第64話 第二夫人の言い訳! 涙の裏に隠された嘘
第64話 第二夫人の言い訳! 涙の裏に隠された嘘
ヴィクトリアの弁明
第二夫人ヴィクトリアが逮捕された翌日。
皇帝アレクは、彼女から事情を聞くため、執務室に呼び出した。
ヴィクトリアは騎士に付き添われ、アレクの前に姿を現した。
その顔には、疲れと不安が浮かんでいた。
「ヴィクトリア。ローレン医師の日記には、お前から金銭を受け取っていたことが記されている。なぜ金を渡していたのか、説明してもらおう」
ヴィクトリアはしばらく黙っていた。
やがて、震える声で口を開いた。
「陛下……私は、ローレン医師に脅されていたのです」
「脅されていた?」
アレクは眉をひそめた。
「はい……」
ヴィクトリアは目を伏せ、震える手を胸元に当てた。
「ローレン医師は、私とセドリック様の関係を疑っていました。そして、そのことを問題にすると、私に言ってきたのです」
アレクの表情が変わった。
「セドリックとの関係を疑われたというのか?」
「はい……。もし、そのことが王宮で問題になれば、陛下にまでご迷惑をおかけしてしまいます。私は、それだけは避けたかったのです」
ヴィクトリアの目から涙がこぼれた。
「ローレン医師は、私にお金を要求してきました。私は、言われるままに支払いました……」
「なぜ、すぐに私に相談しなかった?」
アレクの問いに、ヴィクトリアは肩を震わせた。
「申し上げることができませんでした……。陛下に知られれば、もっと大きな問題になってしまうと思ったのです」
ヴィクトリアは涙をぬぐいながら、さらに言葉を続けた。
「お金を支払い続ければ、いつか脅しも終わるのではないかと……そう考えてしまいました。私は、ただ問題が大きくなるのを防ぎたかったのです」
彼女は両手で顔を覆った。
「申し訳ございません、陛下……。私は、どうすればよいのか分からなかったのです……」
執務室には、ヴィクトリアのすすり泣く声が響いた。
彼女は自分が脅迫の被害者だったと訴え、涙を流し続けた。
まるで、自分もローレン医師に苦しめられていた悲劇の女性であるかのように。
ヴィクトリアは涙を流しながら、アレクの反応をうかがっていた。
「陛下……どうか、私の話を信じてくださいませ」
アレクはすぐには答えなかった。
彼女が話した内容は、ローレン医師に金銭を支払っていた理由としては筋が通っているようにも聞こえる。
しかし、アレクには簡単に信じることができなかった。
ローレン医師の部屋からは、ヴィクトリアの名前が記された契約書が見つかっている。
さらに、ローレンの日記には、二人の間で金銭のやり取りがあったことが残されていた。
「もう一度聞くが」
「ヴィクトリア。お前の話が事実なら、なぜ脅迫されていたことを私に相談しなかった?」
「それは……陛下にご迷惑をおかけしたくなかったからです」
ヴィクトリアは、涙を浮かべたまま答えた。
「では、なぜローレン医師との間で契約書まで交わしていたのだ?」
その問いに、ヴィクトリアの表情が一瞬こわばった。
「そ、それは……」
彼女は言葉を探すように視線を落とした。
「ローレン医師に、言われるままに……」
アレクはヴィクトリアを見つめた。
彼女は涙を流している。
だが、涙だけで真実を判断することはできない。
「お前の話が本当かどうか、今の段階では判断できない」
「陛下……!」
ヴィクトリアは悲しそうに首を振った。
「私は、本当に苦しんでいたのです……」
「ならば、なおさら事実を確かめる必要がある。ローレン医師は亡くなった。本人から話を聞くことはできない。残された証拠を調べるしかないのだ」
アレクの声は冷静だった。
ヴィクトリアは、それ以上強く訴えることができなかった。
彼女は涙をぬぐい、うつむいた。
しかし、その心の中では、自分の言い分が信じられなかったことへの焦りが広がっていた。
アレクは騎士に告げた。
「引き続き、契約書と日記の内容を調べろ。ヴィクトリアの話についても、事実と照らし合わせて確認する」
「承知いたしました」
騎士が答えた。
アレクはヴィクトリアに視線を戻した。
「お前の言葉だけで、この事件を終わらせるつもりはない」
ヴィクトリアは黙り込んだ。
涙を流し、脅迫されていたと訴えても、皇帝の疑いを晴らすことはできなかった。
アレクはまだ、彼女を信じてはいなかった。
そして、ローレン医師との金銭のやり取りに隠された真実も、明らかにはなっていなかった。




