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第57話 光と闇の最終決戦! リリア、神の力でパパを救う!

第57話 光と闇の最終決戦! リリア、神の力でパパを救う!


黒いドラゴンの口元に、紫黒色の光が集まっていく。


倒れたアレクは、床に横たわったまま動かない。


「ぱぱ……!」


大人の姿になったリリアは、アレクを背にかばいながら、震える手をぎゅっと握りしめた。


「もう、ぜったいに……ぱぱに、さわらせないんだから!」


リリアの背中から、黄金の翼が大きく広がった。


しかし、ドラゴンに変身したローレン医師は、恐ろしい声で笑った。


「小娘が! その光も、すべて闇にのみ込まれるのだ!」


ドラゴンが翼を振るう。


黒い風が部屋を駆け抜け、壁に飾られていた絵画や家具が次々と吹き飛ばされた。


リリアは両腕を広げ、アレクの周囲に黄金の結界を張る。


「きゃああっ!」


強烈な風圧に押され、リリアの足が床を滑った。


それでも、結界は揺らがない。


「リリちゃん、がんばるのだーっ!」


白馬の姿になったポポが、床を蹴ってドラゴンへ突進した。


「ポポにおまかせなのだ!」


ポポの額から白い光が放たれ、ドラゴンの前脚に命中する。


「グオオオオッ!」


ドラゴンが体勢を崩した。


その隙に、大きなピンク色のウサギになったピピが跳び上がる。


「ピピもいっしょにやる〜! えーいっ!」


ピピの長い耳から、桃色の光の輪が飛び出した。


光の輪はドラゴンの首と翼に絡みつき、その動きを封じようとする。


だが――。


「その程度で、私を止められると思うな!」


ドラゴンの全身から黒い炎が噴き出した。


炎は光の輪を焼き切り、ポポとピピを吹き飛ばす。


「ポポーッ!」


「きゃああっ、ピピのお耳がぐるぐるする〜!」


二匹は床を転がったものの、すぐに立ち上がった。


「まだまだなのだ!」


「リリちゃんを、ひとりにしないもん!」


リリアは二匹を見て、胸の奥が温かくなるのを感じた。


怖い。


本当は、とっても怖い。


けれど、後ろには大好きなパパがいる。


絶対に守りたい人がいる。


「リリア、まけないもん……!」


リリアが手を掲げると、黄金の剣が五本、空中に現れた。


「光の剣よ! あのまっくろな魔法を、きってぇ!」


五本の剣が一斉に飛び出す。


ドラゴンは翼を広げ、黒い炎を円形に放った。


黄金の剣と黒い炎が激突する。


ドォォォンッ!


爆発の衝撃で、窓ガラスが震えた。


剣は炎を切り裂いたが、最後の一本がドラゴンの鱗に届く直前、黒い霧に包まれて消えてしまった。


「なっ……!」


リリアは目を見開いた。


ローレンの周囲に漂う黒い霧。


それは、リリアの魔法を吸い取り、闇の力へと変えていた。


「私の闇の術は、魔法そのものを食らう! どれほど強い光を放とうとも、すべて私の力になるのだ!」


ドラゴンが口を大きく開いた。


黒い炎が、リリアへ向かって放たれる。


「リリちゃん、よけるのだーっ!」


ポポが叫ぶ。


リリアは横へ飛び退いた。


しかし、炎は床を這うように広がり、逃げ道を塞いでいく。


リリアは両手を床へ向けた。


「ひかりの壁っ!」


黄金の壁が炎を押し返す。


だが、黒い霧が壁の表面に触れた瞬間、黄金の光が少しずつ薄くなり始めた。


「そんな……!」


リリアの額に汗が浮かぶ。


光を強くすればするほど、闇に吸収される。


力比べを続けていては、いずれ結界も破られてしまう。


そのとき、神界ではゼノが玉座から立ち上がった。


「いかん……! ローレンの闇の術は、ただ魔法を弾いているのではない。魔法を吸収し、術者の力に変換している!」


アテナが水晶の映像を見つめ、唇をかんだ。


「リリアは強い。でも、あのままでは消耗戦になるわ……!」


フィオナは両手を胸の前で握りしめた。


「リリアちゃん……アレクを守りながら戦っているのよ。これ以上、あの子に負担をかけたら……!」


オルフェの予言の水晶には、黄金の光と黒い闇がぶつかり合う光景だけが映っていた。


「未来が定まらない……。リリアの力が、これほど大きく揺れているとは……」


ゼノは拳を握りしめた。


「リリアよ。怒りに呑まれるな。お前の力は、破壊するためだけのものではない……!」


もちろん、その声はリリアには届かない。


それでも、リリアは自分の中にある力を感じ取ろうとしていた。


ただ強い光を放つだけでは、勝てない。


相手の闇をすべて消そうとするだけでも、魔法を吸収されてしまう。


ならば――。


リリアはドラゴンの胸元を見つめた。


黒い鱗の隙間。


そこに、脈打つような紫色の光が見える。


ドラゴンが魔法を使うたび、その光が強くなっていた。


「あそこ……なにか、あるの……?」


「何を見ている、小娘!」


ドラゴンが前脚を振り下ろす。


リリアは身をひねって避けたが、鋭い爪が肩をかすめた。


黄金の光が散り、リリアは床に片膝をつく。


「リリちゃん!」


ピピが駆け寄ろうとする。


「来ちゃだめぇ!」


リリアは叫び、ピピの前に小さな結界を張った。


直後、ドラゴンの尾が床を打ち砕いた。


破片が飛び散る。


リリアは再び立ち上がった。


肩の傷から、黄金の光が小さく漏れている。


それでも、視線はドラゴンの胸元から離れなかった。


「まっくろな魔法の、まんなか……。あそこを、なんとかすれば……!」


ドラゴンが低くうなった。


「気づいたところで遅い! 次で終わりだ!」


ローレンの胸元の紫色の光が、まばゆいほどに輝いた。


黒い闇が部屋いっぱいに膨れ上がり、天井を覆い尽くしていく。


リリアは両手を広げ、アレクを守る結界をさらに強くした。


「ぱぱは……リリアが、まもるの!」


黄金の翼が大きく羽ばたく。


光と闇の最終決戦が、いよいよ最後の局面を迎えようとしていた。


第57話 光と闇の最終決戦! リリア、神の力でパパを救う!


黒い闇が、部屋のすべてを包み込んだ。


窓の外から差し込んでいた月明かりさえ、消えてしまう。


その闇の中心で、黒いドラゴンの胸元だけが紫色に輝いていた。


「すべてをのみ込め! 暗黒の奔流!」


ローレンの叫びと同時に、黒い波がリリアへ押し寄せた。


リリアは黄金の結界を張った。


しかし、黒い波が触れると、結界の光がみるみる吸い取られていく。


「うぅ……っ!」


腕が重い。


足が震える。


それでも、リリアは結界を手放さなかった。


その後ろには、アレクがいる。


「ぱぱ……まっててねぇ……。リリア、ぜったい……まけないもん……!」


ドラゴンが大きな口を開けた。


「無駄だ! お前の力は、すべて私のものになる!」


その瞬間、ポポがドラゴンの背後へ回り込んだ。


「ポポにおまかせなのだーっ!」


白馬の前脚が床を蹴り、ポポは大きく跳躍する。


額に集めた白い光を、ドラゴンの翼の付け根へ放った。


「グオオオッ!」


ドラゴンが振り返る。


続いて、ピピが長い耳を大きく広げた。


「ピピの、ぴんくのまほう〜!」


桃色の光が花びらのように舞い、ドラゴンの視界を覆う。


「目くらましだと!?」


ローレンが怒鳴った。


「今なのだ、リリちゃん!」


ポポの声が響いた。


リリアは一瞬だけ、アレクを守る結界を確認した。


結界はまだ保たれている。


ならば、今しかない。


リリアは自分の光を、剣でも炎でもない形へ変えた。


細い黄金の糸。


一本、二本、三本。


無数の糸が床を走り、壁を伝い、ドラゴンの足元へと伸びていく。


「な、何をした!」


「つかまえりゅの……!」


リリアが手を握る。


黄金の糸が一斉に跳ね上がり、ドラゴンの四肢と翼を縛りつけた。


ドラゴンは暴れ、黒い霧を噴き出す。


糸の一部が消えていく。


けれど、リリアは糸を太くしなかった。


新たな糸を次々と張り巡らせ、闇が吸収するよりも速く、別の角度から絡め取っていく。


「そんな小細工が通用するか!」


ドラゴンが力任せに翼を振り下ろす。


黄金の糸が何本も切れた。


だが、その動きで胸元の紫色の光が大きく揺らいだ。


リリアの瞳が輝いた。


「やっぱり……あそこなの!」


胸の奥にある紫色の光。


それはローレンの闇の術を支える核だった。


リリアは、そこへ直接魔法をぶつけるのではなく、周囲に細い光の輪を作った。


光の輪は紫色の核を囲み、ゆっくりと回転を始める。


「何をしている!? やめろ!」


ローレンが暴れた。


黒い霧が光の輪をのみ込もうとする。


しかし、光の輪は闇を押し返そうとはしなかった。


闇に触れた部分をすぐにほどき、別の場所でつなぎ直していく。


吸収される力を最小限に抑えながら、少しずつ核を包み込んでいった。


神界で、アテナが息をのんだ。


「そうか……! 闇と力比べをしていないのね!」


ゼノがうなずいた。


「リリアは、闇を破壊するのではなく、闇の術が働く仕組みそのものを封じようとしている!」


フィオナの目に涙が浮かんだ。


「リリアちゃん……お願い、成功して……!」


オルフェは水晶を見つめたまま、固く拳を握っていた。


「頼む……。その未来を、つかみ取ってくれ……!」


一方、宮殿の寝室では、ローレンが最後の抵抗を始めていた。


「この私が……人間の王などに仕える小娘に……!」


ドラゴンは全身から黒い炎を噴き出した。


炎が黄金の糸を焼き、光の輪を押しつぶそうとする。


リリアの体が大きく揺れた。


「きゃああっ!」


足元が崩れ、リリアは片膝をつく。


光の輪が消えかけた。


「リリちゃん!」


ピピが叫ぶ。


ポポもドラゴンへ突進しようとしたが、黒い炎に行く手を阻まれた。


「くっ……近づけないのだ!」


リリアは唇をかみしめた。


もう少し。


あと少しで、核を封じられる。


けれど、力が足りない。


そのとき、リリアの視界の端に、床に倒れたアレクの姿が映った。


「……ぱぱ」


小さな声が漏れる。


アレクは目を閉じたまま、動かない。


いつも優しく頭をなでてくれる手も、今は動かない。


一緒に遊んでくれる声も、聞こえない。


リリアの胸が、ぎゅうっと痛くなった。


「ぱぱ……おきてぇ……」


涙が一粒、頬を伝った。


「リリア……ぱぱと、まだ……あしょびたいの……」


黄金の光が、リリアの全身からあふれ出した。


けれど今度の光は、怒りにまかせて広がるものではなかった。


大切な人を守りたい。


もう二度と、こんな思いをしたくない。


その願いが、リリアの神の力を呼び覚ましていた。


「リリアの、ひかり……!」


リリアが両手を胸の前で重ねる。


「ぱぱを、きずつける、まほうなんて……ぜーんぶ、なくなっちゃえぇぇっ!」


黄金の光が、細い糸を伝って一気に走った。


光の輪が、紫色の核を完全に包み込む。


ローレンの胸元で、何かが砕けるような音がした。


「馬鹿な……! 私の暗黒術が……!」


黒い霧が激しく渦巻く。


ドラゴンの翼が震え、黒い炎が次々と消えていった。


「封印の光よ……!」


リリアが叫ぶ。


黄金の輪がきゅっと縮まり、紫色の核を閉じ込めた。


次の瞬間――。


ドオオオオンッ!


まばゆい光が部屋を満たした。


ドラゴンの巨体が大きくのけぞり、黒い鱗が光の粒となって剥がれ落ちていく。


「ぐあああああっ!」


ローレンの叫び声が響いた。


やがて巨大なドラゴンの姿は消え、床には人間の姿に戻ったローレンが倒れていた。


その体から、黒い魔力は完全に消えていた。


リリアは荒い息をつきながら、ローレンを見つめた。


「もう……ぱぱを、いじめちゃ……だめなの……」


ローレンは返事をしない。


戦いは終わった。


けれど、リリアの心は晴れなかった。


「……ぱぱ?」


リリアは振り返り、アレクのそばへ駆け寄った。


「ぱぱ、ぱぱぁ……!」


大人の姿のまま、アレクの肩に手を伸ばす。


体は温かい。


けれど、目を開けない。


呼吸も、かすかにしか感じられなかった。


「いやぁ……。ぱぱ、めをあけてぇ……!」


リリアの涙が、アレクの手の甲に落ちた。


神界では、フィオナが口元を押さえた。


「リリアちゃん……!」


アテナも、ゼノも、オルフェも、何も言えなかった。


ローレンの闇の術は封じた。


それでも、アレクは目を覚まさない。


リリアは震える手で、アレクの手をぎゅっと握った。


「ぱぱ……リリア、いいこにするからぁ……。おやつも、ひとりじめしないからぁ……。だから……おきてぇ……!」


小さな願いが、静かな寝室に響く。


そのとき、リリアの胸元から、黄金の光があふれ始めた。


それは攻撃のための光ではなかった。


神界から授かった、生命をつなぐ力。


リリア自身も知らなかった、神の力の深い部分だった。


「……ぱぱを、たすけたいの」


リリアは両手をアレクの胸元へかざした。


「リリアの、いのちのひかり……。ぱぱに、とどいてぇ……!」


黄金の光が、ゆっくりとアレクの体を包み込む。


光は傷ついた体を巡り、乱れていた呼吸を整え、弱まっていた生命の輝きを取り戻させていった。


神界の水晶が、黄金一色に染まる。


ゼノが思わず立ち上がった。


「これは……生命をつなぐ神力……!」


フィオナの頬を涙が伝った。


「リリアちゃんが……アレクを救っている……!」


長い時間が流れたように感じられた。


やがて、アレクの指が、ほんの少し動いた。


「……っ」


リリアは息を止めた。


アレクの胸が、ゆっくりと上下する。


そして――。


「……エレナ……リリア……」


かすかな声が聞こえた。


「ぱぱぁぁぁっ!」


リリアはアレクの胸に飛びついた。


「ぱぱ、ぱぱぁ! おきたぁ! よかったぁぁ!」


アレクはまだ意識がはっきりせず、目を薄く開けただけだった。


それでも、リリアの声を聞くと、安心したようにわずかに表情を緩めた。


「……リリア……?」


リリアははっとした。


今の自分は、大人の姿。


この姿を、人間に見られてはいけない。


リリアは涙をぬぐい、アレクの額にそっと手を当てた。


「ぱぱ……だいしゅきぃ……」


黄金の光が、もう一度ふわりと輝く。


大人の姿が光に包まれ、少しずつ小さくなっていった。


長い髪が短くなり、翼が消え、黄金の衣が柔らかな赤ちゃんの服へと戻っていく。


光が消えたとき、そこにいたのは、いつもの一歳のリリアだった。


「……あうぅ」


リリアはアレクの腕の中へ、そっと体を寄せた。


ちょうどそのとき、廊下から大勢の足音が聞こえてきた。


「陛下! ご無事ですか!」


駆けつけた騎士たちが部屋へ飛び込んでくる。


床には、意識を失ったローレン。


壊れた家具。


砕けた窓。


そして、倒れたアレクのそばで泣いているリリア。


騎士たちは、目の前の光景に言葉を失った。


「陛下をお救いしろ! 医師を呼べ!」


「この男を拘束しろ! 決して逃がすな!」


騎士たちが動き出す。


リリアは小さな手で、アレクの服をぎゅっとつかんだ。


「ぱぱ……もう、だいじょうぶぅ……?」


アレクはまだ弱々しいものの、リリアの手をそっと握り返した。


「……ああ……リリア……」


その手の温もりを感じた瞬間、リリアはまた泣き出した。


「ぱぱぁ……だいしゅきぃ……!」


神界では、四柱の神々がようやく安堵の息をついた。


しかし、ゼノの表情だけは晴れなかった。


ローレンの闇の術は封じられた。


けれど、彼がなぜ皇帝暗殺を企てたのか。


誰の命令で動いていたのか。


そして、彼の背後にいる者は誰なのか。


まだ、何ひとつ明らかになっていない。


ゼノは水晶の中で眠るように目を閉じたローレンを見つめ、静かにつぶやいた。


「これは終わりではない……。本当の闇は、まだ姿を現していないのだ」


リリアはそんな神々の声を知らない。


ただ、大好きなパパの手を握りながら、何度も何度も小さくつぶやいていた。


「ぱぱ……だいしゅきぃ……。ずっと、いっしょにいてねぇ……」


その願いを、黄金の光が優しく包み込んでいた。

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