第58話 皇帝暗殺未遂の真相! リリアに重なった預言者の姿
第58話 皇帝暗殺未遂の真相! リリアに重なった預言者の姿
目覚めた皇帝
「……パパ……?」
リリアは、ベッドに横たわるアレクの顔をじっと見つめていた。
アレクはゆっくりと目を開けた。
「……ここは……」
「陛下! お気づきになられましたか!」
そばに控えていた医師が、ほっとした表情を浮かべた。
アレクは上半身を起こそうとしたが、まだ身体に力が入らない。
「私は……どうなった?」
「暗殺者の襲撃を受けられました。しかし、陛下はご無事です」
その言葉を聞き、アレクは眉を寄せた。
黒いドラゴン。
激しい攻撃。
そして、意識が遠のいていく感覚。
記憶は途切れ途切れだった。
「ローレン医師はどうした?」
「兵士たちが捕らえました。現在、取り調べを行っております」
「そうか……」
アレクは安堵するどころか、険しい表情になった。
自分の寝室にまで侵入し、命を狙ったのだ。
これは偶然の襲撃ではない。
誰かが背後にいる可能性がある。
「ローレン医師が何を知っているのか、慎重に調べろ。証拠がそろうまでは、誰であろうと犯人と決めつけるな」
「かしこまりました」
そのとき、リリアが小さな手を伸ばした。
「ぱぱぁ……!」
「リリア……」
アレクはリリアを抱き上げ、胸にそっと抱き寄せた。
「心配をかけたな。もう大丈夫だ」
「ぱぱ、だいしゅきぃ……」
リリアはアレクの胸に顔をうずめた。
その小さな身体を抱きしめながら、アレクは、もう一つの記憶を思い出そうとしていた。
意識の奥に残った姿
暗闇の中で、意識が消えかけていたとき。
自分を救ってくれた誰かがいた。
はっきりとは思い出せない。
けれど、そこには不思議な光と、こちらを見つめる預言者の姿があった。
「……預言者……」
アレクは小さくつぶやいた。
「陛下、何かございましたか?」
「いや……少し、夢のようなものを見た気がする」
アレクは腕の中のリリアを見つめた。
その瞬間、記憶の中の預言者の姿が、目の前のリリアと重なった。
「……!」
アレクは思わず息をのんだ。
だが、すぐに首を横に振った。
リリアはまだ一歳の赤ちゃんだ。
預言者と同じはずがない。
「……命を救ってくれたのだろうか」
アレクは、誰にともなくつぶやいた。
「もし、あの方が本当に私を救ってくださったのなら……直接、お礼を申し上げたい」
リリアは、何も知らない赤ちゃんのように、アレクの胸に頬を寄せた。
「あうぅ……ぱぱぁ、よしよしぃ……」
アレクは微笑み、リリアの頭を優しくなでた。
「ありがとう、リリア」
しかし、彼の胸には一つの疑問が残っていた。
あの預言者は、いったい何者なのだろうか。
そして、なぜ自分を救ってくれたのだろうか。
その答えは、まだ誰にもわからなかった。
第58話 皇帝暗殺未遂の真相! リリアに重なった預言者の姿
沈黙するローレン医師
一方、ローレン医師は兵士たちに拘束され、取り調べを受けていた。
「なぜ皇帝陛下を襲った?」
兵士が問いただす。
しかし、ローレンは口を開かなかった。
「誰の命令だ。答えろ!」
それでも、ローレンは沈黙を守り続けた。
自分が何を話せば、誰に危険が及ぶのか。
それを理解しているかのようだった。
兵士たちは厳しく追及したが、ローレンから有力な証言を得ることはできなかった。
その報告を受けたアレクは、深く考え込んだ。
「ローレン医師が何も話さない以上、ほかの証拠を探す必要がある」
「はい。医師の部屋も調べております」
「続けろ。何か見つかれば、すぐに報告するのだ」
アレクは慎重だった。
ローレンが皇帝暗殺を企てたことは明らかだ。
だが、その背後に誰がいるのか。
そこを突き止めなければ、事件は終わらない。
見つかった契約書
その後、ローレン医師の部屋を調べていた兵士たちが、一通の契約書を発見した。
そこには、第二夫人ヴィクトリアの名前が記されていた。
「これは……!」
兵士はすぐに契約書を保管し、アレクへ報告した。
報告を受けたアレクの表情が変わった。
「ヴィクトリアの名前があるのか?」
「はい。しかし、契約の詳しい内容については、まだ確認が必要です」
アレクは契約書を見つめた。
ヴィクトリアの名前がある。
それだけで、すべてを決めつけることはできない。
だが、皇帝暗殺を企てたローレン医師の部屋から見つかった以上、無視することもできなかった。
「契約書の内容を詳しく調べろ。誰が、何のために交わした契約なのか。確かな証拠をつかむのだ」
「かしこまりました!」
兵士が退出すると、アレクは静かに目を閉じた。
ローレン医師の襲撃。
沈黙を続ける犯人。
そして、契約書に記されたヴィクトリアの名前。
事件は、少しずつ真相に近づき始めていた。
第二夫人の不安
そのころ、ヴィクトリアも、ローレン医師が捕らえられたことを知っていた。
さらに、ローレンの部屋が調べられていると聞き、顔色を変えた。
もし、あの契約書が見つかっていたら。
もし、アレクが内容を知ったら。
考えるほどに、不安が膨らんでいく。
「……ローレンは、何も話していないのでしょうね」
ヴィクトリアは、声を抑えてつぶやいた。
しかし、返事をする者はいなかった。
彼女は窓の外を見つめた。
もう、これまでのようにはいかない。
アレクは確実に真相へ近づき始めている。
そして、ローレンが沈黙を守っている間にも、契約書という証拠が見つかってしまった。
ヴィクトリアは唇をかみしめた。
このままでは、自分にも追及の手が伸びてくる。
一方、アレクはリリアを抱きながら、心に誓っていた。
「必ず真相を明らかにする。そして、家族を守る」
リリアは、そんなアレクの頬に小さな手を添えた。
「ぱぱ、がんばれぇ……!」
アレクは微笑んだ。
その腕の中にいる小さな娘こそが、自分を救った存在だとは、まだ知らない。
そして、事件の背後に潜む本当の黒幕も、まだ姿を現してはいなかった。
皇帝暗殺未遂事件は、終わっていない。
ローレンの沈黙と契約書が、次の真実へとつながろうとしていた。




