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第5話 初めての家族旅行!? リリア姫、馬車の中でも大騒動!

第5話

初めての家族旅行!? リリア姫、馬車の中でも大騒動!


リリアが一歳三か月になった、ある晴れた日のこと。


「リリア、今日はみんなでお出かけだよ」


皇帝アレクが、愛娘を抱き上げて優しく笑った。


「うー! あー!」


リリアは両手をぱたぱた振って大喜び。


(おでかけぇ! おとうしゃまと、おかあしゃまと、いっちょ!)


第一夫人エレナも、嬉しそうに微笑んだ。


「今日は少し遠くの別荘まで行くのよ。おいしいお菓子も用意してあるわ」


「まんま!」


「ふふっ。リリアはお菓子より、ミルクかしら?」


「まんまーっ!」


リリアは元気いっぱいに返事をした。


その勢いに、アレクもエレナも思わず笑ってしまう。


もちろん、馬車にはリリアのお世話係のミレも同行していた。


そして、誰にも見えない場所では――。


「ポポにおまかせなのだ!」


「ピピもいっしょにやる〜!」


ふわふわのポポとピピが、こっそり馬車に乗り込んでいた。


「ぽぽぉ! ぴぴぃ!」


リリアが小さな声で呼ぶ。


「リリちゃん、今日はおとなしくするのだぞ!」


「そうそう! おとうしゃまたちを困らせちゃだめだよ〜!」


「うー?」


リリアは首をかしげた。


(おとなちく? するぅ! たぶん!)


その直後。


ぽすんっ!


リリアがポポのおなかを押すと、ポポの体が風船のようにふくらんだ。


「ぽぽぽぽぽっ!? な、なんなのだーっ!」


「きゃははっ!」


ピピもつられて笑い出す。


「リリちゃん、ポポがまんまるだよ〜!」


ポポはふくらんだまま、馬車の座席をぽよんぽよんと跳ね回った。


「止まるのだー! ポポはお菓子じゃないのだー!」


その騒ぎに、エレナが不思議そうに振り返る。


「リリア? 今、何か音がしなかった?」


「うー!」


リリアは何も知らない赤ちゃんの顔で、にこーっと笑った。


アレクは娘のほっぺをつんつんする。


「元気いっぱいだなあ、リリアは」


(えへへぇ! ないちょ、ないちょ!)


そのころ――。


王宮の奥にある、ヴィクトリアの部屋では。


「準備はできたの?」


ヴィクトリアは、目の前にひざまずく男に冷たい声で尋ねた。


男は、顔を隠した盗賊の一人だった。


「はい。街道の先で馬車を襲います。護衛がいても、こちらには人数がそろっています」


「必ず成功させなさい」


ヴィクトリアは扇子で口元を隠した。


「狙うのは第一夫人エレナと、その娘リリアよ。二人がいなくなれば、皇帝陛下のそばに残るのは私とアリアだけになる」


盗賊は一瞬、ためらった。


「……幼い王女まで、ですか?」


「余計なことを考える必要はないわ」


ヴィクトリアの声が鋭くなる。


「事故に見せかけなさい。誰にも私の名前を知られてはならない」


「承知しました」


男が去ると、ヴィクトリアは窓の外を見つめた。


「これで、すべてが私の望むとおりになる……」


だが、彼女は知らなかった。


その会話を、小さな鳥が窓辺から聞いていたことを。


鳥は一声鳴くと、空高く飛び立った。


そして、その鳥の行き先は――リリアの乗る馬車だった。


第5話 後半

初めての家族旅行!? リリア姫、馬車の中でも大騒動!


街道を進む、皇帝一家の馬車。


窓の外では、小鳥たちが楽しそうにさえずっていた。


リリアは、エレナの膝の上でご機嫌だった。


「あー! うー!」


「ふふっ、リリア。お外が気になるの?」


エレナが窓の外を見せてあげると、リリアは小さな手を伸ばした。


(あっ! さっきのとりしゃん!)


一羽の小鳥が、馬車の窓辺に止まった。


『リリア様! たいへんです!』


小鳥が小さな声で伝える。


『この先に、こわい人たちが隠れています! 馬車を襲うつもりです!』


リリアの目が、ぱちくりと開いた。


(あうぅ……おとうしゃまと、おかあしゃま、あぶないのぉ?)


リリアはエレナの服をぎゅっと握った。


「どうした、リリア?」


アレクが心配そうに顔をのぞき込む。


「うー! あー!」


リリアは一生懸命、窓の外を指さした。


しかし、まだ赤ちゃんのリリアの言葉は、両親には伝わらない。


(うぅ……どちたら、いいのぉ……)


そのとき、ポポが小声で言った。


「リリちゃん、ポポにおまかせなのだ! 盗賊なんて、ポポがやっつけてやるのだ!」


「だめぇ!」


リリアは慌ててポポのほっぺをむにっと押した。


「ぽぽ、だめぇ! おとうしゃま、びっくりしちゃう!」


「むぎゅっ!? ほっぺを押さないでほしいのだー!」


ピピが小さくうなずく。


「そうだね〜。みんなをびっくりさせないで、こっそり守ろうね!」


「うー!」


リリアは、にぱっと笑った。


(こっそり、まもりゅの!)


◆ ◆ ◆


しばらくして、馬車が森の中の街道に差しかかった。


突然――。


「止まれ!」


道の前に、黒い服を着た男たちが飛び出してきた。


「なっ!? 何者だ!」


護衛騎士たちが馬車を取り囲む。


盗賊たちは剣を抜き、馬車へと近づいてきた。


「馬車の中の者を出せ!」


「陛下、危険です! どうかお下がりください!」


護衛騎士が叫ぶ。


アレクはすぐにエレナとリリアをかばった。


「エレナ、リリアを頼む。私が外の様子を確認する」


「あなた……気をつけて!」


エレナはリリアを胸に抱きしめた。


リリアは、両親の不安そうな顔を見て、胸がきゅっとなった。


(やぁ……! おとうしゃまも、おかあしゃまも、かなちいおかお、だめぇ!)


リリアの小さな手が、きゅっと握られる。


すると――。


ふわっ。


馬車の周りに、淡い金色の光が広がった。


「な、なんだ、この光は!?」


盗賊の一人が驚いて足を止める。


次の瞬間。


ぽよんっ!


盗賊たちの足元に、ふわふわの大きなクッションが次々と現れた。


「うわあっ!?」


「なんだ、これは!」


男たちは足を取られ、次々に尻もちをついた。


さらに、頭上から木の葉が舞い落ちてくる。


ひらひら、ひらひら。


葉っぱは盗賊たちの頭や肩にぺたりと張りつき、まるで森の妖精にいたずらされたような姿になった。


「な、何が起きているんだ!?」


馬車の中では、リリアが両手をぱたぱた振っていた。


「あー! きゃはっ!」


(ころん、ころん! いたいいたい、しないの! でも、もう、わるいこと、だめぇ!)


「リリちゃん、すごいのだ……!」


ポポが目を丸くする。


「攻撃じゃなくて、転ばせて動けなくしてるんだね〜!」


ピピも感心した。


だが、盗賊たちはまだ諦めなかった。


「くそっ! こんな魔法、偶然だ! 馬車を襲え!」


一人の盗賊が、馬車へ向かって走り出す。


その瞬間――。


「ヒヒーンッ!」


森の奥から、野生の馬たちが勢いよく駆けてきた。


さらに、鳥たちが一斉に空を舞い、盗賊たちの目の前を飛び回る。


「うわっ! 鳥が!」


「前が見えない!」


そこへ、ポポが馬車の影から飛び出した。


「ポポにおまかせなのだーっ!」


ぽよよーん!


ポポは大きくふくらみ、盗賊たちの前に立ちはだかった。


「な、なんだ、この丸い生き物は!?」


「ポポはすごいのだ! 覚悟するのだー!」


ポポは勢いよく跳ねた。


ぽよんっ!


盗賊たちは、ふわふわのポポに押されて、柔らかな草むらへ転がっていった。


「うわあああっ!」


「いてて……!」


「全然痛くないのに、立ち上がれないぞ!?」


「ポポ、かっこいい〜!」


ピピが拍手する。


そのころ、リリアはエレナの腕の中で、小さな手をぎゅっと握っていた。


(みんにゃ、もう、おしまい! おとうしゃまたち、まもるの!)


リリアの額に、金色の光がふわりと灯る。


すると、盗賊たちの手から剣がすぽん、すぽんと抜け、地面に並んで落ちた。


さらに、彼らの足元に蔓が伸びてきて、逃げられないように優しく絡みついた。


「な、なんだこれは!? 体が動かない!」


「魔法使いがいるのか!?」


盗賊たちは、すっかり青ざめていた。


◆ ◆ ◆


「陛下! 盗賊たちは全員確保しました!」


護衛騎士の報告を聞き、アレクは馬車へ戻ってきた。


「エレナ、リリア! 二人とも無事か!?」


「ええ、私たちは大丈夫です」


エレナはほっとしたように微笑んだ。


「でも、いったい何が起こったのかしら……。突然、金色の光が見えたの」


アレクはリリアを抱き上げた。


「リリア、おまえが守ってくれたのか?」


「うー! ぱぱ!」


リリアはアレクの頬をぺちぺちと触った。


(おとうしゃま、だいしゅき! ぶじで、よかったぁ!)


アレクは娘をぎゅっと抱きしめた。


「ありがとう、リリア。おまえがいてくれてよかった」


エレナも、リリアの額に優しく口づける。


「小さな守り神様ね」


リリアは嬉しそうに笑った。


「あー!」


その陰で、ポポは胸を張っていた。


「ふふん! やっぱりポポが大活躍だったのだ!」


「えー? リリちゃんの魔法のおかげでしょ〜?」


「な、なんなのだ! ポポだって頑張ったのだ!」


リリアは二匹を見て、きゃっきゃっと笑った。


◆ ◆ ◆


一方、王宮。


ヴィクトリアは、報告を持ってきた従者を睨みつけていた。


「……何ですって? 失敗した?」


「は、はい。盗賊たちは全員捕らえられたそうです。しかも、馬車には傷一つついていないと……」


ヴィクトリアの手が震えた。


「そんなはずはないわ……。あの人数を用意したのよ? どうして……!」


「盗賊たちは、奇妙な魔法に襲われたと話しているそうです」


「魔法……?」


ヴィクトリアの脳裏に、リリアの笑顔が浮かんだ。


「まさか、あの赤ん坊が……?」


彼女はすぐに首を振った。


「いいえ。そんなはずはないわ。まだ一歳の赤ん坊なのよ……」


しかし、その表情には、初めて明確な恐怖が浮かんでいた。


そして、捕らえられた盗賊たちは、尋問を受けることになる。


彼らが誰に雇われたのか。


その答えが明らかになれば、ヴィクトリアの陰謀は皇帝アレクの耳に届くかもしれない。


◆ ◆ ◆


そのころ、神界。


巨大な水晶に映る一部始終を見ていた神々は、そろって息をのんでいた。


「リリア……! あの小さな体で、両親を守ったのか!」


ゼノが感動したように叫ぶ。


アテナは腕を組み、真剣な表情でうなずいた。


「力を無闇に振るうのではなく、相手を傷つけない方法を選びました。少しずつ成長しているようですね」


「運命の糸も、大きく揺れました……。あの襲撃が成功していたら、王宮の未来は変わっていたでしょう」


オルフェは水晶を見つめる。


フィオナは、動物たちがリリアを助けた姿を見て、にっこり笑った。


「動物たちも、リリアのことが大好きなのね」


その横で、ポポとピピも水晶をのぞき込んでいた。


「ポポも大活躍だったのだ!」


「リリちゃん、かっこよかったね〜!」


ゼノは深々とため息をついた。


「……しかし、盗賊を転ばせ、馬を呼び、剣まで飛ばすとは……。あの子の力は、まだまだ底が知れぬな」


アテナは静かに告げた。


「そして、今回の襲撃は偶然ではありません。誰かがリリアとエレナを狙っています」


神々の表情が引き締まった。


リリアが守ったのは、ただの家族旅行ではない。


王宮を揺るがす大きな陰謀の始まりだったのだ。


◆ ◆ ◆


その夜。


無事に別荘へ到着した一家は、温かな夕食を囲んでいた。


リリアはミルクをたっぷり飲み、満足そうにおなかをぽんぽん叩く。


「まんまー!」


「今日もたくさん飲んだなあ」


アレクが笑うと、エレナも優しく微笑んだ。


「たくさん食べて、たくさん眠って、元気に育ってね」


リリアは二人の顔を交互に見つめた。


(おとうしゃま、おかあしゃま……。リリが、まもりゅからねぇ!)


そして、こっそりポポとピピに小さな声で言った。


「ぽぽ、ぴぴ……。ないちょ、ねぇ?」


「もちろん秘密なのだ!」


「リリちゃんの魔法のことは、ないしょだよ〜!」


三人は顔を見合わせ、にっこり笑った。


けれど――。


王宮では、盗賊たちへの尋問が始まろうとしていた。


ヴィクトリアの企みが明らかになる日は、少しずつ近づいていたのだった。





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