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第17話「アリア姫の涙と第二夫人の嘘!? リリア姫、秘密の真相に迫る!」

第17話「アリア姫の涙と第二夫人の嘘!? リリア姫、秘密の真相に迫る!」


◆◆◆「アリアちゃん、どうして泣いてるのぉ?」


池の事件から数日が過ぎた。


王宮には、少しずついつもの穏やかな空気が戻っていた。


リリアは自分の部屋で、積み木を高く積み上げていた。


「よいちょ……よいちょぉ……!」


一つ、また一つ。


積み木の塔は、リリアの顔よりも高くなっていた。


その隣では、ポポが得意げに胸を張っている。


「見たか、ピピ! これはポポの指導の成果なのだ!」


「えー? リリちゃんが自分で積んでるだけだよぉ?」


「な、なんと! ポポの指導力が見えないとは!」


「ぽぽぉ!」


リリアが突然、積み木を一つ置いた。


ぐらり。


塔が大きく揺れた。


「おおっ! 危ないのだ!」


ポポが慌てて支えようとした瞬間――。


がらがらがらっ!


積み木の塔は崩れ、ポポの頭にすっぽりと積み木の輪がはまった。


「ぽぽぉぉぉっ!? ポポが塔になってしまったのだぁぁ!」


「きゃははっ!」


リリアは手を叩いて笑った。


ピピもお腹を抱えて笑っている。


「ポポ、王宮でいちばん変な塔だよぉ!」


「笑っている場合ではないのだぁ!」


いつもの賑やかな光景。


けれど、リリアはふと窓の外を見た。


庭の向こうに、アリアの姿が見えたからだ。


アリアはクララと一緒に花壇のそばにいた。


いつもなら、リリアを見つけるとすぐに手を振ってくれる。


けれど今日は、少し俯いていた。


「……あいちゃ?」


リリアは窓に小さな手をつけた。


(あうぅ……アリアちゃん、げんき、ないのぉ……?)


そのとき、エレナが部屋へ入ってきた。


「リリア、どうしたの? お外が気になるの?」


「ままぁ! あいちゃぁ!」


「あら、アリアちゃんが来ているのね」


エレナは窓の外を見て、優しく微笑んだ。


「あとで一緒に遊べるようにしましょうね」


「うん!」


リリアは嬉しそうに頷いた。


けれど、その胸の奥には、小さな不安が残っていた。


池の事件のあとから、アリアは時々、悲しそうな顔をする。


そして、何かを話そうとすると、急に口を閉じてしまうのだ。


リリアはまだ幼く、複雑な事情を理解できない。


それでも、大切な友達が悲しんでいることだけは、ちゃんとわかっていた。


## 庭園――アリアの涙


昼下がり。


リリアはミレに抱かれて、庭園へやってきた。


そこには、クララと一緒に座っているアリアがいた。


「アリアちゃぁ!」


リリアが手を伸ばすと、アリアは顔を上げた。


「……リリちゃん!」


ふたりは小さな足取りで近づき、ぎゅっと抱き合った。


「リリちゃん、しゅきぃ!」


「アリア、だいしゅきぃ!」


ミレとクララは微笑み合った。


「おふたりとも、本当に仲良しですね」


「ええ。アリア様も、リリア様に会いたかったのでしょう」


大人たちが少し離れた場所で話している間、ふたりは花壇の前に並んで座った。


リリアはピンク色の花を指さした。


「おはなぁ!」


「きれぇねぇ!」


アリアも笑顔になった。


ふたりは花びらを眺めたり、柔らかい草に触れたりして遊んだ。


そのとき、アリアの手が止まった。


「……リリちゃん……」


「……あいちゃ?」


アリアはリリアの顔をじっと見つめた。


そして、小さな唇を震わせた。


「……ごめ……」


リリアは首をかしげた。


「……ごめ?」


アリアの目に、涙が浮かんだ。


「……ごめん、ねぇ……」


ぽろり。


小さな涙が、頬を伝った。


「……リリちゃん……ごめぇ……」


リリアは驚いて、アリアの顔を見つめた。


「……あいちゃ、ないない?」


小さな手で、アリアの頬をそっと触る。


アリアは首を横に振ろうとした。


けれど、母親から言われた言葉が頭に浮かんだ。


――誰にも話してはいけない秘密。


アリアは口をぎゅっと閉じた。


「……うぅ……」


涙が、また一粒こぼれた。


リリアは、アリアの手をぎゅっと握った。


「……あいちゃ、だいじょぶぅ……」


そして、自分の胸を指さした。


「リリ、ここぉ……!」


リリアはうまく言葉にできなかった。


でも、伝えたかった。


悲しくても、怖くても、ひとりじゃないよ、と。


アリアはリリアに抱きついた。


「……リリちゃん……しゅきぃ……」


「アリア、しゅきぃ……」


ふたりはしばらく、ぎゅっと抱き合っていた。


少し離れた場所から様子を見ていたミレとクララは、心配そうに顔を見合わせた。


「アリア様、どうされたのでしょう……」


「池の事件のことを、まだ怖がっていらっしゃるのかもしれませんね」


ふたりはそっと近づき、姫たちを優しく見守った。


誰も、アリアが何を秘密にしているのか、まだ知らなかった。


◆◆◆第二夫人の部屋――揺らぐ計画


そのころ、ヴィクトリアは自室で侍女から報告を受けていた。


「アリア様が、庭園でリリア様とお会いになったそうです」


「そう……」


ヴィクトリアは手元のカップを置いた。


「それで、何か話していたの?」


「詳しいことはわかりません。ただ、アリア様が泣いていらしたようです」


ヴィクトリアの眉がわずかに動いた。


(泣いた……?)


(まさか、あの子が何か話したのでは……)


「アリアは何か言っていた?」


「いいえ。リリア様と抱き合っていらっしゃったと聞いております」


ヴィクトリアは微笑みを作った。


「そう。知らせてくれてありがとう。下がっていいわ」


侍女が部屋を出ると、ヴィクトリアの表情から笑みが消えた。


(アリアはまだ幼い。話したくても、うまく説明できないでしょう)


(それに、池の事件を見た者がいたとしても、私が指示した証拠はない……)


彼女は自分に言い聞かせるように、静かに息を吐いた。


しかし、アリアが泣いていると聞いて、胸の奥に苛立ちが広がっていた。


(余計なことを話さないでちょうだい、アリア……)


そのとき、扉がノックされた。


「入っていいか」


入ってきたのは、皇帝アレクの弟、セドリックだった。


ヴィクトリアは、侍女がいないことを確かめてから声をひそめた。


「どうしたの、セドリック?」


「池の事件のことだ。陛下の耳に詳しい話が届く可能性はあるのか?」


「今のところ、誰もはっきりしたことは話していないわ」


ヴィクトリアは表情を曇らせた。


「アリアには、誰にも話してはいけないと伝えてあるわ」


「だが、あの子はまだ幼い。何かの拍子に口を滑らせるかもしれないぞ」


「わかっているわ。だからこそ、慎重に動かなければならないの」


セドリックは窓の外に目を向けた。


庭園では、リリアとアリアが楽しそうに遊んでいた。


「リリアが関わると、計画が狂うな」


「ええ。あの子は、思った以上に厄介な存在よ」


ふたりは視線を交わした。


セドリックはアレクの弟であり、ヴィクトリアと秘密裏に協力している男だった。


そして、アリアの本当の父親でもある。


しかし、その事実を知る者は、まだ誰もいなかった。


アリア自身も、セドリックが実の父親だとは知らず、ただ皇帝の弟として接していた。


もちろん、王宮の人々も、アリアがアレクの実の娘ではないことを知らなかった。


「アリアには、これ以上余計なことを話させないでくれ」


セドリックが低い声で言った。


ヴィクトリアは目を伏せた。


「わかっているわ。あの子は私の娘ですもの。私がきちんと話して聞かせるわ」


その言葉に、セドリックは一瞬だけ表情を硬くした。


「……ああ。頼んだぞ」


彼はそれ以上何も言わず、部屋を出ていった。


扉が閉まると、ヴィクトリアは深く息を吐いた。


(アリアは何も知らなくていい……)


(あの子には、ただ私の言うことを聞いていてもらえばいいのよ)


彼女は窓の外を見つめた。


庭園では、リリアとアリアが花びらを拾い、楽しそうに笑っていた。


ふたりは何も知らない子どものように、手をつないでいる。


けれど、その小さな友情こそが、ヴィクトリアの計画を崩すきっかけになり始めていた。


そして、リリアはまだ知らない。


アリアが抱えている秘密が、池の事件だけではないということを――。




◆◆◆「リリア姫、アリアちゃんの秘密を知りたい!」


庭園でアリアが涙を流した日の夕方。


リリアはエレナの部屋で、柔らかなクッションを抱きしめていた。


「……あいちゃ……」


池の事件のあと、アリアは何かを話そうとするたびに、悲しそうな顔をする。


リリアは、それが気になって仕方がなかった。


(あうぅ……アリアちゃん、かなちぃのぉ……)


(リリ、なでなで、ちてあげたいのぉ……)


「リリちゃん、どうしたの?」


エレナが優しく尋ねると、リリアは母親の顔を見上げた。


「ままぁ……あいちゃ……」


「あら、アリアちゃんのこと?」


「うん……あいちゃ、ないない……」


リリアは自分の目元を指でちょんちょんと触った。


「ないない、いやぁ……」


エレナは娘の言葉を聞いて、そっと抱きしめた。


「そうね。大切なお友達が悲しんでいると、心配になるわね」


「……うん」


「でもね、リリア。誰かが悲しんでいるときは、無理に聞き出さなくてもいいのよ。そばにいてあげるだけでも、きっと嬉しいものよ」


リリアはしばらく考え込んだ。


「……そばぁ?」


「ええ。アリアちゃんが話したくなったときに、優しく聞いてあげましょうね」


「……うん!」


リリアは小さな手をぎゅっと握った。


(リリ、まってるのぉ……)


(アリアちゃん、いつでも、おはなし、していいよぉ……)


その様子を見ていたポポとピピも、優しく頷いた。


「リリちゃんは、本当にアリアちゃんが大好きなのだな」


「うん。でも、ポポはアリアちゃんが泣いちゃったら、どうするの?」


「もちろん、ポポの得意な芸で笑わせるのだ!」


「どんな芸?」


ポポは胸を張り、くるりと一回転した。


ところが、足を滑らせてクッションに顔から突っ込んでしまった。


「ぽぽぉっ!?」


「きゃははっ!」


リリアは声を上げて笑った。


ピピもくすくす笑いながら、ポポを引っ張り出した。


「ポポ、それじゃあ笑わせるどころか、自分が笑われちゃうよぉ!」


「こ、これは高度な芸なのだ!」


部屋に、久しぶりに明るい笑い声が響いた。


けれど、リリアの心の中には、アリアを助けたいという気持ちが残っていた。


◆◆◆ 翌日――アリアから届いた小さな贈り物


翌朝。


リリアが朝食を終えて遊んでいると、ミレが小さな包みを持って部屋へ入ってきた。


「リリア様、アリア様からお届け物ですよ」


「……あいちゃ?」


リリアの顔がぱっと明るくなった。


包みの中には、柔らかな布で作られた小さな花の飾りと、少し曲がった絵が入っていた。


絵には、ピンク色の花と、ふたりの小さな女の子らしき姿が描かれている。


「まあ、かわいらしい絵ね。アリア様が描かれたのかしら」


ミレが微笑む。


リリアは絵を両手で持ち、嬉しそうに頬を緩めた。


「りりちゃん! あいちゃ!」


絵の中のふたりを指さす。


「いっしょぉ!」


ミレは微笑みながら頷いた。


「ええ。おふたりが一緒に遊んでいるところかもしれませんね」


リリアは花の飾りを胸に抱きしめた。


「……あいちゃ、しゅきぃ!」


そのとき、ポポが包みの中を覗き込んだ。


「おや? お菓子は入っていないのだ?」


ピピは呆れたようにポポを見た。


「ポポはなんでもお菓子なのぉ?」


「大事な確認なのだ!」


「ぽぽぉ!」


リリアがポポの頭をぺちぺちと叩く。


「だめぇ!」


「な、なぜなのだぁ!」


ミレは楽しそうな三人を見て、微笑ましく思った。


もちろん、彼女は知らない。


リリアがアリアの心配をしていることも、アリアが母親から秘密を守るよう言われていることも。


そして、アリアの小さな絵が、リリアにとって何より嬉しい贈り物になったことも。


◆◆◆ 第二夫人の部屋――アリアの迷い


そのころ、ヴィクトリアの部屋では、アリアが母親の隣に座っていた。


「ままぁ……」


「どうしたの、アリア?」


アリアは小さな手を膝の上で握りしめた。


「……リリちゃん、えへへ、したぁ……」


「リリアちゃんと遊びたいの?」


「うん……」


アリアは俯いた。


「……でも、アリア……」


言葉がそこで止まった。


ヴィクトリアは娘の顔を覗き込んだ。


「アリア、どうしたの? 何か言いたいことがあるの?」


アリアは母親を見上げた。


「……おはなし……して、いい?」


ヴィクトリアの表情がわずかに変わった。


「何のお話かしら?」


「……いけ……」


その言葉を聞いた瞬間、ヴィクトリアはアリアの手を握った。


「アリア。池のお話は、誰にもしてはいけないと約束したでしょう?」


アリアはびくっと肩を震わせた。


「……ひみちゅ……」


「そうよ。秘密なの」


ヴィクトリアは優しい声を作った。


「もし誰かに話したら、みんなが困ってしまうかもしれないわ」


アリアは困ったように眉を寄せた。


「……みんな、こまるぅ?」


「ええ。だから、何も話さなくていいのよ」


アリアは小さく頷いた。


「……うん……」


ヴィクトリアは娘を抱きしめた。


「いい子ね。お母様の言うことを聞いていれば大丈夫よ」


アリアは母親の胸に顔を寄せた。


けれど、その小さな胸の中には、まだ消えない不安が残っていた。


リリアが泣いていたこと。


自分も怖かったこと。


そして、本当はリリアに謝りたいと思っていること。


それらを、誰にも話せない。


アリアはまだ幼く、秘密を守ることと、悪いことを隠すことの違いもわからなかった。


ただ、母親の言葉を信じるしかなかったのだ。


◆◆◆ 天界――神々の懸念


そのころ、神界では四柱の神々が神鏡を見つめていた。


アリアが母親に抱きしめられている姿が映っている。


「ヴィクトリアは、アリアに秘密を守らせようとしていますね」


アテナが静かに言った。


「ええ。ただ、アリアがどこまで理解しているのかは、まだわかりません」


フィオナは悲しそうに目を伏せた。


「アリアも、リリアも、まだ小さな子どもなのに……」


ゼノは腕を組んだ。


「アリアは母親の言葉を信じている。だからこそ、何が正しいのか、自分で判断できないのだろう」


オルフェは神鏡に映るヴィクトリアを見つめた。


「彼女は池の事件を隠そうとしています。しかし、アリアの心には罪悪感が残っている。いつまでも押さえ込むことはできないでしょう」


「では、リリアが真実を知ったら……?」


アテナが尋ねた。


ゼノは少し考えてから答えた。


「リリアはアリアを責めるより、助けようとするだろう。だが、その優しさが新たな危険を招くこともある」


フィオナは神鏡に映るリリアの姿を見つめた。


リリアはアリアから届いた絵を抱きしめ、嬉しそうに笑っていた。


「リリちゃん……どうか、あなたまで傷つかないで……」


神々は、ただ見守るしかなかった。


人間たちにリリアの魔法を知られるわけにはいかない。


それでも、リリアが危険にさらされれば、神々は黙ってはいられない。


四柱の神々は、これから起こるかもしれない出来事に備え、神鏡を通して王宮の様子を見続けた。


◆◆◆ リリアの小さな約束


その日の夕方。


リリアは、アリアから届いた絵をベッドのそばに置いていた。


ポポとピピは、寝る前のおやつをめぐって言い争っている。


「ポポが先に見つけたのだから、ポポのものなのだ!」


「でも、みんなで食べるおやつだよぉ!」


「ポポにおまかせなのだ!」


「ピピもいっしょにやる〜!」


ふたりはおやつの袋を引っ張り合い、袋の中から柔らかな焼き菓子が一つ、ころんと転がり出た。


リリアはそれを見つけて、にこっと笑った。


「おやちゅ!」


ポポとピピが同時に振り向いた。


「あっ!」


「リリちゃん、見つけちゃったぁ!」


リリアは焼き菓子を手に取り、ふたりに向かって差し出した。


「はんぶんこぉ!」


ポポとピピは顔を見合わせた。


「……リリちゃん、優しいのだ」


「うん。みんなで食べようねぇ」


三人は仲良くおやつを分け合った。


そのあと、リリアはアリアの絵をもう一度手に取った。


「……あいちゃ……」


小さな指で、絵の中のアリアをそっと撫でる。


「……だいしゅきぃ……」


リリアは絵を胸に抱きしめた。


(アリアちゃん、かなちぃの、いやぁ……)


(リリ、アリアちゃんと、なかよち、ちたいのぉ……)


(だから……いっしょに、えへへ、するのぉ!)


リリアはまだ、秘密のすべてを知らない。


ヴィクトリアがアリアに何を教えたのか。


なぜアリアが池の事件を話せないのか。


そして、セドリックがその陰謀にどのように関わっているのか。


何もわからない。


それでも、リリアは決めていた。


大切な友達を、ひとりぼっちにはしない。


アリアが悲しんでいるなら、そばにいる。


アリアが困っているなら、助ける。


それが、リリアの小さな約束だった。


窓の外では、夕焼けに染まった空を一羽の小鳥が飛んでいた。


小鳥は王宮の塔をぐるりと回り、遠くの森へと向かっていく。


その先には、まだ誰も知らない真実が待っていた。


そして、ヴィクトリアの秘密もまた、少しずつ綻び始めていた――。





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