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第73話 毒入りミルクの証言! 追い詰められる第二夫人

第73話 毒入りミルクの証言! 追い詰められる第二夫人


◆◆◆毒入りミルクについての追及


法廷では、ヴィクトリアの召し使いたちへの質問が続いていた。


アレクは、先ほどの証言を整理するように、二人を見つめた。


「次に、毒入りミルクの事件について聞きたい」


その言葉に、ヴィクトリアの肩がわずかに揺れた。


アレクは召し使いの一人に視線を向けた。


「ミルクを用意したときのことを、覚えているか?」


「はい、陛下……」


召し使いは緊張した様子で答えた。


「私は、第二夫人から、このミルクを渡すようにと命じられただけでございます。中身について、詳しいことは何も存じません」


「では、ほかに何か聞いていることはないか?」


召し使いは少し考えてから、慎重に口を開いた。


「以前、追放された召し使いが話していたことなのですが……ミルクの入った箱の近くに、小さな瓶が置かれていたそうです」


アレクの目が鋭くなった。


「小さな瓶?」


「はい。ただ、私はその瓶を直接確認したわけではございません。追放された召し使いから聞いただけでございます」


アレクはうなずき、続きを促した。


「それから、第二夫人は、ミルクが飲まれたかどうかを何度も気にしていらっしゃったと聞いております」


ヴィクトリアの指先が、ぎゅっと握りしめられた。


召し使いは、怯えながらも話を続けた。


「さらに、そのミルクを医師に検査してもらうことになったと知ったとき、第二夫人は少しイライラされているように感じました……」


法廷に、静かなざわめきが広がった。


アレクは、ヴィクトリアから目を離さなかった。


彼女の顔色が、明らかに変わっていたからだ。


青ざめた頬。


固く結ばれた唇。


そして、落ち着かない指先。


アレクは何も言わず、その様子を見つめていた。


召し使いの証言だけで、すべてが証明されたわけではない。


しかし、これまでの契約書や日記の記録と合わせれば、無視できない話だった。


「分かった。二人とも、下がりなさい」


「は、はい。陛下」


召し使いたちは一礼し、法廷の端へと下がった。


アレクは、改めてヴィクトリアに向き直った。


「ヴィクトリア。今の証言について、説明してもらおうか」


◆◆◆第二夫人の言い訳


ヴィクトリアは、慌てて顔を上げた。


「陛下! まさか、あの召し使いたちの話を信じていらっしゃるのですか?」


声には、焦りがにじんでいた。


「以前にも申し上げました。セドリック様との過ちは、一度だけです。その後は、ただお話を聞いていただいていただけなのです!」


アレクは黙って聞いていた。


ヴィクトリアは、さらに言葉を重ねた。


「召し使いたちに部屋へ入らないよう命じたのは、セドリック様のお立場を考えてのことです。皇帝陛下の弟君である方が、私の部屋を訪れていると知られれば、余計な噂が立ってしまいますでしょう?」


彼女は悲しげに目を伏せた。


「ローレン医師についても、同じです。夜に私の部屋へ来ていたのは、お金を受け取るためでした」


アレクの表情は変わらなかった。


「では、なぜ人目を避けて呼ぶ必要があった?」


「それは……」


ヴィクトリアは一瞬、言葉に詰まった。


だが、すぐに顔を上げた。


「ローレン医師が、私を脅していたからです! 私は、もう脅さないでくださいと、何度もお願いしていたのです。誰かに知られれば、私の立場がますます悪くなると思い、秘密にしておりました」


ヴィクトリアは涙を浮かべた。


「陛下、私はずっと苦しんでいたのです……。どうか、私の話も聞いてくださいませ」


アレクは、しばらく彼女を見つめた。


そして、冷静で冷たい口調で問いかけた。


「それでは、毒入りミルクについては、どう説明するのだ?」


ヴィクトリアの顔が、再びこわばった。




◆◆◆ミルクへの疑い


「毒入りミルクについて、どう説明するのだ?」


アレクの問いが、法廷に響いた。


ヴィクトリアは、胸元に手を当てた。


「陛下……私は、第一夫人に喜んでいただきたかっただけなのです」


彼女は、悲しそうな表情を浮かべた。


「第一夫人は、あんなにもお優しい方です。私は感謝の気持ちを込めて、ミルクを贈ったのです。それなのに、私の贈り物を疑われるなんて……」


ヴィクトリアは目元を押さえた。


「ミルクを医師に検査すると聞いたとき、私はとても悲しく、傷つきました。どうして私がそんなことをすると思われるのかと……。だから、少しイライラしてしまったのです」


彼女は涙を浮かべながら、アレクを見つめた。


「それだけのことです。私は、第一夫人を傷つけるつもりなどありませんでした」


法廷にいた人々は、ヴィクトリアの言葉を聞いていた。


しかし、彼女の説明をそのまま信じる者ばかりではなかった。


セドリックとの密会。


ローレン医師への金銭の受け渡し。


そして、毒入りミルクを気にしていたという召し使いの証言。


疑わしい点は、次々と積み重なっていた。


アレクは、感情を表に出さずに言った。


「お前の気持ちは聞いた。だが、気持ちを語るだけでは、疑いは晴れない」


「陛下……」


「ミルクの箱の近くに小さな瓶があったという話も、確認する必要がある。追放された召し使いの証言も含め、事実を調べなければならない」


ヴィクトリアは唇をかんだ。


小さな瓶。


その言葉が、頭の中で何度も繰り返されていた。


まさか、あの件について何か見つかったというのだろうか。


いや、そんなはずはない。


ヴィクトリアは自分に言い聞かせたが、不安は消えなかった。


4 突然の報告


そのときだった。


法廷の扉が勢いよく開いた。


「陛下! 裁判中に失礼いたします!」


兵士が慌てた様子で駆け込んできた。


法廷にいた全員が、一斉にそちらを振り返った。


アレクは眉を寄せた。


「何事だ。裁判中だぞ」


兵士は、すぐにひざまずいた。


「申し訳ございません! しかし、毒入りミルクの事件について、重要な証拠を発見いたしました!」


その言葉に、法廷が大きくざわめいた。


「重要な証拠だと?」


アレクの声が鋭くなる。


「はい、陛下。毒入りミルクの事件に関係する証拠でございます。詳しい内容を、ご報告させていただきたく存じます」


アレクは、兵士の表情を見つめた。


「分かった。ここで報告しなさい」


「はっ!」


兵士が顔を上げた。


その瞬間、ヴィクトリアの顔から血の気が引いた。


毒入りミルクの証拠。


今になって、そんなものが見つかったというのか。


ヴィクトリアは、震えそうになる手を必死に押さえた。


(まさか……そんなこと、ありえないわ……)


心の中では、焦りが激しく渦巻いていた。


これまで何とか言い逃れてきた。


ローレン医師のことも、セドリックとの関係も、脅されていたのだと説明してきた。


けれど、もし毒入りミルクについて決定的な証拠が見つかったのなら――。


ヴィクトリアは、兵士を見つめたまま動けなかった。


アレクは、法廷にいる全員へ聞こえる声で告げた。


「報告を聞こう。毒入りミルクについて、何が見つかったのか、すべて話しなさい」


兵士は深く頭を下げた。


そして、重要な証拠について説明を始めようとした。


ヴィクトリアの言い逃れを崩す新たな事実が、明らかになろうとしていた。


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