第61話 第二夫人への追及! 契約書が暴く秘密
第61話 第二夫人への追及! 契約書が暴く秘密
ローレンの死が残したもの
ローレン医師が牢獄で命を落とした翌朝。
皇帝アレクは、兵士たちから報告を受けていた。
「陛下、昨夜の警備記録を確認しましたが、ローレン医師の死につながる決定的な手がかりは見つかっておりません」
「そうか……」
アレクは険しい表情を浮かべた。
ローレンは自分を暗殺しようとした。その理由を聞き出す前に、何者かによって命を奪われてしまった。
偶然とは考えにくい。
「ローレン医師が何も話さないまま殺されたのなら、口封じの可能性もある。引き続き調べろ」
「かしこまりました」
アレクは、机の上に置かれた契約書へ視線を落とした。
そこには、第二夫人ヴィクトリアの名前が記されている。
ローレンは死んだ。
だが、契約書は残っていた。
「……ヴィクトリア」
アレクは小さく名前をつぶやいた。
彼女が本当に関わっているのか。それとも、別の事情があるのか。
まだ確かなことはわからない。
しかし、皇帝暗殺未遂事件と無関係だと決めつけることもできなかった。
「契約書の内容を、もう一度詳しく調べろ。ヴィクトリア本人にも、必要な確認を行う」
「承知いたしました」
アレクは立ち上がり、窓の外を見た。
自分の命が狙われた。
犯人は捕らえられたはずだったのに、その犯人まで殺された。
この宮殿のどこかに、まだ見えない敵がいる。
その事実が、アレクの胸に重くのしかかっていた。
リリアの小さな決意
部屋の扉が開き、リリアがミレに連れられて入ってきた。
「ぱぱぁ!」
リリアはアレクを見つけると、両手を伸ばした。
「おお、リリア。来てくれたのか」
アレクは笑顔を見せ、リリアを抱き上げた。
「ぱぱ、げんきぃ?」
「ああ。大丈夫だよ」
リリアはアレクの顔をじっと見つめた。
「ぱぱ、にこにこ、してぇ」
「そうだな。リリアがいると、自然に笑顔になるよ」
アレクは娘の頬を優しくなでた。
リリアは小さな手で、アレクの頬に触れた。
「あい。ぱぱ、だいしゅきぃ!」
その無邪気な言葉に、アレクの表情が和らいだ。
しかし、リリアの心の中には、別の思いがあった。
(ローレン、しんじゃったの……。でも、まだ、おわってないの)
リリアは知っている。
ローレンの背後には、まだ姿を見せていない何者かがいる。
けれど、今は自分の魔法を人間たちに知られるわけにはいかない。
(リリちゃん、ぱぱとままをまもるもん!)
小さなリリアは、アレクの胸にぎゅっと抱きついた。
そのころ、アレクは契約書を手がかりに、次の調査へ進もうとしていた。
ローレンが命を落としても、事件の追及を止めるつもりはなかった。
ヴィクトリアに届いた知らせ
第二夫人ヴィクトリアは、ローレン医師が牢獄で死亡したという知らせを受けていた。
「……死んだですって?」
彼女の顔から血の気が引いた。
ローレンが生きていれば、何を話すかわからない。
しかし、彼は何も話さないまま命を落とした。
それでも、ヴィクトリアは安心できなかった。
ローレンの部屋から契約書が見つかっている。
そこに自分の名前がある以上、アレクが調査を続けるのは間違いない。
「契約書の内容は、どこまで調べられているの……?」
ヴィクトリアは不安を隠しながら尋ねた。
だが、詳しいことはわからなかった。
彼女は唇をかみしめた。
ローレンが死んでも、残された証拠までは消えていない。
そして、アレクは決して簡単に諦める皇帝ではなかった。
皇帝からの呼び出し
その日のうちに、ヴィクトリアのもとへ皇帝からの呼び出しが届いた。
「陛下が、私を……?」
ヴィクトリアは一瞬、言葉を失った。
ついに来た。
そう感じずにはいられなかった。
彼女は表情を整え、呼び出しに応じる準備をした。
一方、アレクは部屋でヴィクトリアを待っていた。
机の上には、ローレンの部屋から見つかった契約書が置かれている。
ヴィクトリアが入室すると、アレクは静かに告げた。
「ヴィクトリア。確認したいことがある」
「何でしょうか、陛下?」
アレクは契約書へ視線を向けた。
「ローレン医師の部屋から、これが見つかった。ここには、お前の名前が記されている」
ヴィクトリアの表情が、一瞬だけ強張った。
「……私の名前が?」
「ああ。ローレン医師と、この契約書にどのような関係があるのか、説明してもらいたい」
アレクの声は落ち着いていた。
怒りに任せて責め立てるつもりはない。
まずは事実を確かめる。
ヴィクトリアは契約書を見つめた。
ローレンはもういない。
しかし、彼女の前には、消えることのなかった証拠が残されていた。
「陛下……」
ヴィクトリアは口を開こうとした。
けれど、その言葉はすぐには続かなかった。
アレクは彼女を見つめ、返答を待った。
皇帝暗殺未遂事件は、ローレンの死によって終わるどころか、新たな局面を迎えていた。
そして今、ヴィクトリア自身が、その真相を問われようとしていた。




