第34話 夢の中でアリア王女と再会!? リリア姫のふわふわ夢遊び!
第34話 夢の中でアリア王女と再会!? リリア姫のふわふわ夢遊び!
◆◆◆小鳥になって会いに行きたいの!
王宮の朝。
リリアは、お庭の花壇の前にちょこんと座っていました。
目の前には、ピンクや黄色の花がいっぱい。
けれど、いつもなら花を見てにこにこするリリアも、今日は少し元気がありません。
「ありあ……」
リリアは、小さな手で花びらをそっとなでました。
「ありあ、あしょびたいのぉ……」
アリア王女が、ヴィクトリアの両親の城へ行ってから、リリアはずっと寂しいままでした。
小鳥たちが枝にとまり、リリアの顔をのぞき込みます。
『リリア、アリアに会いたいの?』
「うん……ありあ、どこぉ……?」
『アリアは、遠くのお城にいるよ。でも、リリアの絵とお花を大切にしているよ』
「ありあ……りりちゃん、しゅきぃ?」
『もちろん! アリアはリリアが大好きだよ』
その言葉に、リリアの顔がぱあっと明るくなりました。
「ありあも、りりちゃん、しゅきぃ!」
リリアは立ち上がると、両手をぱたぱた動かしました。
「じゃあねぇ……りりちゃん、とりしゃんになるの!」
「……なのだ?」
隣でおやつを食べていたポポが、ぴたりと動きを止めました。
「今、なんと言ったのだ?」
「とりしゃん! とりしゃんになって、ありあのところ、いくのぉ!」
リリアは得意げに胸を張りました。
「ちゅばしゃ、ぱたぱたぁ!」
そして、小さな指を空へ向けます。
リリアの周りに、きらきらと金色の光が集まりはじめました。
頭の上には、小さな羽のような光まで現れます。
「わわわっ! リリア、待つのだーっ!」
ポポはあわててリリアの前に飛び出しました。
「それはダメなのだ!」
「なんでぇ?」
「リリアが鳥になって飛んでいったら、ミレが大騒ぎするのだ! 皇帝陛下も、エレナ様も、王宮中が大捜索になるのだ!」
「ぴぴも、だめぇって思うよぉ!」
ピピも、リリアの手を両手でぎゅっと包みました。
「リリちゃんがいなくなったら、みんな、かなちぃよぉ!」
「かなちぃ……?」
リリアは、きょとんとしました。
「ぱぱ、まま、かなちぃ?」
「そうなのだ! アレク陛下はきっと泣くのだ! いや、泣くどころか、王宮の騎士を全員出動させるかもしれないのだ!」
「ポポ、たべもののことしか考えてないくせに、今日はまともなこと言うねぇ」
「ポポはいつだってまともなのだ!」
「さっき、おやつを三つ隠してたよねぇ?」
「そ、それは別問題なのだ!」
ポポとピピが言い合っている間、リリアはじーっと空を見つめていました。
鳥になって飛んでいくのは、ダメ。
でも、アリアに会いたい。
とっても、とっても会いたいのです。
リリアは、ちいさな手をほっぺに当てました。
「うーん……」
そして、ぱっと顔を上げます。
「そうだぁ!」
ポポとピピが、同時に振り向きました。
「今度は何なのだ?」
「リリちゃん、何を思いついたのぉ?」
リリアは、にっこり笑いました。
「ありあの、ゆめに、あしょびにいくのぉ!」
「……夢?」
「ゆめぇ! ねんねして、ありあのゆめに、ぴょーんっていくの!」
ポポとピピは顔を見合わせました。
「……それなら、鳥になって飛んでいくよりは安全かもしれないのだ」
「でも、夢の中に入る魔法なんて、リリちゃん、できるのかなぁ?」
リリアは、両手をぱちんと合わせました。
「できりゅよぉ!」
その瞬間、リリアの周りに、ふわふわの雲のような光が広がりました。
ポポは目を丸くします。
「ま、まさか、本当にできるのだ!?」
ピピはリリアの頭をなでました。
「リリちゃん、夢の中でもいたずらしすぎちゃダメだよぉ?」
「いたじゅら、しないもん!」
リリアは、ぷくっとほっぺをふくらませました。
「ありあ、と、あしょぶのぉ!」
その言葉に、ポポとピピは、思わず笑顔になりました。
「よし! ポポたちがそばで見守るのだ!」
「ピピもいっしょに応援する〜!」
リリアは満足そうにうなずくと、ミレが迎えに来る前に、お昼寝用の小さな部屋へ向かいました。
もちろん、途中でおやつを見つけて、ひとつだけつまんだのは内緒です。
「おやちゅ、ひとちゅ……」
「リリア、ひとつじゃないのだ! ほっぺにもうひとつ入っているのだ!」
「ないない!」
「あるのだーっ!」
王宮のお庭には、今日もにぎやかな声が響いていました。
夢の中で再会! そして、逃げた盗賊たちの行方
リリアは、お昼寝用の小さなベッドに横になりました。
ポポは枕元に座り、ピピはふわふわの毛布をかけてあげます。
「リリちゃん、ちゃんと戻ってくるんだよぉ」
「うん……」
「夢の中でアリアに会えても、勝手に遠くへ行っちゃダメなのだ!」
「うん……」
「それから、夢の中のおやつを全部食べようとするのもダメなのだ!」
リリアは、うっすら目を開けました。
「……おやちゅ、あるのぉ?」
「そこに反応するのだ!?」
ピピがくすくす笑いました。
「リリちゃん、いっぱい遊んでおいでぇ」
「ありあ……まっててねぇ……」
リリアが目を閉じると、金色の光がふわりと広がりました。
その光は、まるで春のそよ風のように、リリアの周りを優しく包み込みます。
やがて、リリアはすうすうと寝息を立てはじめました。
ポポとピピは、そっと顔を見合わせます。
「本当に夢の中へ行ったのかな?」
「きっと行ったのだ。リリアの魔法は、時々とんでもないことをするのだ」
「ポポも、とんでもないことするけどねぇ」
「ポポは関係ないのだ!」
二匹は小声で言い合いながら、リリアが起きるまでそばで見守ることにしました。
そのころ――。
ヴィクトリアの両親が暮らす城では、アリア王女もお昼寝をしていました。
小さなベッドの上で、アリアはリリアから届いた絵とお花を大切に抱いています。
「リリちゃん……しゅきぃ……」
そうつぶやいて、アリアは眠りにつきました。
すると、夢の中に、きらきらした花畑が広がりました。
ピンクの花、黄色の花、青い花。
空にはふわふわの雲が浮かび、ちいさな蝶々が飛んでいます。
「わぁ……!」
アリアは目を輝かせました。
「おはな、きれぇ!」
そのときです。
花畑の向こうから、小さな女の子が、よちよちと歩いてきました。
ピンク色の花びらを頭に乗せて、にこにこ笑っています。
「ありあぁ!」
「……リリちゃん!?」
アリアは、ぱあっと笑顔になりました。
「リリちゃん! リリちゃん、きたのぉ!?」
「きたよぉ!」
リリアは両手を広げました。
「ありあ、あしょぼぉ!」
「うん! あしょぶぅ!」
二人は、ぎゅっと抱き合いました。
離れていた時間が、夢の中では一瞬でなくなったようでした。
アリアはリリアの手を握り、花畑の中を歩きます。
「おはな、いっぱい!」
「いっぱい、いっぱい!」
リリアが手を振ると、花びらがふわふわと舞い上がりました。
くるくる、ひらひら。
二人の頭に花びらが降り注ぎ、かわいらしい花冠になっていきます。
アリアは、自分の頭に乗った花冠を触りました。
「ありあ、おはなのおひめしゃま!」
「りりちゃんも、おひめしゃまぁ!」
二人は顔を見合わせ、声を立てて笑いました。
今度は、雲の上でおままごとです。
リリアが小さな木の実をお菓子に見立て、アリアに差し出しました。
「ありあ、おやちゅ、どーじょ!」
「ありがとぉ! もぐもぐ!」
アリアは、夢の中のお菓子を食べるふりをして、にっこりしました。
「おいちぃ!」
「おいちぃねぇ!」
二人は並んで雲に座り、空を飛ぶ蝶々を眺めました。
アリアは、ふとリリアの手をぎゅっと握りました。
「リリちゃん……いなくならないでねぇ」
その声は、いつもより少しだけ寂しそうでした。
リリアは、アリアのほっぺを両手で包みました。
「ありあ、だいしゅきぃ!」
「ありあも、リリちゃん、だいしゅきぃ!」
二人はもう一度、ぎゅっと抱き合いました。
夢の花畑に、優しい光が降り注ぎます。
そのころ、神界では――。
四柱の神々が、神鏡をのぞき込んでいました。
「おや。リリアは夢の中でアリアと会っているようですね」
オルフェが、ほっとしたように言いました。
「離れていても、友情はつながっているのね」
フィオナは微笑みました。
アテナは少し心配そうに、リリアの魔力の流れを見つめます。
「夢から戻る道を見失わなければいいのですが……」
ゼノは腕を組みました。
「リリアなら大丈夫だろう。……たぶんな」
「ゼノ様、最後の『たぶん』は何ですか!?」
アテナが叫ぶと、神鏡の中では、リリアが花びらを全部集めて大きな花の山を作っていました。
「ありあ、もっとぉ!」
「もっとぉ!」
ゼノは額を押さえました。
「夢の中でも、やっぱり大騒ぎか……」
けれど、その表情は少しだけ優しくなっていました。
一方、現実の王宮では。
リリアはベッドの上で、幸せそうに眠っていました。
ポポとピピは、リリアの寝顔を見守っています。
「リリア、笑っているのだ」
「アリアと楽しく遊んでいる夢を見ているのかなぁ」
二匹はそっと毛布を直しました。
夢の中で二人がどんなに楽しく遊んでいるのか、人間たちは知りません。
ただ、リリアの小さな寝顔には、久しぶりの明るい笑顔が浮かんでいました。
逃げた盗賊たちの行方
そのころ、王宮から離れた森の中では、騎士たちが捜索を続けていました。
探しているのは、先日、町を襲った盗賊たち。
町を荒らしたあと、逃げ延びた者たちは、森の奥にある古い山小屋に身を隠していたのです。
「隊長、こちらに人の足跡があります!」
騎士の一人が声を上げました。
騎士団長は地面に残された足跡を確かめ、周囲を見回しました。
「間違いない。この先に隠れている可能性が高い。周囲を囲め。逃げ道を残すな!」
騎士たちは音を立てないように山小屋へ近づきました。
中からは、盗賊たちの声が聞こえてきます。
「いつまでこんな場所にいなきゃならねえんだ!」
「町の連中が騎士に話していたら、もう俺たちの顔も知られているかもしれねえぞ」
「黙れ! 依頼主のことさえ話さなければ、何とかなる!」
その言葉を聞いた騎士団長は、目を細めました。
――依頼主、だと?
町を襲ったのは、ただの金目当ての盗賊ではないのかもしれない。
騎士団長は合図を出しました。
「全員、突入!」
「そこまでだ! 王宮騎士団だ! 武器を捨てろ!」
盗賊たちは驚き、慌てて逃げようとしました。
しかし、山小屋の周囲はすでに騎士たちに囲まれています。
窓から逃げようとした者も、裏口から飛び出した者も、次々と取り押さえられました。
「くそっ! 放せ!」
「抵抗するな!」
やがて、逃げていた盗賊たちは全員捕らえられました。
騎士団長は、彼らを厳しく見据えました。
「町を襲った理由を聞かせてもらおう。誰の指示で動いた?」
盗賊たちは顔を見合わせました。
そのうちの一人が、唇を固く結びます。
「……知らねえな」
「金を受け取って町を襲ったのだろう。誰から依頼された?」
「何も知らねえ!」
彼らは口を閉ざしました。
騎士団長は、簡単には終わらないと悟りました。
「王宮へ連行しろ。別々に取り調べる。証拠と証言を慎重に確認するのだ」
こうして、逃げていた盗賊たちは、ついに王宮へ連行されることになりました。
彼らが誰から依頼を受けたのか。
そして、町を襲った事件と、アレクたちの家族旅行中に起きた襲撃事件は、つながっているのか。
その答えは、まだ明らかになっていません。
皇帝陛下に届く報告
その日の夕方。
アレクの執務室に、騎士団長がやって来ました。
「陛下、ご報告いたします。町を襲ったあと逃亡していた盗賊たちを、森の中で捕らえました」
アレクは書類から顔を上げました。
「ようやく捕まえたか。依頼主については?」
「現在のところ、口を閉ざしております。これから一人ずつ、詳しく取り調べます」
アレクは静かにうなずきました。
「無理に結論を出すな。証言だけでなく、金の流れや連絡の記録も調べろ。家族旅行中の襲撃事件との関連も、引き続き確認するのだ」
「承知いたしました」
騎士団長が退室すると、アレクは窓の外を見つめました。
町の人々を苦しめた襲撃。
自分たちの家族を狙った襲撃。
そして、毒入りのミルクや池の事件、アリア王女が突然遠くの城へ移されたこと。
一つ一つは、まだ決定的な証拠につながっていません。
それでも、何かが隠されている。
アレクはそう感じていました。
「必ず真相を突き止める。もう、誰にも家族を傷つけさせはしない」
そのころ、ヴィクトリアの部屋では――。
騎士団が逃亡中の盗賊たちを捕らえたという知らせが、ひそかに伝わっていました。
ヴィクトリアは手にしていたカップを、危うく落としそうになりました。
「……捕まったですって?」
盗賊たちが何を話すのか。
自分の名前を明かすのか。
そして、アレクがどこまで調べているのか。
ヴィクトリアの胸に、不安が広がっていきました。
「セドリックに、知らせなければ……」
彼女は窓の外を見つめました。
まだ、すべてが明らかになったわけではありません。
けれど、隠してきた秘密に近づく足音は、確実に大きくなっていました。
夢からのおかえり
夜。
リリアが、ゆっくりと目を開けました。
「……んにゃ?」
枕元には、ポポとピピがいます。
「リリア! 起きたのだ!」
「リリちゃん、おかえりぃ!」
リリアは、ぱちぱちと目を瞬かせました。
そして、にっこり笑います。
「ありあ……あしょんだぁ!」
「本当に夢の中で会えたのだ!?」
ポポが身を乗り出しました。
リリアは、うれしそうに両手をぱたぱた動かします。
「おはな、いっぱい! ありあ、にこにこぉ!」
「よかったねぇ、リリちゃん!」
ピピがリリアを優しく抱きしめました。
リリアは、しばらく考えるように天井を見上げました。
夢の中で、アリアは笑っていました。
離れていても、アリアはリリアのことを大好きだと言ってくれました。
リリアは小さな手をぎゅっと握ります。
「ありあ……また、あしょぼぉ!」
ポポはうなずきました。
「いつか、ちゃんと会えるようにするのだ。そのためにも、今はみんなが動いているのだ」
「うん!」
リリアは、にこにこ笑いました。
その笑顔を見て、ポポとピピも安心しました。
けれど、リリアの小さな胸の中には、ひとつだけ気がかりが残っています。
アリアが寂しい思いをしていること。
そして、アリアを遠ざけている人がいること。
リリアは、まだすべてを知っているわけではありません。
それでも、大好きな友達を守りたいという気持ちは、少しずつ強くなっていました。
神界では、ゼノが神鏡を閉じながらつぶやきました。
「夢の中で会えたのはよかった。だが、現実の問題はまだ残っているな」
アテナはうなずきます。
「ええ。皇帝陛下の調査も、逃亡していた盗賊たちの取り調べも、これからです」
フィオナは、優しく微笑みました。
「リリアの小さな友情が、いつか真実へつながるかもしれないわね」
そして王宮では、眠りから覚めたリリアが、ポポのほっぺをむにむにしていました。
「ぽぽ、ほっぺ、ぷにぷにぃ!」
「夢から帰ってきて、最初にやることがそれなのだ!?」
「ピピも、むにむにする〜!」
「二匹とも、やめるのだーーっ!」
王宮には、いつものにぎやかな声が戻りました。
しかし、逃げていた盗賊たちは捕まり、皇帝の調査は新たな段階へ進みはじめています。
隠された真実が明らかになる日は、少しずつ近づいていました。




