↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
13/109

第13話 アリア姫と秘密のお茶会! リリア姫、ふたりで大いたずら!?

第十三話アリア姫と秘密のお茶会! リリア姫、ふたりで大いたずら!?


おともだちといっしょ! ひみつのお茶会、はじまるよ!


王宮の朝。


大きな窓から、ぽかぽかとあたたかい日差しが差し込んでいた。


ふかふかの絨毯の上では、小さな皇女リリアが、積み木をぽんぽんと積み上げている。


その隣には、まんまるふわふわのポポとピピ。


「たかぁい! みてぇ!」


リリアが積み木を三つ重ね、嬉しそうに手をぱたぱたさせた。


「おおっ! リリア、すごいのだ! ポポも負けないのだ!」


ポポは胸を張り、積み木をどんどん積み上げていく。


ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ……。


「できたのだー!」


ポポの積み木は、リリアのものよりずっと高くなった。


ところが。


ぐらぐら……。


「あっ!」


ぽてんっ!


積み木は見事に崩れ、最後のひとつがポポの頭にすぽんと乗っかった。


「な、なんなのだ!?」


「きゃはははっ! ぽぽ、おもしろぉい!」


リリアは手足をばたばたさせて笑った。


ピピも、ふわふわの体を揺らして笑う。


「ポポ、へたっぴ〜!」


「なにおう! ポポにおまかせなのだ!」


「さっきも失敗したよぉ?」


「うぐっ!」


そんな賑やかな部屋に、侍女のミレがやってきた。


「リリア様。アリア様がお見えですよ」


その言葉を聞いた途端、リリアの顔がぱあっと明るくなった。


「アリアちゃぁん!」


リリアは両手を伸ばし、嬉しそうに足をばたばたさせる。


やがて扉が開き、侍女のクララに抱かれたアリアがやってきた。


アリアはリリアを見つけると、にこーっと笑った。


「リリちゃん!」


「アリアちゃぁん!」


クララがアリアを絨毯の上にそっと下ろすと、ふたりはよちよちと近づいた。


そして、ぎゅっと抱き合う。


同じ日に生まれたふたりは、まだ小さな赤ちゃん。


大人のように上手には話せないけれど、簡単な言葉なら少しずつ話せるようになっていた。


「リリちゃん、しゅきぃ!」


アリアがにこにこしながら、リリアのほっぺをぷにぷにする。


「アリア、しゅきぃ!」


リリアもアリアのほっぺをぷにぷに。


「あははっ!」


「えへへぇ!」


ふたりの笑い声が、部屋いっぱいに広がった。


「まあ、アリア様もリリア様も、本当に仲良しですね」


ミレが微笑む。


「ええ。お互いのお顔を見ると、いつも嬉しそうにされますね」


クララも優しくうなずいた。


そのとき、アリアが持っていた小さな布袋が、ころんと床に落ちた。


中から、色とりどりの花びらがこぼれる。


「あっ、おはな!」


アリアが指さした。


「おはなぁ!」


リリアも目をきらきらさせる。


「庭園で拾った花びらですよ。きれいですね」


クララが花びらを集めている間、ふたりは落ちている花びらをじーっと見つめていた。


アリアはピンク色の花びらを一枚拾い、リリアに差し出す。


「リリちゃん、はいっ!」


「あいがとぉ!」


リリアは嬉しそうに受け取った。


「きれぇねぇ!」


「うん! きれぇ!」


ふたりは花びらを大事そうに握り、顔を見合わせて笑った。


その様子を見ていたピピが、ひそひそと声をかけた。


「ねえねえ、ふたりとも。お花がいっぱいあるなら、お茶会をしようよ!」


「おちゃかい?」


リリアが首をかしげる。


「そう! かわいいお花を飾って、おいしいおやつを食べるの!」


「おやちゅ!」


リリアの手が、ぱっと上がった。


アリアも両手をぱたぱた。


「おやちゅ、たべりゅ!」


「リリもぉ! たべりゅ!」


ふたりは顔を見合わせ、にこにこ。


「よーし! ポポにおまかせなのだ!」


ポポは胸を張った。


「ポポ、どこにおやつがあるか知ってるの?」


ピピが尋ねる。


「もちろん知っているのだ! 厨房に行けば、きっとあるのだ!」


「勝手にもらっちゃだめだよぉ!」


「……そ、そうだったのだ」


ポポはしゅんと耳を垂らした。


そのとき、ミレとクララは、ふたりのために別の部屋からおもちゃを持ってくることになった。


「リリア様、少しだけお待ちくださいね」


「アリア様も、すぐに戻りますからね」


侍女たちが部屋を出ていく。


扉が閉まると、ピピがぴょこんと跳ねた。


「今なら、庭園で秘密のお茶会ができるよ!」


リリアはアリアの手をぎゅっと握る。


「アリアちゃん、いこぉ!」


「うん! いこぉ!」


アリアは嬉しそうにうなずいた。


ポポとピピも、ふたりの後を追いかける。


こうして、小さな皇女たちの秘密のお茶会計画が始まったのである。


* * *


お茶会の会場に選ばれたのは、王宮の庭園の片隅にある、小さな東屋だった。


色とりどりの花が咲き、噴水の水がきらきらと輝いている。


人間の姿が近くにないことを確かめてから、ポポとピピはリリアたちを東屋へ案内した。


「ここなら、ゆっくり遊べるのだ!」


ポポが胸を張る。


「わぁ! おはな、いっぱい!」


アリアは庭園を見渡して、嬉しそうに手をたたいた。


「きれぇねぇ!」


リリアもこくこくとうなずく。


「あっち、おはなぁ!」


ふたりはよちよち歩いて、花壇のそばへ向かった。


そのとき、東屋の近くから白猫が一匹、ひょこっと顔を出した。


続いて、子犬とウサギ、そして小鳥たちまで集まってくる。


「にゃあ」


「わんっ!」


「ぴぃぴぃ!」


リリアは目を輝かせた。


「にゃんにゃん! わんわん!」


アリアも両手をぱたぱたさせる。


「わんわん、きたぁ!」


「みんな、お茶会に来たの?」


ピピが動物たちに尋ねた。


白猫は、にゃあと鳴いてうなずく。


動物たちの言葉がわかるリリアは、嬉しそうに手を広げた。


「みんにゃ、おいでぇ!」


動物たちがリリアの周りに集まってくる。


アリアは白猫を見つめ、そっと手を伸ばした。


「にゃんにゃん、なでなでぇ!」


白猫はリリアの魔法で言葉を交わしていることなど知らないアリアの手にも、優しく頬をすり寄せた。


「きゃっ! ふわふわぁ!」


アリアは大喜び。


リリアも白猫の頭をなでなでした。


「にゃんにゃん、いいこぉ!」


「ふふっ。おふたりとも、動物が大好きなのだ!」


ポポが満足そうにうなずいた。


やがて、花びらがテーブル代わりの石台に並べられた。


リリアは花びらを一枚つまみ、アリアに差し出す。


「アリアちゃん、はいっ!」


「ありがとぉ!」


アリアはそれを受け取り、にこにこ。


ふたりは花びらを交換して、楽しそうに笑った。


その瞬間。


リリアの小さな指先から、きらりと光がこぼれた。


花びらが、ふわり。


もう一枚、ふわり。


やがて色とりどりの花びらが宙に舞い上がり、くるくるとふたりの周りを回り始めた。


ピンク、白、黄色、薄紫。


花びらたちは、ふたりの頭の上に集まっていく。


そして――。


ふわふわの花冠ができあがった。


リリアの頭には、ピンクの花冠。


アリアの頭には、白と黄色の花冠。


「わぁ……!」


ピピが目を丸くする。


「すごいのだ! リリアの魔法なのだ!」


ポポが感動したように声を上げた。


「しーっ! 人間には秘密だよぉ!」


ピピが慌ててポポの口をふさぐ。


リリアは自分の頭をぺたぺた触った。


「おはな、のってりゅ!」


アリアも花冠に気づき、両手でそっと触れる。


「アリアのぉ! かわいぃ!」


「うん! かわいぃ!」


リリアがにこにことうなずく。


アリアは花冠を気に入ったようで、何度も頭に手をやった。


もちろん、アリアは魔法を使っていない。


リリアがこっそり魔法で作ってくれた花冠を、ただ嬉しそうに楽しんでいるだけだった。


その隣では、リリアが木の実を石台の上に並べていた。


「これぇ、おやちゅにしよぉ!」


「木の実をおやつにするの?」


ピピが尋ねる。


リリアはこくこくとうなずいた。


「うん!」


そして、小さな手を木の実にかざす。


きらり。


木の実がころん、ころんと転がりながら、かわいらしいお菓子へと姿を変えていった。


丸いクッキーに、花の形の焼き菓子。


桃やリンゴを模した、小さなお菓子もある。


「わあああっ!」


ポポの目が輝いた。


「おやつなのだ! ポポにおまかせなのだ!」


「食べる係なら任せて、の間違いでしょ!」


ピピが突っ込む。


リリアはお菓子をひとつ持ち上げ、アリアに差し出した。


「アリアちゃん、はいっ!」


アリアは両手で受け取る。


「わぁ! おかちぃ!」


そして、ふたり同時にお菓子をぱくっ。


「んー! おいちぃ!」


「んまっ! あまいねぇ!」


ふたりは嬉しそうに頬をふくらませた。


「おいしいのだぁ……!」


ポポも感動しながらクッキーを頬張る。


ところが。


ポポが二つ目のクッキーを取ろうとしたとき、勢い余って石台にぶつかってしまった。


ぽーんっ!


お菓子が空高く舞い上がる。


「わあああっ! ポポのおやつがぁぁ!」


「みんなのおやつでしょ!」


ピピが叫ぶ。


空中のお菓子を追いかけて、子犬がぴょんっ!


ウサギもぴょんっ!


小鳥たちはぱたぱたと飛び回り、白猫は華麗にジャンプした。


その結果――。


お菓子は東屋のあちこちに散らばり、花びらは再び舞い上がり、ポポは布に足を取られてころんと転がった。


「ポポにおまかせなのだぁぁぁ!」


「ぜんぜん、おまかせじゃないよぉ!」


ピピの声が庭園に響く。


リリアとアリアは顔を見合わせて――。


「きゃはははっ!」


「きゃっきゃっ!」


ふたりそろって、大笑いした。


* * *


しばらくして、お茶会はますます賑やかになった。


白猫には花びらの首飾り。


子犬には小さな花冠。


ウサギの頭にも、ちょこんとお花。


小鳥たちは花びらをくわえて、ふわふわ飛び回る。


そして、リリアとアリアは手をつないで、花びらの中をよちよち歩いていた。


「アリアちゃん、また、あしょぼねぇ!」


リリアがアリアの手をぎゅっと握る。


「うん! また、あしょぼぉ!」


アリアもぎゅっと握り返した。


「アリア、だいしゅきぃ!」


「リリちゃん、だいしゅきぃ!」


ふたりは顔を見合わせて、にっこり笑った。


そのとき、庭園の向こうから人の声が聞こえてきた。


「リリア様は、こちらにはいらっしゃいませんでしたか?」


ミレの声だ。


「アリア様も見当たらないのです。もしかして、お庭に……?」


クララの声もする。


ポポの耳がぴんと立った。


「大変なのだ! 人間が来るのだ!」


「みんな、隠れて!」


ピピが小声で指示を出す。


動物たちは、さっと植え込みや東屋の陰へ移動した。


ポポとピピも、石台の下へ隠れる。


リリアとアリアは、きょとん。


「どうちたのぉ?」


リリアが小さな声で尋ねる。


「しーっ! 侍女さんたちだよぉ!」


ピピがささやいた。


リリアは自分の口に手を当てる。


「しーっ!」


アリアも、まねをして小さな手を口に当てた。


「アリアも、しーっ!」


ふたりは一生懸命に静かにしようとした。


……けれど。


アリアのお腹が、きゅるるる。


続いて、リリアのお腹も、きゅるるる。


ふたりは顔を見合わせた。


「おなか、すいたぁ……」


アリアがぽつり。


「おやちゅ、もっとぉ……」


リリアも小さくつぶやいた。


ポポが石台の下で頭を抱える。


「こんなときまでおやつなのだ……!」


「ポポもさっき、クッキーをいっぱい食べてたでしょ!」


ピピが小声で突っ込んだ。


足音が近づいてくる。


ミレとクララが東屋の入口に姿を現した。


「あら……?」


ミレは、花びらが散らばっているのを見て首をかしげた。


クララも、石台の上のお菓子を見つめる。


「誰か、お茶会でもしていたのでしょうか……?」


ふたりの視線が、東屋の隅へ向かった。


そこには、花冠をかぶったリリアとアリアが、ちょこんと並んで座っていた。


「あっ! リリア様!」


「アリア様!」


ミレとクララが駆け寄る。


リリアは、にこーっ。


「ミレぇ!」


アリアも、にぱーっ。


「クララぁ!」


ふたりは、何事もなかったかのように手を振った。


「まあ、花冠をかぶっていらっしゃるのですね。とてもかわいらしいですわ」


ミレが微笑む。


「アリア様も、きれいなお花ですね」


クララも優しく花冠を整えた。


ふたりは、花冠がどのようにできたのかなど、まったく知らない。


ただ、きれいなお花が頭に乗っていることが嬉しいだけだった。


「リリア様、こちらで遊んでいらしたのですね。お部屋に戻りましょう」


ミレがリリアを抱き上げる。


「はぁい!」


リリアは元気よく返事をした。


アリアもクララに抱き上げられる。


「アリア様も、お部屋に戻りましょうね」


「はぁい! クララぁ!」


アリアはクララの首に小さな腕を回した。


そして、リリアを見つけると、すぐに手を伸ばす。


「リリちゃん、またねぇ!」


「アリアちゃん、またねぇ!」


ふたりは離れたくないと言うように、何度も手を振り合った。


ミレとクララは顔を見合わせ、微笑んだ。


同じ日に生まれた、小さなふたりの皇女。


まだ難しいことは話せなくても、お互いを大切に思う気持ちは、少しずつ育っていた。


そして、誰もいなくなった東屋では――。


石台の下から、ポポがそろそろと顔を出した。


「ふう……危なかったのだ」


ピピも、ほっと胸をなでおろす。


「リリアの魔法、まだ人間には秘密だからね!」


「わかっているのだ! ポポは秘密を守る天才なのだ!」


「さっき大声で叫んでたよね?」


「……あれは、聞かなかったことにするのだ」


ポポはぷいっと顔をそむけた。


ピピは呆れながらも、くすくす笑った。


一方、ミレに抱かれたリリアは、アリアのことを思い出していた。


(アリアちゃん、だいしゅきぃ! また、あしょぼねぇ!)


クララに抱かれたアリアも、リリアのことを考えていた。


「リリちゃん、また、あしょぶぅ!」


アリアは嬉しそうに笑った。


もちろん、アリアには魔法の力などない。


今日のお茶会が楽しかったのも、きれいな花冠をかぶれたのも、リリアがこっそり魔法で手伝ってくれたからだ。


アリアはそんなことを知らず、ただ大好きなお友達と遊べたことを喜んでいた。


そして、リリアもアリアが大好きだった。


(ありあ、だいしゅきぃ……! また、おちゃかい、ちよぉねぇ!)


小さな皇女たちの笑顔は、今日も王宮を明るく照らしていた。


王宮の奥では、ヴィクトリアが、ふたりの皇女が仲良く遊んだという報告を聞いていた。


「そう……。アリアは、今日もリリアと一緒に遊んでいたのね」


ヴィクトリアは穏やかに微笑む。


アリアは、母の胸の内など何も知らない。


ただ、リリアと一緒に遊ぶことが嬉しいだけだった。


そしてリリアも、アリアを守りたいと思うほど、大切に感じていた。


(ありあ、ずーっと、おともだちぃ!)


その気持ちは、まだ小さなリリアの胸の中に、あたたかく芽生えていた。




リリアとアリアが秘密のお茶会を楽しんだ、その日の午後。


リリアは自分のお部屋で、ミレに抱っこされながらお昼寝をしていた。


頭には、庭園で作ったピンク色の花冠。


ベッドのそばでは、ポポとピピがひそひそ話をしている。


「いやあ、今日のお茶会は楽しかったのだ!」


ポポは満足そうにお腹をぽんぽん叩いた。


「ポポはクッキーを食べてただけでしょ?」


「それも大事な役目なのだ!」


「どこがよぉ!」


ピピが呆れた声を出した、そのとき。


「んん……」


リリアが小さく身じろぎした。


「おやちゅ……」


寝言だった。


ポポとピピは顔を見合わせる。


「……夢の中でもおやつなのだ」


「リリアらしいねぇ」


ふたりはくすくす笑った。


やがてリリアは目を覚ますと、むくりと上半身を起こした。


「んー……まま?」


「エレナ様は、少しお仕事をなさっていますよ」


ミレが優しく答える。


「ぱぱ?」


「陛下もお仕事中です」


「うー……」


リリアは少しだけ頬をふくらませた。


そして、ふと思い出したように手をぱんっと叩く。


「あっ! アリアちゃん!」


ポポがぴょこんと跳ねた。


「アリアとまた遊びたいのだな?」


「うん! アリアちゃん、あしょぶぅ!」


リリアは元気いっぱいに両手を伸ばした。


ピピがにっこり笑う。


「じゃあ、また一緒に遊べるように、お手紙を届けてもらおうよ!」


「おてがみぃ?」


「そう。アリアに、また遊ぼうって伝えるの!」


リリアは首をかしげたあと、こくこくとうなずいた。


「あい! あしょぼ、するぅ!」


ただし、まだ字を書くことはできない。


リリアができるのは、紙をくしゃくしゃにしたり、なぐり書きをしたりすることくらいだ。


「それなら、リリアの絵を描こう!」


ピピが紙とクレヨンを用意した。


リリアはクレヨンを握ると、紙の上にぐるぐると線を描いた。


ぐるぐる。


ぐにゃぐにゃ。


最後に、ぺたん!


ピンク色の丸ができあがった。


「できたぁ!」


リリアは得意げに紙を掲げる。


ポポがじっと見つめた。


「これは……おいしそうな桃なのだ!」


「ちがうよぉ! リリアのお顔でしょ!」


ピピが突っ込む。


リリアは紙を見つめ、にこっと笑った。


「りりぃ!」


どうやら、自分の顔を描いたつもりらしい。


ピピはその紙を大切に折りたたみ、アリアへの贈り物にした。


* * *


その頃、アリアのお部屋では――。


アリアがクララに抱かれながら、絵本を眺めていた。


絵本には、かわいいウサギや小鳥、お花が描かれている。


「うしゃぎぃ!」


アリアが絵を指さした。


「はい、ウサギさんですね」


クララが優しく答える。


「ぴよぴよぉ!」


「小鳥さんもいますね」


アリアは嬉しそうにページをめくった。


そこへ、侍女がリリアからの紙を届けに来た。


「クララ様。リリア様から、アリア様へのお届け物です」


「まあ、リリア様から?」


クララは紙を受け取り、アリアに見せた。


「アリア様、リリア様からですよ」


「りりちゃん!?」


アリアの顔がぱあっと明るくなる。


「りりちゃん、どこぉ?」


「今はご自分のお部屋にいらっしゃいますよ」


クララが紙を広げる。


そこには、ぐるぐるとしたピンク色の絵が描かれていた。


クララは少し考えたあと、微笑んだ。


「これは……リリア様のお顔でしょうか?」


アリアは絵をじっと見つめた。


そして、ぱっと笑った。


「りりちゃん!」


どうやら、ちゃんと伝わったらしい。


アリアは紙を両手で持ち、ぎゅっと胸に抱きしめた。


「りりちゃん、しゅきぃ!」


クララは思わず頬を緩めた。


「まあ……本当に仲良しですね」


アリアは紙を抱えたまま、クララの服をちょんちょんと引っ張った。


「クララぁ! りりちゃん、あいたいぃ!」


「リリア様に会いたいのですね」


「うん! あいたいぃ!」


アリアは何度もうなずいた。


「では、あとでリリア様のお部屋へ行きましょうね」


「やったぁ!」


アリアは両手をぱたぱたさせた。


その姿を見て、クララは微笑みながら準備を始めた。


* * *


しばらくして。


アリアがリリアのお部屋にやってきた。


扉が開いた瞬間、リリアはぱっと顔を輝かせた。


「アリアちゃぁん!」


「りりちゃぁん!」


ふたりはそれぞれの侍女に支えられながら、手を伸ばし合った。


近くまで来ると、ぎゅっと抱き合う。


「きゃははっ!」


「えへへぇ!」


リリアはアリアのほっぺをぷにぷに。


アリアもリリアのほっぺをぷにぷに。


「ぷにぷにぃ!」


「ぷにぷにぃ!」


ふたりは大喜びだ。


ミレとクララは顔を見合わせて笑った。


「おふたりとも、本当にお互いがお好きなのですね」


「ええ。見ているこちらまで嬉しくなります」


そのとき、リリアがアリアの手を引っ張った。


「あっちぃ!」


「なぁにぃ?」


アリアが首をかしげる。


リリアは窓の外を指さした。


「あっち、おはなぁ!」


庭園には、たくさんの花が咲いている。


アリアも窓の外を見て、目を輝かせた。


「おはな! きれぇ!」


「いこぉ!」


「いこぉ!」


ふたりは声をそろえて、手をぱたぱたさせた。


ミレとクララは、庭園へ連れていく準備を始めた。


もちろん、今度は侍女たちも一緒だ。


リリアは少しだけ頬をふくらませた。


(うー……。ぽぽとぴぴと、ないちょのおはな、ちたかったのにぃ)


けれど、アリアと一緒に遊べるのは嬉しい。


リリアはすぐに笑顔になった。


「アリアちゃん、いっちょ!」


「うん! いっちょ!」


ふたりは手をつなぎ、庭園へ向かった。


* * *


庭園に到着すると、ふたりは花壇の前に並んで座った。


ミレとクララはすぐそばで見守っている。


「リリア様、花を摘むときは、こちらの落ちている花びらにしましょうね」


ミレが優しく教える。


「はぁい!」


リリアは元気よく返事をした。


アリアも、落ちている花びらを一枚拾う。


「おはな、あったぁ!」


「きれぇねぇ!」


ふたりは花びらを並べ始めた。


赤い花びら。


黄色い花びら。


白い花びら。


ピンクの花びら。


アリアは黄色い花びらをリリアに差し出した。


「りりちゃん、はいっ!」


「あいがとぉ!」


リリアは嬉しそうに受け取った。


そして、花びらをそっと地面に置いた。


その瞬間、リリアの指先がきらりと光った。


花びらが、ふわり。


一枚、また一枚。


風もないのに、花びらたちがゆっくりと宙に浮かび上がった。


リリアは目を輝かせる。


「わぁ!」


アリアも驚いて、口をぽかんと開けた。


「おはな、ふわふわぁ!」


「きれぇねぇ!」


アリアは手を伸ばした。


花びらが、ひらひらとアリアの手のひらに舞い降りる。


アリアは大喜び。


「わぁ! つかまえたぁ!」


その様子を見たリリアは、嬉しくなって、さらに花びらを舞い上がらせた。


花びらはくるくると回り、ふたりの周りに小さな花の渦を作る。


ポポとピピは、植え込みの陰からその様子を見ていた。


「リリア、また魔法で遊んでいるのだ!」


「でも、きれいだねぇ」


ポポが目を輝かせる。


「ポポもやってみたいのだ!」


「だめだよぉ! 今はミレたちがいるんだから!」


ピピが慌てて止めた。


リリアは人間たちに見られないよう、花びらをそっと風に乗せて流した。


ミレとクララには、自然の風で花びらが舞ったように見えている。


「まあ、きれいな風ですね」


ミレが空を見上げた。


「花びらが、ちょうどおふたりのところへ集まっていますね」


クララも微笑んだ。


ふたりは、リリアの魔法だとは気づかない。


リリアは内心で、にこにこ。


(えへへぇ。きれいきれい、できたぁ!)


アリアは花びらを両手ですくい、リリアに見せた。


「りりちゃん! おはなぁ!」


「うん! おはなぁ!」


ふたりは花びらを頭に乗せ合い、楽しそうに笑った。


* * *


ところが。


花びらの渦が、思ったよりも大きくなってしまった。


ひらひらひらひら……。


庭園の小道まで花びらが飛んでいく。


植え込みの上にも、噴水の縁にも、花びらがふわふわと積もり始めた。


「……あら?」


ミレが不思議そうに周囲を見回した。


「こんなにたくさんの花びらが、どこから来たのでしょう?」


クララも驚いた様子で、花びらを拾い上げた。


「風が強くなったのでしょうか……?」


そのとき、リリアは気づいた。


(あうぅ……。いっぱい、なっちゃったぁ)


リリアは慌てて両手をぱたぱたさせた。


(もどってぇ……。おはな、もどってぇ!)


ふわふわと舞っていた花びらが、今度はゆっくり地面へ降りていく。


植え込みや噴水の縁に積もっていた花びらも、風に吹かれたように花壇のそばへ戻っていった。


あっという間に、庭園は元どおり。


ミレとクララは、ほっと胸をなでおろした。


「よかった。花壇のお花も傷んでいないようですね」


「ええ。風が収まったのかもしれませんね」


ふたりは笑顔で、リリアとアリアを見守った。


リリアは、ほっとひと安心。


(ふぅ……。もどったぁ!)


アリアは何も知らず、リリアの手をぎゅっと握っていた。


「りりちゃん、すごぉい!」


「えへへぇ!」


リリアは少し照れくさそうに笑った。


アリアが褒めてくれたのが、嬉しかったのだ。


* * *


夕方。


アリアが帰る時間になった。


クララがアリアを抱き上げると、アリアはリリアへ向かって手を伸ばした。


「りりちゃん、またねぇ!」


リリアも、ミレに抱かれながら手を振る。


「アリアちゃん、またねぇ!」


「また、あしょぼぉ!」


「うん! あしょぼぉ!」


ふたりは何度も手を振り合った。


やがてアリアの姿が見えなくなると、リリアは少しだけ寂しそうに唇を尖らせた。


「……アリアちゃん」


その声を聞いたポポが、そっと近づく。


「またすぐに会えるのだ!」


ピピも、リリアの頭を優しくなでた。


「そうだよ。ふたりは大の仲良しだもんねぇ」


リリアはこくこくとうなずいた。


「うん! だいしゅきぃ!」


そして、窓の外に広がる夕焼けを見つめた。


(あしたも、あそぼぉねぇ。アリアちゃん……)


その頃、アリアも馬車の中で、リリアからもらった絵をぎゅっと抱きしめていた。


「りりちゃん……だいしゅきぃ」


クララは優しく微笑み、アリアの頭をなでた。


「また明日、お会いできるといいですね」


「うん!」


アリアは嬉しそうにうなずいた。


ふたりの小さな皇女にとって、今日の秘密のお茶会は、かけがえのない思い出になった。


そして王宮のどこかで、ポポが小さくくしゃみをした。


「へくちっ!」


ピピが振り返る。


「どうしたの?」


「……花びらが鼻に入ったのだ」


「もうっ! ポポったら!」


リリアはふたりを見て、きゃははっと笑った。


今日も王宮は平和で、賑やかだった。


――けれど、リリアの小さな魔法が、いつか大きな運命に関わることになるなど、今はまだ誰も知らない。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。