第7話 湖畔の朝は大騒ぎ!? リリア姫と動物たちの秘密の宝探し!
第7話 湖畔の朝は大騒ぎ!? リリア姫と動物たちの秘密の宝探し!
## 湖畔の朝は、いい匂い!
別荘の朝。
窓から差し込む柔らかな日差しが、リリアの小さな頬をぽかぽかと照らしていた。
窓の向こうには、きらきらと輝く湖。
湖畔には色とりどりの花が咲き、木々の間では小鳥たちが楽しそうにさえずっている。
「……うー?」
リリアはベッドの上で、むくりと起き上がった。
「まんま!」
その声に、ベッドのそばで丸くなっていたポポが、びくっと飛び起きた。
「な、なんなのだ!? おやつの時間なのだ!?」
「まだ朝ですよ、ポポ」
ピピが呆れた声で言った。
「むぅ……おやちゅ、ないのぉ?」
リリアは小さなお口をとがらせる。
「朝ごはんのあとです!」
ピピが胸を張ると、ポポも負けじと胸を張った。
「当然なのだ! ポポは朝ごはんもおやつも、どっちも食べられるのだ!」
「ポポは食べることしか考えてないの?」
「失礼なのだ! 遊ぶことも考えているのだ!」
「えへへっ!」
リリアは二匹のやり取りを聞いて、ころころと笑った。
そこへ侍女のミレが入ってきた。
「リリア様、お目覚めですか? お着替えをして、朝ごはんにいたしましょうね」
「まんま!」
リリアは両手をぱっと上げた。
「はいはい。今日は果物もありますよ」
「くだもの!」
リリアの目が、きらーんと輝いた。
ポポとピピも顔を見合わせる。
「これは、朝から期待できるのだ……!」
「ポポ、あなたのごはんじゃありませんからね」
「な、なぜわかったのだ!?」
ミレは思わず笑ってしまった。
こうして、湖畔の別荘の一日は、にぎやかに始まったのだった。
## おいしい朝ごはん!
食堂では、皇帝アレクと第一夫人エレナがリリアを待っていた。
テーブルには大人用の朝食のほかに、リリアのための離乳食が用意されている。
すりつぶしたリンゴと桃、洋梨を混ぜた甘い果物のペースト。
柔らかく煮た野菜。
そして、温められたミルク。
「おはよう、リリア」
アレクが笑顔で手を伸ばす。
「ぱぱぁ!」
リリアは両手を伸ばし、アレクに抱き上げてもらった。
「おお、今日も元気いっぱいだな!」
「あなた、リリアは朝からずっと元気なのですよ」
エレナが微笑む。
リリアは椅子に座ると、さっそく果物のペーストを口に運んでもらった。
「あーん……ん!」
ぱあっと笑顔になる。
「おいち!」
「まあ、よかったわ」
エレナは嬉しそうに、もう一口食べさせた。
リリアは果物も野菜も、夢中になってぱくぱく食べる。
そして、食事の途中でミルクを飲み始めた。
ごく、ごく、ごく、ごく……。
「……まだ飲むのか?」
アレクが目を丸くした。
ミレが新しいミルクを用意すると、リリアは小さな両手で哺乳瓶を抱え、また勢いよく飲み始める。
ごくごく、ごくごく!
「まあ……本当にたくさん飲みますね」
エレナは驚きながらも、愛おしそうにリリアの頭をなでた。
「元気に育ってくれるなら、それが一番だ」
アレクは笑った。
そのテーブルの下では、別の騒動が起きていた。
「ポポも果物が食べたいのだ……!」
「だめ。リリアちゃんの離乳食よ」
「ひとくちだけなのだ!」
「さっき三口食べたでしょう!」
「味見なのだ!」
「それを三回も言わないで!」
二匹が言い合っていると、リリアは哺乳瓶をくわえながら、こっそり魔法を使った。
ぽんっ!
ポポの頭に、小さな桃の帽子が現れた。
「……ん?」
ポポが頭を触る。
ぺたっ。
甘い桃の果肉が、頭に乗っていた。
「な、なんなのだーーーっ!?」
「ぷふっ!」
ピピは笑いをこらえきれない。
リリアは哺乳瓶を抱えたまま、きゃっきゃっと笑った。
「えへへっ!」
「リリア様、どうかなさいましたか?」
ミレが尋ねる。
「あー!」
リリアは何も知らない赤ちゃんの顔で、にこにこ。
ポポだけが、桃の帽子をかぶったまま、しょんぼりとうなだれていた。
「……今日も、リリアにはかなわないのだ」
## 動物さんからの、ひみつのお知らせ!
朝食のあと。
エレナとアレクが庭を散歩している間、リリアはミレに抱かれて庭へ出た。
湖から吹いてくる風は心地よく、草花が優しく揺れている。
すると――。
「チュンチュン!」
小鳥が一羽、リリアの近くに飛んできた。
「にゃあ」
白い猫も、草むらから顔を出す。
「わんっ!」
犬が尻尾を振りながら駆け寄り、うさぎまでぴょこんと姿を現した。
「みんにゃ!」
リリアは嬉しそうに両手を広げた。
ミレが少し離れた場所で、別荘の庭師と話し始める。
その隙に、リリアは動物たちへ小さな声で話しかけた。
「みんにゃ、あしょぼ!」
「もちろんニャ!」
白い猫が答える。
「今日は、とっておきのお話があるワン!」
犬が鼻をひくひくさせた。
小鳥は湖の奥にある大きな木を指すように、羽をぱたぱたさせる。
「昨日、あの木のそばで、地面が少しへこんでいるのを見つけたんだよ!」
「へこんでるぅ?」
リリアが首をかしげた。
「そこを掘ったら、古い箱が出てくるかもしれないピョン!」
うさぎがぴょんっと跳ねる。
「はこぉ?」
リリアの瞳が輝いた。
ポポが、すぐさま胸を張った。
「ふふふ、宝探しならポポにおまかせなのだ!」
ピピも負けずに手を挙げる。
「ピピもいっしょにやる〜!」
「でも、勝手に遠くへ行っちゃだめですよ」
ピピがリリアに念を押した。
「うー!」
リリアは元気よくうなずく。
……そのうなずきが、どこまで約束を意味しているのかは、誰にもわからなかった。
## リリア姫の秘密の宝探し!
リリアたちは、別荘の庭から続く湖畔の小道を進んだ。
もちろん、別荘から遠く離れることはない。
護衛騎士たちも近くにいるし、動物たちもリリアを見守っている。
それでも、リリアにとっては大冒険だった。
「こっち、こっちぃ!」
リリアが指さした先には、湖畔に立つ大きな古木があった。
木の根元には柔らかな苔が広がり、小さな花が咲いている。
「この辺りだワン!」
犬が地面をくんくん嗅いだ。
「ほら、ここ。土が少し盛り上がっているニャ」
猫が前足で土をちょんちょんと触った。
確かに、木の根元の一角だけ、土の色が違っていた。
「たからもの、あるのぉ?」
リリアは目をきらきらさせる。
「あるかもしれないのだ!」
ポポは自信満々に宣言した。
「さあ、掘るのだ!」
ポポが土を掘ろうとした、その瞬間。
木の根につまずいた。
「うわあああっ!?」
ころん!
ぽよん!
ぽよよよん!
丸い体が弾み、近くの草むらに転がっていく。
「ポポ、だいじょうぶぅ?」
「だ、大丈夫なのだ……! これは計算どおりなのだ!」
「ぜったい嘘だよね?」
ピピの冷静な一言に、動物たちが笑った。
リリアも、きゃっきゃっと手を叩く。
「ぽぽ、ぽよんぽよん!」
「リリアまで!?」
ポポがショックを受けている間に、ピピは魔法で土を少しずつどかした。
すると、土の中から古びた木箱の角が見えてきた。
「あった!」
ピピが声を上げる。
「たからもにょ!」
リリアは嬉しそうに手を伸ばした。
ポポも慌てて戻ってきて、木箱を引っ張る。
「ううう……重いのだ!」
「ポポ、もっと頑張って!」
「ピピも手伝うのだ!」
「わたしは魔法で土をどかしてるの!」
二匹がわたわたしているうちに、木箱がすぽんっと抜けた。
リリアは両手をぱちぱちと叩いた。
「わぁー!」
木箱には、小さな金具がついていた。
けれど、古びているせいか、ふたは少しずれていて、鍵もかかっていなかった。
リリアがふたに手をかける。
「よいちょ……!」
ぽんっ。
ふたが開いた。
中には、布に包まれた宝石がいくつも入っていた。
青い石、緑の石、赤い石。
そして、小さな金貨や古びた装飾品。
どれも長い年月、土の中に埋まっていたらしく、布は色あせ、金具にはくすみがあった。
「わあ……!」
ピピが目を丸くする。
「本当に宝物が出てきたね!」
ポポは宝石を見つめ、口をあんぐり開けた。
「す、すごいのだ……! ポポの予想どおりなのだ!」
「ポポは転んでただけでしょ!」
「転ぶことも大切な宝探しの技なのだ!」
「そんな技、ないよ!」
リリアは青い石を両手で持ち上げた。
「きらきらぁ……!」
その石は、湖の水面によく似た、澄んだ青色をしていた。
リリアはうっとりと見つめたあと、石をそっと布の上に戻した。
## 宝箱に残されていたもの
「この箱、誰のものだったんだろう?」
ピピが首をかしげた。
「昔の人が埋めたのかもしれないのだ」
ポポが木箱の内側をのぞき込む。
そのとき、底に折りたたまれた古い紙があるのに気づいた。
「おや? 紙があるのだ!」
ピピが紙をそっと取り出した。
長い年月がたっているため、紙は黄ばんでいた。文字も少しかすれている。
そこには、昔の王族の名前と、宝箱を埋めた日付が記されていた。
さらに、最後には短い言葉が添えられていた。
『この宝は、子孫たちのために残すものとする』
ピピは紙を何度も読み返した。
「これって……昔、この別荘に住んでいた王族のご先祖様が、宝石を埋めておいたってことかな?」
「そうみたいなのだ!」
ポポがうなずく。
「大切な宝物を、あとから見つけられるように隠しておいたのだ!」
リリアは紙をじっと見つめた。
まだ難しい文字を読むことはできない。
けれど、ポポとピピの話を聞いて、なんとなくわかった。
(むかちのひとが、うめうめちたのぉ?)
リリアは首をかしげる。
(ながーい、ねんねのあと、みちゅかったの!)
「うー!」
リリアは嬉しそうに手を叩いた。
動物たちも、宝箱をのぞき込む。
「昔の人が隠した宝物だったんだね!」
小鳥が楽しそうに鳴いた。
「こんなところに埋まっていたなんて、誰も気づかなかったワン!」
犬が尻尾を振る。
「でも、リリアちゃんが見つけたんだね!」
うさぎがぴょんっと跳ねた。
リリアは胸を張った。
「えへへっ!」
そのとき――。
リリアの頭に、いたずらの名案が浮かんだ。
宝箱の中には、色とりどりの宝石が入っている。
その宝石を使えば、きっと面白いことができるはず。
リリアは、にんまりと笑った。
(きらきら……おそらに、うかべりゅの!)
ポポとピピが同時に振り返る。
「リリア、そのお顔は……」
「また何か考えてるでしょ!?」
リリアは小さな指を、そっと宝箱へ向けた。
ぽわんっ!
宝石がふわりと浮かび上がる。
「やっぱりーーーっ!」
ポポとピピの声が重なった。
## 湖の上で、宝石がダンス!?
青、緑、赤、黄色。
色とりどりの宝石が、湖の上へふわふわと飛んでいく。
太陽の光を受けて、宝石たちはきらきら輝いた。
湖面には美しい光が映り、まるで小さな星々が水の上で踊っているようだった。
「わぁぁぁ!」
リリアは大喜び。
「きらきら! いっぱい!」
ポポは目を丸くした。
「こ、これはすごいのだ……! でも、宝物をなくしたら大変なのだ!」
「そうだよ! 元に戻そう、リリアちゃん!」
ピピが慌てて声をかける。
けれど、リリアは宝石がくるくる回るのを見て、楽しそうに笑っていた。
「まわりゅぅ!」
宝石は湖の上を一周し、今度は空高く舞い上がった。
その光に気づいた護衛騎士たちが、慌てて湖畔へ走ってくる。
「な、何事だ!?」
「湖の上に宝石が浮かんでいるぞ!」
さらに、庭にいたミレも駆けつけた。
「リリア様ー! どちらにいらっしゃいますか!?」
「……あっ!」
ピピが固まった。
「ミレさんが来ちゃった!」
ポポは慌てて木箱を抱えた。
「隠すのだ! とにかく隠すのだ!」
「どこに!?」
「……ポポの下なのだ!」
「宝箱がつぶれちゃうでしょ!」
その間にも、宝石は湖の上でくるくると踊っている。
リリアは困ったように眉を下げた。
(あうぅ……みんにゃ、びっくりちちゃうのぉ)
リリアは両手を伸ばした。
「おかえりぃ……!」
すると、宝石たちは一斉に戻ってきて、木箱の中へすとん、すとんと収まった。
最後の青い石が布の上に戻ると、湖面にはいつもの景色が広がった。
ちょうどそのとき、ミレが木の陰から顔を出した。
「リリア様! こんなところにいらしたのですね!」
リリアは木箱の前にちょこんと座り、にっこり笑った。
「あー!」
「……あら? その箱は?」
ミレが不思議そうに近づく。
そこへ、騒ぎを聞きつけたアレクとエレナもやってきた。
「リリア! 何かあったのか?」
アレクが心配そうに尋ねる。
「ぱぱぁ!」
リリアは両手を伸ばした。
アレクが抱き上げると、リリアは嬉しそうに頬をすり寄せた。
エレナは木箱の中をのぞき込んだ。
「まあ……宝石がたくさん!」
護衛騎士の一人が、古い紙を確認する。
「陛下。この名前と日付……昔の王族の記録と一致するかもしれません」
アレクは紙を受け取り、目を通した。
「なるほど。先祖がこの地に宝を埋めておいたのか」
「長い年月、ずっと土の中にあったのですね」
エレナは宝石を見つめ、感慨深そうに微笑んだ。
「まさか、こんな場所に残されていたなんて……」
「これは宮殿に持ち帰り、記録と照らし合わせよう。先祖が残してくれた大切な品だからな」
アレクがそう告げると、護衛騎士たちは丁寧に宝箱を運ぶ準備を始めた。
リリアはアレクの腕の中から、箱をじーっと見つめた。
(たからもの、みちゅかって、よかったぁ!)
リリアは満足そうに笑った。
もちろん、宝石を湖の上で踊らせたことは、誰にも話さなかった。
ポポとピピも、そろって口を閉じる。
「……秘密なのだ」
「リリアちゃんの魔法、すごかったね」
「ポポも、すごかったのだ!」
「どこが?」
「宝箱を持っていたのだ!」
「それだけ!?」
二匹の言い合いを聞きながら、リリアはアレクの腕の中で楽しそうに笑っていた。
## 湖畔の夕暮れと、小さな約束
夕方。
湖は夕日に染まり、森の木々が金色に輝いていた。
リリアはエレナの膝の上で、果物をすりつぶした離乳食を食べていた。
食後には、いつものミルク。
ごくごく、ごくごく。
「今日もたくさん飲みますね、リリア」
エレナが笑う。
アレクも、目を細めた。
「今日は宝物まで見つけた。忘れられない一日になったな」
「ええ。リリアが見つけたのですものね」
エレナがリリアの頬を優しくつつく。
「あー!」
リリアは嬉しそうに笑った。
庭の向こうでは、白い猫や犬、うさぎ、小鳥たちが、木箱を見つけた場所を静かに見守っていた。
リリアは動物たちに向かって、小さく手を振る。
「ばいばぁい……また、あしょぼ!」
動物たちは、嬉しそうに鳴いた。
ポポはリリアのそばで、お腹をぽんぽんと叩く。
「宝探しのあとは、おやつなのだ!」
ピピがため息をつく。
「ポポは一日中おやつのことばっかり!」
「違うのだ! 今日は宝物のことも考えたのだ!」
「宝物より、おやつのほうが長かったよね?」
「……それは秘密なのだ」
リリアは二匹を見て、くすくす笑った。
そして、夕日に輝く湖をもう一度見つめる。
(また、たからさがち、ちゅるの!)
小さな胸の中で、次の冒険への期待が膨らんでいた。
けれど――。
遠く離れた王宮では、馬車襲撃事件の捜査が続いていた。
捕らえられた盗賊たちは、いまだに依頼主の名を明かしていない。
第二夫人ヴィクトリアは、表向きはいつもどおり穏やかに振る舞いながらも、心の奥で焦りを募らせていた。
リリアが別荘で宝探しを楽しんでいることなど、彼女は知る由もない。
湖畔で見つかった宝石は、昔の先祖が子孫のために埋めておいたもの。
その宝物は、長い年月を経て、ようやく再び日の光を浴びたのだった。
リリアの別荘での休暇は、まだ続く。
次はどんな遊びを見つけて、どんな騒動を起こすのだろうか。




