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第71話 明かされる血の真実! アリア王女の本当の父親

第71話 明かされる血の真実! アリア王女の本当の父親


◆◆◆宮廷医師からの報告


翌日。


アレク皇帝のもとに、宮廷医師たちが呼び出された。


「陛下。アリア王女が陛下のお子様であるかどうかを調べるには、陛下とアリア王女、双方の血液を用いた鑑定が必要になります」


医師の説明に、アレクは真剣な表情で耳を傾けた。


「その鑑定は、裁判の場で行えるのか?」


「はい。ただし、アリア王女ご本人にも裁判所へお越しいただく必要がございます」


アレクは黙り込んだ。


アリアは、まだ幼い赤ん坊だ。


大人たちの争いなど理解できない年齢であり、裁判所のような場所へ連れていけば、怖い思いをするかもしれない。


「……幼いアリアを、あの場へ連れていくのか」


「陛下。私どもも、王女様にとって負担になることは承知しております。しかし、血縁関係を明らかにするには、避けられない手続きでございます」


アレクは目を伏せた。


アリアは何も知らない。


ヴィクトリアが何をしたのかも、自分の出生にどんな秘密が隠されているのかも。


それでも、これまでの事件を曖昧なままにするわけにはいかなかった。


アレクはゆっくりと顔を上げた。


「分かった。アリアを出廷させよう。ただし、必要な鑑定が終わったら、すぐに法廷から退出させること。幼い子どもを、いつまでもあの場に置いておくつもりはない」


「承知いたしました」


医師たちは一礼した。


アレクは窓の外を見つめ、静かにつぶやいた。


「どうか……私の思い違いであってくれ」


その願いが叶うかどうかは、まだ誰にも分からなかった。


◆◆◆裁判の再開


やがて、裁判が再開された。


法廷にはアレク皇帝、ヴィクトリア、セドリック、裁判官、騎士たち、そして関係者が集まっていた。


裁判官が立ち上がり、ヴィクトリアに告げた。


「第二夫人ヴィクトリア。本日は、アレク皇帝陛下とアリア王女の血縁関係について、鑑定を行います」


その言葉を聞いた瞬間、ヴィクトリアの顔色が変わった。


「……鑑定ですって?」


彼女は慌ててアレクを振り返った。


「陛下! お待ちください! そのようなことをすれば、アリアが傷ついてしまいます!」


ヴィクトリアは悲しそうな顔を作り、声を震わせた。


「まだ幼いアリアに、こんなひどいことをなさるのですか? やはり、陛下は私たちを愛してくださらないのですね……」


法廷に、彼女の声が響いた。


しかし、アレクの表情は変わらなかった。


「ヴィクトリア。アリアが私の娘であるなら、何も恐れる必要はないはずだ」


「陛下……!」


「私は、アリアを傷つけるために鑑定を行うのではない。真実を明らかにするためだ。これ以上、疑いを残したままにはできない」


アレクの冷静な言葉に、ヴィクトリアは唇をかんだ。


彼女は何かを言おうとしたが、すぐには言葉が出てこなかった。


そのとき、法廷の扉が開いた。


二人の宮廷医師に付き添われ、アリア王女が姿を現した。


小さなアリアは、見慣れない場所と大勢の人々に囲まれ、不安そうに辺りを見回していた。


ヴィクトリアは立ち上がった。


「アリア! ママよ!」


彼女は、いつものようにアリアを呼んだ。


けれど、アリアはヴィクトリアを見ると、びくっと体を震わせた。


そして、医師の後ろへ隠れてしまった。


「……あぅ……」


小さな手で医師の服をぎゅっと握り、怯えた目でヴィクトリアを見つめている。


「アリア……?」


ヴィクトリアの顔がこわばった。


自分を見れば、いつも母親を求めてくるはずのアリアが、今は近づこうともしない。


法廷にいる人々も、その様子を静かに見守っていた。


アレクは、アリアの震える姿を見て、胸を痛めた。


「鑑定を始めなさい」


皇帝の声が、法廷に響いた。




◆◆◆血液が示す真実


医師の一人が、法廷の中央へ進み出た。


手には、小さな容器が用意されていた。


「これから、血液による親子鑑定を行います」


医師は、裁判官や関係者にも分かるように説明を始めた。


「こちらの液体に、陛下とアリア王女、それぞれの血液を入れて調べます。今回用いる鑑定方法では、親子であれば血液が混ざり、親子でなければ分離した状態になります」


ヴィクトリアは、青ざめた顔で容器を見つめていた。


「それでは、陛下。採血をさせていただきます」


医師がアレクのもとへ進み、少量の血液を採取した。


アレクは一言も発さず、静かに腕を差し出していた。


続いて、もう一人の医師がアリアのもとへ向かった。


「アリア王女、少しだけお手伝いしますね」


医師が優しく声をかけたが、アリアは何をされるのか分からず、怖くなって泣き出してしまった。


「やぁぁ……! ままぁ……!」


小さな涙が頬を伝う。


ヴィクトリアは思わず身を乗り出した。


「アリア!」


しかし、アリアは医師の服を握りしめ、泣きながら体を縮めた。


医師はできるだけ手早く採血を済ませた。


「もう終わりましたよ、アリア王女」


それでも、アリアの涙はすぐには止まらなかった。


医師たちは、採取した二人の血液を、それぞれ鑑定用の液体へ入れた。


法廷にいる全員が、容器を見つめた。


しばらくして、医師の表情が変わった。


血液は混ざらず、分離した状態になっていた。


「……鑑定結果が出ました」


医師は、はっきりと告げた。


「アリア王女とアレク皇帝陛下は、親子ではありません」


法廷がざわめいた。


「なんだと……?」


アレクは、目の前の結果を見つめたまま、しばらく言葉を失った。


心のどこかで疑っていたことが、ついに明らかになったのだ。


ヴィクトリアは、その場で力が抜けたように崩れ落ちた。


「そ、そんな……!」


しかし、裁判はまだ終わらなかった。


アレクは、すぐに次の指示を出した。


「セドリックを呼べ」


◆◆◆もう一つの鑑定


呼び出されたセドリックは、法廷に入るなり、険しい表情で周囲を見回した。


「兄上、いったい何の用ですか?」


アレクは冷たく答えた。


「アリアとお前の血縁関係を調べる」


「……何ですって?」


セドリックの顔から、血の気が引いた。


「医師よ。セドリックの採血を行い、アリアの血液とともに鑑定しなさい」


医師はうなずき、セドリックから血液を採取した。


そして、アリアの血液とともに鑑定用の液体へ入れた。


法廷は再び静まり返った。


今度は、血液がゆっくりと混ざり合っていった。


医師は結果を確認し、裁判官とアレクに向き直った。


「鑑定の結果、アリア王女とセドリック様の血液は混ざりました」


医師は、はっきりと告げた。


「アリア王女は、セドリック様のお子様です」


「そんな……!」


ヴィクトリアは顔を覆った。


アレクは目を閉じ、深く息を吐いた。


やはり、疑念は事実だった。


アリアは、自分の娘ではなかったのだ。


それでも、幼いアリア自身に罪はない。


アレクは、アリアを見つめた。


アリアはまだ泣いており、法廷で何が起きているのか理解できていなかった。


◆◆◆責任を押しつける二人


しかし、ヴィクトリアはすぐに顔を上げた。


「陛下! どうかお聞きください!」


彼女は涙を流しながら、必死に訴えた。


「セドリック様とは、一度だけの過ちだったのです!」


その言葉に、法廷の人々がざわめいた。


「私は……私は寂しかったのです! 陛下は第一夫人ばかりを愛して、私のことなど見向きもしてくださらなかったではありませんか!」


ヴィクトリアはアレクを責めるように見つめた。


「私だって、愛されたかったのです!」


セドリックも黙ってはいなかった。


「兄上、私だけを責めるのは間違いです!」


彼は声を張り上げた。


「兄上が第二夫人を愛していなかったからこそ、このようなことになったのです! 私とヴィクトリアだけを責めるのは、おかしいではありませんか!」


二人は互いに自分の責任を軽くしようとし、アレクに非があるかのように訴え続けた。


だが、アレクの表情は冷たいままだった。


「私がヴィクトリアをどのように扱っていたかという問題と、お前たちが何をしたかという問題は別だ」


アレクは二人を見据えた。


「自分たちの行いを、私のせいにするな」


ヴィクトリアもセドリックも、すぐには言い返せなかった。


やがて、アレクは兵士たちに命じた。


「アリアを法廷から退出させなさい。これ以上、幼い子どもをこの場に置いておく必要はない」


「承知いたしました」


召し使いがアリアを優しく抱き上げた。


アリアはまだ何も分からないまま、怖くて小さな体を震わせていた。


「……ままぁ……」


その声を聞いても、ヴィクトリアは動けなかった。


アリアは召し使いに抱かれたまま、法廷を後にした。


6 エレナの温もり


法廷の外へ出ると、そこにはエレナが待っていた。


アリアの姿を見るなり、エレナはそっと近づいた。


「アリア王女……」


召し使いからアリアを受け取ると、優しく胸に抱きしめた。


「大丈夫ですよ。もう怖くありませんからね」


アリアは涙で濡れた顔をエレナの胸に押しつけた。


「……うぅ……」


エレナは、小さな背中をゆっくりとなでた。


「アリアは、リリアと同じ、大切な子ですよ。私もアリアを愛しています。怖がらなくていいのです」


その優しい声に、アリアは少しずつ落ち着きを取り戻していった。


「リリアのお部屋へ行きましょうね。二人で一緒に遊びましょう」


エレナはアリアを抱いたまま、リリアの部屋へ向かった。


部屋では、リリアがポポとピピと一緒に遊んでいた。


エレナが入ってくると、リリアは顔を上げた。


「あっ! ありあちゃーん!」


リリアはアリアの姿を見つけると、うれしそうに両手を伸ばした。


「ありあちゃん、こっちおいでぇ! いっちょに、あしょぼぉ!」


アリアは涙の残る目でリリアを見つめた。


そして、エレナの腕の中から小さな手を伸ばした。


リリアはその手をぎゅっと握った。


「だいじょぶぅ。りりあ、いっちょにいるよぉ!」


アリアは、リリアの手を握り返した。


法廷で何が決まろうとしているのか、アリアにはまだ分からない。


けれど、今は優しく抱きしめてくれるエレナがいて、手を握ってくれるリリアがいる。


エレナは二人を見つめ、穏やかに微笑んだ。


「さあ、みんなで遊びましょうね」


一方、法廷では、ヴィクトリアとセドリックの責任をめぐる追及が続こうとしていた。


アリアの出生の秘密が明らかになった今、二人はもう、以前と同じように振る舞うことはできなかった。


裁判は、さらに大きな局面を迎えようとしていた。

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