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第114話 脱獄した三人の魔術兵士! リリア、宮殿へ向かう!

第114話 脱獄した三人の魔術兵士! リリア、宮殿へ向かう!


◆◆◆破壊された魔術封じの牢獄


セレスティア帝国の宮殿。


激しい戦闘が続く中、ガルたちのもとへ、一人の兵士が慌てて駆け込んできた。


「ガル殿! 大変です!」


「どうした?」


「魔術封じの牢獄が……破壊されました!」


「何だと!?」


ガルの表情が一瞬で険しくなった。


「牢獄が破壊されたというのか?」


「はい! 収容されていたヴェルザーク帝国の魔術兵士三名が、脱獄したとの報告です!」


「まさか……あの三人が!?」


セレスも驚いて目を見開いた。


アルセリアは信じられないという顔で声を上げた。


「嘘でしょ!? あの魔術封じの牢獄から出られるなんて!」


魔術封じの牢獄は、強力な魔術を使う者であっても簡単には破壊できない、厳重な封印が施された場所だった。


ガルたちが力を合わせて捕らえたザルヴェイン、バルゼルド、クロウ。


その三人が、牢獄を破壊して脱獄したというのだ。


「いったい、どうやって……」


セレスがつぶやく。


ガルは拳を強く握りしめた。


「考えている時間はない。あいつらを何としても捕まえないと、この国は完全に崩壊してしまう」


「でも、三人とも相当な魔力を持っているよ」


セレスの声には緊張がにじんでいた。


「分かっている。だが、放っておくわけにはいかない」


ガルは二人を見た。


「俺たちにできることは、あいつらと戦うことだけだ。いくぞ!」


「うん!」


「もちろんよ!」


三人は脱獄した魔術兵士たちを探すため、宮殿の中へと急いだ。


◆◆◆魔術兵士たちの食堂


そのころ、宮殿内にある魔術兵士たちの食堂では――。


ザルヴェイン、バルゼルド、クロウの三人が、まるで何事もなかったかのように食事をしていた。


「いやあ、久しぶりの食事だな」


バルゼルドは皿に盛られた料理を口に運んだ。


「牢獄の中では、まともに食べることもできなかったからな」


ザルヴェインも、落ち着いた様子で食事を続けている。


クロウは周囲を見回し、薄気味悪い笑みを浮かべた。


「それにしても、この宮殿もずいぶん荒れてしまったね」


「じきに、もっとひどいことになる」


ザルヴェインが淡々と答えた。


そのとき――。


「いたぞ! あそこだ!」


食堂の入口にガルたちが現れた。


「ザルヴェイン! バルゼルド! クロウ!」


ガルが叫ぶ。


三人は食事の手を止め、ゆっくりと顔を上げた。


「おやおや……」


クロウはナプキンで口元を拭きながら、余裕のある笑みを浮かべた。


「食事中に攻撃するなんて、マナーが悪い兵士さんだな」


「ふざけるな! お前たちを再び捕らえる!」


アルセリアが魔力を集中させた。


「封魔禁呪――!」


ガルもすぐに封印魔術を発動する。


「逃がすものか!」


セレスは幻影魔術を展開し、三人の動きを封じようとした。


しかし――。


「まったく、せっかちな人たちだ」


クロウが椅子から立ち上がった。


次の瞬間、クロウの周囲から黒い魔力が噴き出した。


「なっ……!」


ガルが防御魔術を展開するよりも早く、黒い魔力が食堂全体を襲った。


「ぐあああっ!」


ガルの体が吹き飛ばされ、壁に激突する。


「きゃああっ!」


セレスも床を転がり、アルセリアも強烈な衝撃を受けて倒れ込んだ。


「そんな……一撃で……!」


アルセリアは痛みに顔をしかめながら、何とか体を起こそうとした。


クロウは三人を見下ろし、再び不気味な笑みを浮かべた。


「せっかくの食事を邪魔されたんだ。少しくらい、お返しをしないとね」


そのとき、食堂の床から黒い霧が広がり始めた。


「黒い霧……!?」


セレスが目を見開く。


霧はあっという間に食堂を包み込み、ザルヴェインたちの姿を覆い隠していった。


「待て! 逃がすか!」


ガルが叫んだが、体が思うように動かない。


そして、霧が晴れたとき――。


三人の姿は、どこにもなかった。


◆◆◆傷ついた魔術兵士たち


「くっ……!」


ガルは壁に手をつき、何とか立ち上がった。


セレスもアルセリアも、強烈な攻撃によって負傷していた。


「たった一度の攻撃で、ここまで……」


セレスは息を整えながら、消えた三人がいた場所を見つめた。


アルセリアは悔しそうに床を叩いた。


「くやしい……! あんな攻撃、今まで受けたことがないわ!」


ガルは負傷した二人を見て、唇をかみしめた。


「無理をするな。まずは治療を受けるんだ」


「でも、あいつらを放っておけないよ!」


「分かっている。だが、今の俺たちでは追いつけない」


ガルは黒い霧が消えていった方向を見つめた。


「このままでは、本当に国が持たない……」


宮殿のあちこちから、兵士たちの悲鳴や負傷者を運ぶ声が聞こえていた。


戦える者は、もうほとんど残っていなかった。




◆◆◆邪悪なエネルギーと神々の確信


一方、宮殿から離れた場所では、エリシア、ルシェル、セラフィの三人が、黒い霧の発生源となっている場所にいた。


三人は、その場所から流れ続ける邪悪なエネルギーを封じようとしていた。


「聖なる光よ、この地に満ちる邪悪な力を浄化してください!」


エリシアが両手を広げる。


ルシェルも聖なる魔力を剣に集め、黒い亀裂へ向けて構えた。


「これ以上、邪悪な力を外へ流すわけにはいかない!」


セラフィも浄化の魔法を重ねた。


しかし――。


「そんな……!」


浄化の光が黒い亀裂に届いた瞬間、邪悪なエネルギーは消えるどころか、さらに強くなった。


黒い霧がうねり、周囲の空気まで重くなっていく。


「浄化しようとするほど、力が増しているようです!」


エリシアが驚きの声を上げた。


「これは、私たちの力だけで封じられるものではないかもしれない」


ルシェルが警戒を強める。


三人はすぐに天界へ状況を報告した。


そのころ、天界では神々が水晶の鏡を囲んでいた。


「やはり、間違いないようじゃな……」


ゼノが険しい表情で口を開いた。


「暗黒の神は、力を失わぬまま人間界に転生している」


アテナもうなずいた。


「ヴェルザーク帝国の魔術兵士たちも、何者かに操られているのでしょう。あの兵士たちが何度倒されても復活するのは、暗黒の神の力が働いているからだわ」


「魔術封じの牢獄を破壊したのも、同じ力だろう」


オルフェが水晶の鏡を見つめた。


「そして、脱獄したザルヴェイン、バルゼルド、クロウの三名も……」


フィオナが心配そうに尋ねた。


「暗黒の神に守られているということ?」


ゼノは静かにうなずいた。


「そう考えるのが自然じゃ。あの三人は、暗黒の神の暗黒の守護を受けている」


「それなら、普通の魔術では捕らえられないわね」


アテナは深刻な表情になった。


ゼノは三人の守護者に向けて言った。


「エリシア、ルシェル、セラフィ。脱獄した三名を捕らえてくるのじゃ」


「承知しました!」


「必ず捕らえてみせます!」


「お任せください!」


三人は力強く返事をした。


ゼノは続けた。


「暗黒の神の守護を受けた者たちを捕らえ、天界の裁きを下すのじゃ。そして、二度と地獄から出られぬようにする」


「それによって、暗黒の神の正体に近づけるのですね」


オルフェが尋ねる。


「そうじゃ。暗黒の神が誰なのか、その手がかりをつかめるかもしれぬ」


エリシアたちは、脱獄した三人を探すため、すぐに宮殿へと戻ることにした。


◆◆◆消えた三人を追う守護者たち


宮殿に戻ったエリシアたちは、ガルたちが襲撃された食堂へ向かった。


しかし、そこにザルヴェインたちの姿はなかった。


「脱獄した三人は、ここにいたのですね?」


エリシアが負傷した兵士に尋ねた。


「はい……。ガル殿たちが攻撃しましたが、強烈な魔力で吹き飛ばされてしまいました。その後、黒い霧に包まれて、三人とも姿を消したのです」


「黒い霧……」


ルシェルは周囲に残る邪悪な魔力を感じ取った。


「まだ、あの三人の魔力が残っています」


セラフィも目を閉じて意識を集中させる。


「黒い霧の発生源とつながっているようです。あちらへ向かった可能性があります」


「急ぎましょう!」


三人は邪悪なエネルギーの痕跡を追い始めた。


しかし、黒い霧の力は強く、三人の気配を簡単にはつかめない。


「必ず見つけ出します。あの三人を放っておくわけにはいきません!」


エリシアは決意を込めて言った。


◆◆◆ペンダントが映したもの


そのころ、離れた場所にある隠れ家では、リリアがペンダントを握りしめていた。


ペンダントの光の中には、宮殿の食堂で起きた出来事が映し出されていた。


ガルたちが吹き飛ばされる場面。


食堂を包み込む黒い霧。


そして、ザルヴェインたち三人が姿を消す瞬間。


リリアは小さな手をぎゅっと握った。


「たいへんなの……。ガルしゃんたち、いたいいたいなの……」


「リリアちゃん、大丈夫?」


ピピが心配そうに声をかけた。


リリアはペンダントを見つめながら話した。


「わるい兵士しゃんたち、くろいきりのところに、はいっていったの……」


「黒い霧の発生源に向かったということか?」


ノクスが鋭い声で尋ねた。


リリアはこくんとうなずいた。


「うん。リリア、みたの。あそこに、はいっていったの」


ポポは真剣な顔になった。


「ということは、あの三人は黒い霧の場所にいるのだな!」


「そうみたい……」


リュリュも小さく鳴き、リリアのそばに寄り添った。


リリアはすぐにペンダントを通して、エリシアたちに伝えた。


「エリシアしゃん! ルシェルしゃん! セラフィしゃん!」


三人の守護者に、リリアの声が届く。


「リリア様! どうされましたか?」


「わるい兵士しゃんたち、くろいきりがでているところに、はいっていったの! そこにいるとおもうの!」


「分かりました。お知らせくださり、ありがとうございます!」


エリシアたちは、すぐに黒い霧の発生源へ向かうことにした。


◆◆◆崩壊へ向かう宮殿


そのころ、宮殿では戦況がさらに悪化していた。


建物の壁は崩れ、廊下には瓦礫が散乱している。


負傷した兵士たちは次々と運び込まれ、治療を受ける者も増える一方だった。


「こちらにも負傷者がいます!」


「治療魔術を使える者は、すぐに手を貸してくれ!」


「もう、戦える兵士がほとんど残っていません!」


兵士たちの声には疲労と焦りがにじんでいた。


ヴェルザーク帝国の兵士たちは、倒しても倒しても現れる。


さらに、ザルヴェインたち三人まで脱獄した。


宮殿を守る兵士たちは、限界に近づいていた。


「このままでは……帝国そのものが崩壊してしまう」


誰かがそうつぶやいた。


それでも、ガルたちは諦めていなかった。


負傷した体を押して、再び戦場へ戻ろうとしていた。


「まだ終わっていない……」


ガルは壁に手をつきながら立ち上がった。


「俺たちが諦めたら、この国を誰が守るんだ」


セレスも傷ついた体を起こす。


「うん。まだ、助けを待っている人たちがいるよ」


アルセリアも悔しさをこらえながら、魔力を集めた。


「今度こそ、あいつらを止めてみせるわ!」


三人は、再び戦うために前を向いた。


◆◆◆リリア、宮殿へ向かう決意


隠れ家では、リリアがペンダントから目を離せずにいた。


宮殿の兵士たちは傷つき、もう戦える者もほとんど残っていない。


リリアの瞳に涙が浮かんだ。


「へいししゃんたち……いたいいたいなの……」


ポポがそっと近づく。


「リリアちゃん……」


リリアは小さな手で涙をぬぐった。


「リリア、たしゅけにいく!」


「えっ!?」


ピピが驚いて声を上げた。


「リリアちゃん、宮殿に行くの!?」


「うん! へいししゃんたち、もうたたかえないの。リリが、たしゅけりゅ!」


ノクスが静かに言った。


「宮殿は危険だ。今の状況で近づくのは簡単ではない」


「それでも、リリアは行くの!」


リリアははっきりと言った。


その表情を見て、四匹はすぐにリリアの決意が固いことを理解した。


ポポはペンダントを見つめた。


「これは、止めても聞かない顔なのだ……」


ピピもうなずいた。


「うん。リリアちゃん、もう決めちゃったんだね」


リリアはアリアのいる部屋へ向かった。


アリアは小さな寝台のそばで、ぬいぐるみを抱いて遊んでいた。


「リリアちゃ?」


リリアはアリアの前にしゃがみ、優しく頭をなでた。


「アリアちゃん、まっててねぇ。リリア、ぱぱとまま、それに、へいししゃんたちをたしゅけにいくの」


「リリアちゃんがたしゅけにいくの?」


「うん。アリアちゃんは、ここでまっててねぇ」


リリアはポポとピピを振り返った。


「ぽぽ、ぴぴ。アリアをまもってね」


「もちろん! ポポにおまかせなのだ!」


「ピピも、アリアちゃんを守るよ〜!」


しかし、ポポはすぐにリリアの方を向いた。


「でも、ポポも一緒に行くのだ!」


「ピピもいっしょに行く〜!」


二匹はリリアのそばに駆け寄った。


リリアは首を横に振った。


「だめなの。ぽぽとぴぴは、アリアちゃんをまもるの」


「でも、リリアちゃんが心配なのだ!」


「リリアちゃんを一人で行かせられないよ〜!」


「だいじょうぶなの。リリアには、リュリュたちもいるし、守護しゃんたちもいるの」


リュリュが元気よく鳴き、ノクスもリリアのそばに立った。


「我々がついている。心配はいらない」


リリアは二匹を見つめた。


「だから、アリアちゃんをおねがいねぇ」


ポポとピピは顔を見合わせ、最後にはうなずいた。


「分かったのだ。アリアを絶対に守るのだ!」


「うん! アリアちゃんは、ピピたちに任せてね!」


「ありがとぉ」


リリアはアリアの頬に小さく手を添えた。


「アリアちゃん、いいこ、いいこでまっててねぇ」


「うん! リリアちゃ、がんばってぇ」


アリアの言葉に、リリアはにっこり笑った。


◆◆◆忘れちゃいけないもの


リリアは宮殿へ向かう準備を始めた。


小さな外套を身につけ、ペンダントを胸元に確かめる。


そして、最後に大切なものを用意した。


「おやちゅも、もっていくの!」


「リリちゃん、おやつも持っていくの?」


ピピが思わず尋ねた。


「うん! おなかがすいたら、たいへんなの!」


ポポは大きくうなずいた。


「そのとおりなのだ! 戦うときも、おやつは大切なのだ!」


ノクスは小さくため息をついた。


「まったく……こんなときまで食べ物の心配か」


リュリュはおやつの袋を見つめ、うれしそうに鳴いた。


リリアは袋を大事そうに抱えた。


「じゅんび、できたの!」


そのころ、天界では――。


水晶の鏡に映るリリアの姿を見て、神々が一斉に慌てていた。


「な、何じゃと!? リリアが宮殿へ向かうじゃと!?」


ゼノが大声を上げた。


「だめよ! 今の宮殿は危険すぎるわ!」


アテナも心配そうに身を乗り出した。


「暗黒の神の力が広がっている場所へ、リリアが近づくなんて……」


フィオナは両手を胸の前で握りしめた。


「リリア、大丈夫かしら……。あの子が傷ついたらどうしましょう」


オルフェは水晶の鏡に映る未来を見つめた。


「リリアの決意は固い。止めようとしても、きっと聞かないだろう」


「しかし、あの子はまだ二歳なのじゃぞ!」


ゼノの声が天界に響く。


「それでも、リリアは大切な人たちを守ろうとしているのよ」


アテナは静かに言った。


「私たちも、できる限りの力でリリアを守らなければ」


神々は水晶の鏡を囲み、リリアの行く先を見守った。


人間界では、宮殿の崩壊が迫っている。


黒い霧の奥には、暗黒の神の力が渦巻いている。


そして、リリアはついに、自分の意志で戦場へ向かおうとしていた。


「ぱぱぁ、ままぁ、まっててねぇ。リリが、たしゅけりゅからねぇ!」


小さな姫の決意が、静かに動き始めた。


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