花には、命を脅かすほどの猛毒成分が含まれている。


扱いを誤れば、非常に危険な植物だった。


「間違いないのか?」


「はい。成分を確認しました。これはスズランの粉末です」


医師たちは顔を見合わせた。


そのうちの一人が、青ざめた顔でつぶやいた。


「もし、この粉末がミルクに混ぜられていたのなら……」


「リリア王女が口にしていた可能性もある、ということか……」


誰も、すぐには言葉を返せなかった。


リリア王女は、まだ一歳の小さな赤ちゃんだ。


もし、あの小さな体に猛毒が入り込んでいたら。


そう考えただけで、医師たちは背筋が凍る思いだった。


「こんなものを、王宮に持ち込むなんて……」


「しかも、ぬいぐるみの中に隠されていたのだろう? いったい、誰が何のために……」


医師たちは、改めて小瓶を確認した。


これは、単なる怪しい薬ではない。


王女の命を奪いかねない、危険な毒だった。


やがて、責任者の医師が立ち上がった。


「この事実を、ただちに皇帝陛下へお伝えしなければ」


「はい!」


医師は調査結果をまとめ、兵士に託した。


その報告は、まもなく皇帝アレクのもとへ届けられることになる。


そして翌日の裁判では、この小瓶の中身が重要な証言となるはずだった。



天界を震わせる真実と、迫り来る危機


その夜。


皇帝アレクのもとへ、宮廷医師からの報告が届けられた。


「陛下、小瓶の中身が判明いたしました」


「何だったのだ?」


医師は、緊張した面持ちで答えた。


「スズランの粉末です。猛毒成分が含まれております」


アレクの表情が、一瞬で険しくなった。


「……スズランだと?」


「はい。もしミルクに混ぜられていたのであれば、口にした者の命に関わる危険がございます」


アレクは、机の上に置かれた報告書を見つめた。


毒入りのミルク。


不審な小瓶。


そして、アリア王女のぬいぐるみの中に隠されていた粉末。


それらが無関係だとは、もう考えにくかった。


だが、アレクは感情だけで結論を出すことはしなかった。


「明日、裁判を開く。医師には法廷で証言してもらおう。調査した内容を、すべて正確に伝えてくれ」


「かしこまりました」


医師が退室すると、アレクは深く息を吐いた。


(いったい、誰がこんなことを……)


彼の脳裏には、まだ幼いリリアの笑顔が浮かんでいた。


もし、あの小さな娘が毒を口にしていたら。


考えるだけで胸が締めつけられる。


それでも、皇帝として真実を明らかにしなければならない。


アレクは、翌日の裁判に向けて静かに決意を固めた。


一方、そのころ――。


天界では、神々が水晶の鏡を囲み、大騒ぎになっていた。


「スズランだとおおおっ!?」


創造神ゼノの叫び声が、天界に響き渡る。


「なんということなの……!」


知恵と魔法の女神アテナも、驚きを隠せなかった。


「スズランは、見た目こそ可憐だけれど、毒性のある危険な植物よ。それが小瓶に入っていたなんて……」


運命と予言の神オルフェは、水晶の鏡を見つめながら、険しい表情を浮かべた。


「もし、リリアがあの毒を口にしていたら……。考えたくもない」


生命と動物の女神フィオナは、胸の前で両手をぎゅっと握りしめた。


「リリアは、まだ小さな赤ちゃんなのよ。そんな子に、どうしてこんな恐ろしいことができるの……?」


神々の間に、重苦しい沈黙が流れた。


やがて、ゼノが怒りをにじませた声で言った。


「ヴィクトリアという女……。いったい、どこまでリリアたちを危険にさらすつもりなのだ!」


「でも、ゼノ」


アテナが静かに口を開いた。


「私たちは、まだ見落としてはいけないことがあるわ」


ゼノは顔を向けた。


「何だ?」


「ヴィクトリアが数々の事件に関わっていたとしても、彼女だけですべてを計画していたとは限らないということよ」


オルフェもうなずいた。


「そうだ。彼女の背後には、まだ姿を見せていない者がいる可能性がある」


フィオナの表情が曇った。


「本当の黒幕が別にいるのなら……この事件が解決したとしても、王宮の危険はなくならないのね」


「そのとおりだ」


オルフェは、水晶の鏡に映る王宮を見つめた。


「今はヴィクトリアの罪を明らかにすることが先だ。しかし、背後にいる者が動き出せば、さらに大きな危機が訪れるかもしれない」


ゼノは腕を組み、難しい顔をした。


「リリアはまだ一歳だ。あの子は、王宮で起きている危険をすべて理解できているわけではない」


「それでも、リリアはいつも自分で何とかしようとするでしょう?」


フィオナは心配そうにつぶやいた。


「ポポとピピがそばにいてくれるのは心強いわ。でも、もし相手がもっと強い力を持っていたら……二匹だけでリリアを守りきれるかしら」


「ポポとピピを信じていないわけではない」


ゼノは、いつになく真剣な声で言った。


「だが、相手が何者なのかも、どれほどの力を持っているのかも分からぬ。わしらも、これまで以上に注意深く見守らねばならぬ」


アテナは、そっと目を伏せた。


「リリアには、人間の世界で大切な家族ができた。だからこそ、あの子を失うわけにはいかない」


水晶の鏡には、王宮の一室で眠るリリアの姿が映っていた。


リリアは何も知らず、ふかふかの寝台で気持ちよさそうに眠っている。


「……ままぁ……ぱぱぁ……」


寝言をつぶやきながら、リリアは小さな手を動かした。


その姿を見たフィオナが、悲しそうに微笑んだ。


「こんなに小さな子が、どうしてこんな恐ろしい事件に巻き込まれなくてはいけないの……」


ゼノはしばらく黙っていたが、やがて決然と言った。


「リリアを守る。王宮にどんな危険が迫ろうとも、あの子を一人にはさせぬ」


神々は、そろって水晶の鏡を見つめた。


翌日の裁判で、小瓶の秘密は明らかになるだろう。


しかし、それですべてが終わるとは限らない。


ヴィクトリアの背後に潜む、まだ誰も知らない存在。


その影は、今も静かに王宮を見つめているのかもしれなかった。


そして、眠るリリアの知らないところで、次の危機が少しずつ近づいていた。


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