第70話 日記がつなぐ事件! アリア王女の出生に迫る疑惑
第70話 日記がつなぐ事件! アリア王女の出生に迫る疑惑
◆◆◆裁判は明日へ
ヴィクトリアの言い訳が続くなか、裁判は一時中断ではなく、その日の審理を終えることになった。
「本日の裁判はここまでとする。明日、改めて審理を開く」
アレクの言葉が法廷に響いた。
ヴィクトリアは、ほっとしたように小さく息を吐いた。
明日まで時間がある。
その間に、どうすれば自分の立場を守れるのか考えなければならない。
兵士たちに付き添われて法廷を出ていく彼女の表情には、まだ不安が残っていた。
一方、アレクは騎士たちに向き直った。
「ローレン医師の日記と契約書を、もう一度詳しく調べるのだ。金銭の記録だけでなく、事件とのつながりを示すものがないか、急いで確認してくれ」
「承知いたしました!」
騎士たちは返事をすると、すぐに調査へ向かった。
アレクは一人になり、深く考え込んだ。
ローレン医師の部屋から見つかった契約書。
金銭の受け渡しを記した日記。
そして、ヴィクトリアの説明。
それらを照らし合わせれば、何かが分かるかもしれない。
「必ず真実を明らかにする……」
アレクは静かにつぶやいた。
◆◆◆ペンダントに映るパパ
そのころ、リリアは自分の部屋にいた。
エレナのそばで遊んでいたリリアは、胸元のペンダントが淡く光ることに気づいた。
ペンダントには、アレクや騎士たちの様子が映し出されていた。
「ぱぱぁ……?」
リリアは小さな手でペンダントを握った。
映像のなかでは、兵士たちがローレン医師の日記を広げ、記録を調べている。
「なにか、しょうこ……?」
リリアは首をかしげた。
「しょうこ、どこにあるのぉ……?」
まだ文字を読むことはできないリリアだったが、日記を調べている兵士たちの姿をじっと見つめた。
そして、ふと思いついた。
「かみしゃまに、きいてみりゅ!」
リリアはペンダントに魔力を込めた。
すると、神界にいるゼノたちの前に、ローレン医師の日記の映像が現れた。
「ゼノしゃま、これ、みてぇ!」
神界では、ゼノ、アテナ、オルフェ、フィオナが水晶の鏡を囲んでいた。
ゼノは日記の映像を見て、しばらく考え込んだ。
「リリアよ。日記に記された、金を受け取った日付をよく見てみなさい」
「ひづけぇ?」
「そうだ。金銭の受け渡しと、これまでに起きた事件の日付を比べるのだ」
アテナも静かにうなずいた。
「事件が起きた時期と、金銭の記録が重なっているかもしれないわ」
リリアは、日記を調べている兵士たちの姿を見つめた。
「わかったぁ! りりあ、ちょっとだけ、おてちゅだいしゅるぅ!」
リリアは小さな指をペンダントに当て、そっと魔法を使った。
◆◆◆小さな蝶が示したもの
兵士たちは、ローレン医師の日記を机の上に広げていた。
「金銭の記録はあるが、これだけでは、どの事件と関係しているのか分からんな……」
一人の兵士が、日記のページをめくった。
そのときだった。
ひらひら……。
どこからともなく、小さな蝶が舞い込んできた。
蝶は兵士の目の前を横切ると、日記のある日付のすぐそばに、ちょこんと止まった。
「ん? 蝶だと?」
兵士は不思議そうに顔を近づけた。
そして、蝶が止まっている日付を確認した瞬間、目を見開いた。
「待て……! この日付は……!」
兵士は慌てて、ほかの記録と照らし合わせた。
金銭を受け取った日から、一週間後。
毒入りミルクの事件が起きていた。
さらに記録を調べると、家族旅行中に馬車が襲われた事件、アリア王女に関する奇妙な診断、そして皇帝暗殺未遂事件も、金銭の受け渡しと時期が重なっていた。
「まさか……これらの事件は、すべてつながっているのか!」
兵士はすぐに日記をまとめ、アレクのもとへ向かった。
小さな蝶は、兵士が去ったあと、静かに羽を広げて飛び立った。
その蝶がリリアの魔法によるものだとは、誰も気づかなかった。
◆◆◆皇帝が抱いた疑念
「陛下、ご報告いたします!」
兵士がアレクの前でひざまずいた。
「ローレン医師の日記を調べたところ、金銭を受け取った日付と、過去に起きた事件の時期に関連があることが分かりました」
「詳しく話せ」
「金銭を受け取った一週間後に毒入りミルクの事件が起きています。そのほか、旅行中の襲撃事件、アリア王女の奇妙な診断、そして陛下の暗殺未遂事件も、金銭の受け渡しと時期が重なっております」
アレクの表情が険しくなった。
「つまり、ローレン医師への金銭の受け渡しは、これらの事件と関係している可能性があるということか」
「はい。ただし、日付が重なっているだけでは、すべての事件への関与が証明されたわけではございません」
「分かっている。だからこそ、さらに調べる必要がある」
アレクは日記を見つめた。
そして、ある疑問が胸に浮かんだ。
アリア王女に関する奇妙な診断。
ヴィクトリアとローレン医師の関係。
それに、これまで感じてきた違和感。
「……アリアは、本当に私の娘なのだろうか」
その言葉に、兵士たちは顔を見合わせた。
アレクは、すぐに決断した。
「宮廷医師たちを呼べ」
「陛下、医師たちを、でございますか?」
「そうだ。明日の裁判で、アリア王女が本当に私の子であるのかを調べる。憶測のまま誰かを責めるつもりはない。事実を確かめるのだ」
「承知いたしました!」
兵士は急いで退出した。
アレクは窓の外を見つめた。
もし、自分が知らされていない秘密があるのなら、明日の裁判で明らかにしなければならない。
それがどれほどつらい真実であっても。
◆◆◆リリアの小さな願い
そのころ、リリアはペンダントを胸元に戻していた。
神界では、ゼノたちが日記の映像を見つめていた。
「金銭の記録から、過去の事件がつながり始めたな」とゼノ。
「けれど、アリア王女の出生については、まだ確かな事実が必要ね」とアテナが答えた。
オルフェは、水晶の鏡に映るアレクの姿を見つめた。
「明日の裁判は、大きな転機になるかもしれない」
一方、リリアは小さな手をぎゅっと握った。
「ぱぱ……かなちく、ならないでねぇ……」
リリアは、アレクのことが心配だった。
パパが大好き。
ママも大好き。
そして、アリア王女も大切な友達。
誰かが悲しい思いをするのは嫌だった。
「りりあ、みんなを、まもりゅのぉ……」
小さな声でそうつぶやくリリア。
翌日の裁判で、アリア王女の出生に関する疑念が取り上げられることになる。
ヴィクトリアの言い逃れは、どこへ向かうのか。
そして、アレクが知ることになる真実とは――。
裁判の続きは、明日へと持ち越された。




