第74話 熊のぬいぐるみに隠された秘密! リリアの過去視魔法
第74話 熊のぬいぐるみに隠された秘密! リリアの過去視魔法
◆◆◆ペンダントから見守るリリア
王宮では、ヴィクトリアの裁判が続いていた。
リリアは自分の部屋で、胸元のペンダントをじっと見つめていた。
ペンダントには、法廷の様子が映し出されている。
「ぱぱぁ……がんばってぇ……」
リリアは小さな手をぎゅっと握った。
「りりあ、ぱぱを、おうえんしゅるぅ!」
そのころ、神界でもゼノ、アテナ、オルフェ、フィオナの四人が、水晶の鏡を囲んでいた。
法廷に兵士が駆け込み、毒入りミルクに関する重要な証拠が見つかったと報告した場面を、神々も見ていたのだ。
「毒入りミルクの箱の近くに、小さな瓶があったという証言か……」
ゼノは顎に手を当てて考え込んだ。
「もし、その瓶が見つかれば、事件の真相に近づけるかもしれないわね」
アテナが言った。
すると、ゼノはリリアの様子を水晶の鏡で確認した。
「リリアよ。お前の魔法で、過去に何があったのか見てみなさい」
「かこぉ?」
「そうだ。ヴィクトリアがミルクを用意したとき、何をしていたのか。そして、小さな瓶がその後どこへ行ったのかを確かめるのだ」
リリアは目をぱちぱちさせた。
「ちいちゃい、びんしゃん……?」
「その瓶がどこに隠されているのか分かったら、兵士たちに知らせなさい。証拠を見つけることができるかもしれない」
ゼノの説明を聞いたリリアは、元気よくうなずいた。
「わかったぁ! りりあ、やってみりゅぅ!」
「かこしゃんみるまほうちらない」
「おちぇて!」
ゼノが魔法の呪文を伝えた。
「リリアはまだ、言葉をちゃんと話せないから、簡単な呪文を言うから忘れるなよ」
「むかし、むかし、おめめをあけてと唱えるのじゃあ!」
他の神様は笑いをこらえていた!
そして、ポポとピピがふわふわの体を揺らした。
ポポがやる気になり
「ポポにおまかせなのだ! ……あれ? 今回はリリちゃんがやるのだ?」
「ポポ、じゃましちゃだめぇ!」
「ピピもいっしょにやる〜! リリちゃん、がんばってねぇ!」
リリアは二匹ににっこり笑うと、ペンダントを両手で包み込んだ。
◆◆◆過去を見る魔法
リリアは目を閉じ、小さな声で呪文を唱え始めた。
「むかち、むかち、おめめしゃんをあけて」
ペンダントが、金色の光を放った。
その光が広がると、リリアの目の前に、過去の光景が浮かび上がった。
そこに映っていたのは、ヴィクトリアの部屋だった。
ヴィクトリアの前には、ローレン医師が立っていた。
ローレン医師は、小さな瓶をヴィクトリアに手渡した。
ヴィクトリアは周囲を確かめると、その瓶を受け取った。
そして、ミルクのそばへ移動し、小さな瓶の中身をミルクに入れた。
「……あっ!」
リリアは思わず声を上げた。
「ままぁ……じゃない、ヴィクトリアしゃま、なにちてるのぉ……?」
過去の映像は、さらに続いた。
ヴィクトリアは小さな瓶を手にしたまま、部屋の中を見回した。
やがて、彼女はアリアが大切にしていた熊のぬいぐるみを手に取った。
そして、小さな瓶を、そのぬいぐるみの中へ隠したのだった。
映像が消えると、リリアは目を大きく見開いた。
「わかったぁ! くましゃんのなかぁ!」
神界の神々も、映像を見ていた。
「なるほど。瓶を捨てずに、アリア王女のぬいぐるみに隠していたのか」
ゼノがうなずいた。
「リリア、その熊のぬいぐるみが今どこにあるのか、兵士たちに知らせるのよ」
アテナが助言した。
リリアは、得意そうに胸を張った。
「まかちぇてぇ! りりあが、みちゅけりゅのぉ!」
小さな姫の目が、きらりと輝いた。
◆◆◆熊のぬいぐるみを動かせ!
リリアはペンダントを見つめた。
そこには、ヴィクトリアの部屋を調べている兵士たちの姿が映っていた。
兵士たちは、部屋の中を慎重に調べていたが、熊のぬいぐるみにはまだ気づいていない。
「くましゃん、あそこにいるぅ……」
リリアは小さな指を伸ばした。
「こっちに、おいでぇ……!」
リリアが魔法を唱えると、アリアの大好きな熊のぬいぐるみが、ふわりと浮かび上がった。
そのまま、誰にも気づかれないように部屋の中を移動していく。
兵士たちが別の場所を調べている、その目の前まで来たとき――。
ぽとんっ!
熊のぬいぐるみが、床に落ちた。
「ん? 今、何か落ちてこなかったか?」
兵士の一人が振り返った。
「熊のぬいぐるみか……。なぜ、こんなところに?」
兵士は不思議そうにぬいぐるみを拾い上げた。
しかし、ただのぬいぐるみに見えたため、特に気に留めず、元の場所へ戻そうとした。
リリアは、ペンダントの向こうで慌てた。
「ちがうのぉ! そこじゃ、ないのぉ!」
これだけでは、気づいてもらえない。
リリアは、もう一度魔法を使った。
すると、熊のぬいぐるみのお尻に、不自然な印が浮かび上がった。
兵士は、ぬいぐるみを持つ手を止めた。
「……待て。この印は何だ?」
ぬいぐるみのお尻には、周囲の布とは違う、不自然な痕がついていた。
兵士は慎重に確かめた。
「中に何か隠しているのかもしれない……」
兵士は剣を取り出し、布を少しだけ開いた。
すると、内部に何かが入っているのが見えた。
「これは……!」
兵士が取り出したものは、小さな瓶だった。
「まさか、これが……!」
兵士は瓶と熊のぬいぐるみを大切に持つと、すぐさま法廷へ向かった。
◆◆◆見つかった小さな瓶
法廷では、アレクが兵士の報告を待っていた。
ヴィクトリアは、落ち着かない様子で座っていた。
そこへ、扉が開いた。
「陛下! 失礼いたします!」
先ほどの兵士が、急いで法廷へ入ってきた。
手には、熊のぬいぐるみと小さな瓶があった。
「毒入りミルクの事件に関係すると思われるものを発見いたしました!」
アレクは立ち上がった。
「それは何だ?」
「ヴィクトリア様のお部屋を調べていたところ、この熊のぬいぐるみが見つかりました。内部を確認したところ、小さな瓶が隠されておりました」
兵士は、瓶を慎重に差し出した。
法廷がざわめいた。
アレクは瓶を見つめ、表情を引き締めた。
「その瓶を詳しく調べよ。中身が何なのか、毒入りミルクの事件と関係があるのか、確かめるのだ」
「承知いたしました!」
兵士は深く頭を下げた。
ヴィクトリアは、熊のぬいぐるみを見た瞬間、顔面蒼白になった。
(どうして……? どうして、あの瓶が見つかったの……?)
彼女は、何とか平静を保とうとした。
しかし、震える指先までは隠せなかった。
アレクは、その変化を見逃さなかった。
「ヴィクトリア。その瓶に、心当たりはあるか?」
「わ、私は……知りません……」
声がかすれた。
アレクは、それ以上すぐに追及することはせず、瓶の調査を命じた。
まだ、中身が何なのかは分からない。
だが、事件の真相につながる重要な手がかりが見つかったのだ。
5 リリア、えっへん!
そのころ、リリアはペンダントを胸元に戻していた。
神界では、四人の神々がリリアを見つめていた。
「リリア、よくやったな。過去を見て、瓶の隠し場所まで見つけるとは」
ゼノが褒めると、リリアの顔がぱあっと明るくなった。
「あのねぇ、りりあねぇ、ヴィクトリアしゃまが、ローレンせんせいから、ちいちゃいびんしゃんをもらったの、みたのぉ!」
リリアは、見たことを一生懸命に説明した。
「それでねぇ、ミルクに、なにかいれてたのぉ! それから、くましゃんのなかに、かくちたのぉ!」
「そうか。だから、熊のぬいぐるみを動かしたのだな」
ゼノがうなずいた。
リリアは、ますます得意そうな顔になった。
そして、突然、あごの下に手を当てた。
「りりあ、えらい!」
さらに、あごの下に、ふさふさの髭があるかのように手を動かす。
「えっへん! りりあ、えらいのだ!」
ゼノの真似をしたリリアに、アテナが吹き出した。
「ふふっ! ゼノの真似をしているのね!」
フィオナも笑いながら、リリアを見つめた。
「リリアったら、かわいいわねぇ」
ポポも胸を張った。
「さすがリリちゃん! ポポにおまかせなのだ!」
「ポポ、なにもしてないでしょぉ!」
ピピの突っ込みに、神界は笑い声に包まれた。
けれど、ゼノは水晶の鏡に映る法廷へ、再び視線を戻した。
小さな瓶が見つかった。
それが何を意味するのか、これから明らかになる。
リリアの魔法が導いた証拠によって、裁判は大きく動き始めようとしていた。




