第46話 皇帝暗殺計画と、光る魔法のペンダント!
第46話 皇帝暗殺計画と、光る魔法のペンダント!
皇帝アレクは、執務室でローレン医師についての報告を待っていた。
宮廷医師は四人。その中でも、ローレン医師の経歴には不自然な空白がある。さらに、アリア王女の診断にも疑わしい点があった。
昨夜見た夢と、謎の預言者から聞いた話。
それらを思い返すたびに、アレクの疑念は深まっていった。
「ローレンは、いったい何者なのだ……」
もしローレンが本当に魔術師なら、なぜ宮廷に入り込んだのか。
そして、盗賊たちが牢の中で命を落とした事件と、何か関係があるのだろうか。
「正体が分からないままでは、対策の立てようもない……」
アレクは焦りを感じていた。
しかし、確かな証拠がない以上、ローレンを問い詰めるわけにはいかない。
「急がなければならない。だが、慎重に進めるのだ」
アレクは近衛騎士団長に、引き続きローレンの経歴と行動を調べるよう命じた。
* * *
一方、宮殿の別の部屋では――。
第二夫人ヴィクトリアが、ひとりで過ごしていた。
そこへ、扉を控えめに叩く音が響いた。
「誰です?」
「私でございます」
聞き覚えのない声だった。
ヴィクトリアが扉を開けると、顔を深く隠した男が立っていた。
男は周囲を確認してから、部屋の中へ入った。
「急に何の用ですの?」
「御主人様からの伝言をお届けに参りました」
その言葉に、ヴィクトリアの表情がわずかに変わった。
「……御主人様から?」
「はい。皇帝陛下が、ローレン医師を怪しんでおられるようです」
「何ですって?」
ヴィクトリアは思わず声を低くした。
「どうして、そのようなことに……」
「詳しい事情までは分かりません。しかし、陛下はローレン医師の経歴を調べさせているとのことです」
ヴィクトリアは唇をかんだ。
ローレンの過去を調べられれば、隠しておきたいことまで明らかになるかもしれない。
これ以上、皇帝に調査を続けさせるわけにはいかなかった。
「……それで、御主人様は何と?」
男は声を落とした。
「御主人様より、新たなご命令をお預かりしております」
「申してみなさい」
「皇帝陛下を暗殺せよ、とのことでございます」
部屋の空気が凍りついた。
ヴィクトリアは、しばらく男を見つめていた。
やがて、ゆっくりと口元に笑みを浮かべた。
「……そうですか」
男は頭を下げた。
「実行の時期と方法については、改めて指示があるとのことです。それまでは、決して目立つ行動をなさらぬように」
「承知いたしました」
ヴィクトリアは、迷いのない声で答えた。
「陛下の調査を止めなければなりませんものね」
男はそれ以上何も語らず、静かに部屋を去っていった。
扉が閉まると、ヴィクトリアは窓辺に立った。
窓の向こうには、皇帝がいる執務棟が見える。
「アレク陛下……。余計なことに気づいてしまいましたわね」
彼女の目から、先ほどまでの穏やかな表情が消えた。
「これ以上、調べさせるわけにはいきませんわ」
ヴィクトリアは、ひそかに暗殺計画を進めることを決めた。
皇帝の命を狙う、恐ろしい計画が動き始めたのだった。
一方、リリアの部屋では――。
「う〜ん……」
リリアはベッドの上に座り、頭を悩ませていた。
「しょうこ、どうやって、あちゅめりゅのぉ?」
隣では、ポポが腕を組んで考え込んでいる。
「ローレン医師が魔術師だという証拠が必要なのだな!」
「そうなのぉ。でもぉ、ぱぱに、まほうをみちぇたら、だめなんだよねぇ?」
「そうなのだ。人間たちに、リリちゃんが魔法を使えると知られるわけにはいかないのだ!」
ポポは、珍しく真面目な顔をしていた。
ピピも、リリアの隣にちょこんと座った。
「じゃあ、ローレン医師が魔法を使っているところを、こっそり見つけたらどうかな〜?」
「こっそり?」
「そう! リリちゃんのペンダントで、何か見られないかな?」
リリアは胸元のペンダントを両手で包み込んだ。
神様たちからもらった、大切な魔法のペンダント。
危険が迫ったときや、宮殿で気になることが起きたとき、不思議な光を放つことがある。
「ぺんだんとしゃん……おねがぁい。しょうこ、みちぇてぇ」
リリアが小さくお願いした、そのときだった。
ペンダントが、突然まばゆく光り始めた。
「ふにゃっ!?」
「な、何なのだ!?」
「光ってるよ〜!」
ポポとピピが慌てて後ずさった。
ペンダントの光が空中へ広がり、やがて映像のようなものが浮かび上がった。
そこに映っていたのは――。
第二夫人ヴィクトリア。
そして、その前に立つ、顔を隠した謎の男だった。
「……あっ! ヴィクトリアおくしゃま!」
リリアは目を丸くした。
映像の中で、男がヴィクトリアに何かを告げている。
『御主人様から、皇帝陛下を暗殺するよう命令が下っております』
その言葉を聞いた瞬間、リリアは口をぽかんと開けた。
「……あんしゃちゅ?」
難しい言葉だったが、パパに危険が迫っていることは分かった。
ヴィクトリアは、はっきりと答えていた。
『承知いたしました』
「ぱ、ぱぱ……!」
リリアの顔から、笑顔が消えた。
ポポもピピも、映像を見つめたまま固まっていた。
「これは……大変なことなのだ」
「ヴィクトリア様が、パパを……?」
ピピの声が震えた。
映像の中の男は、さらに何かを話していたが、顔は隠されたままで、正体は分からない。
やがて映像が揺らぎ、光の中へ消えていった。
「ふにゃぁ……!」
リリアはペンダントをぎゅっと握りしめた。
「ぱぱ、あぶないのぉ!」
今すぐパパのところへ行きたい。
でも、神様たちからは、勝手に魔法を使わず、相談して行動するように言われている。
リリアは迷った末、ペンダントに向かって呼びかけた。
「かみしゃまぁ! たいへんなのぉ! ぱぱが、あぶないの!」
ポポとピピも、真剣な表情で頷いた。
「今度はちゃんと相談するのだ!」
「早く神様たちに知らせよう!」
リリアは、ペンダントを胸に抱きしめた。
パパを守るために、何ができるのか。
小さなリリアは、神様たちの助けを求めたのだった。
* * *
その頃、皇帝アレクは、まだ何も知らずに執務室で報告を待っていた。
ローレン医師の正体は、いまだにつかめない。
第二夫人ヴィクトリアが何を企んでいるのかも、確かな証拠はなかった。
「……いったい、何を隠している?」
アレクは窓の外を見つめた。
彼の知らないところで、すでに暗殺計画が動き始めている。
そして、その危険を知ったのは、魔法のペンダントを通して真実を見たリリアだった。
パパを守るため、リリアは神様たちと一緒に、次の一手を考えなければならなかった。




