第110話 神様たちへの怒り! 隠されていた戦争の真実
第110話 神様たちへの怒り! 隠されていた戦争の真実
◆◆◆リリアの怒り
隠された別荘では、リリアとアリアが不安そうに身を寄せ合っていた。
遠くから、何度も大きな爆発音が聞こえてくる。
ドォォォン!!
「ひゃあっ!」
アリアはびくっと体を震わせ、リリアの服をぎゅっとつかんだ。
「こわいよぉ……ままぁ……」
「だいじょうぶだよぉ。リリがいっちょにいるからねぇ」
リリアはアリアを抱きしめた。
けれど、リリア自身も不安でいっぱいだった。
パパは無事なのだろうか。
ママは大丈夫なのだろうか。
宮殿や町では、いったい何が起きているのだろう。
リリアは胸元のペンダントを握りしめた。
すると、ペンダントが淡く光り始めた。
そこに映し出されたのは、宮殿の周辺で戦うエリシア、ルシェル、セラフィの姿だった。
三人は神々から遣わされた守護者として、アレクや兵士たちを守りながら戦っている。
「……あっ! ぱぱを、まもってりゅ!」
リリアは三人の姿を見つめた。
「エリシアしゃん、ルシェルしゃん、セラフィしゃん……ありがとぉ」
しかし、映像の向こうでは、黒い霧が広がり、その中から敵兵が次々と現れていた。
倒されたはずの兵士まで、何事もなかったかのように立ち上がっている。
「どうちて……?」
リリアの顔から笑顔が消えた。
「ぽぽ、ぴぴ、りゅりゅ、のくす……リリ、かみしゃまたちに、ききたいことがありゅの」
四匹の仲間は、リリアの真剣な表情を見てうなずいた。
「ポポにおまかせなのだ!」
「ピピもいっしょに聞くよ〜!」
リリアはペンダントを両手で包み込んだ。
「かみしゃまぁ! きこえりゅ? リリのおはなし、きいてぇ!」
すると、ペンダントから光が広がり、天界にいる神々の姿が映し出された。
「リリア、どうしたのだ?」
ゼノが優しく声をかける。
しかし、リリアはいつものように笑わなかった。
「かみしゃまたち! リリ、おこってりゅの!」
神々は驚いた。
「えっ?」
「リリア……?」
リリアはペンダントをぎゅっと握った。
「どうちて、ペンダント、いままで光らなかったのぉ?」
「それは……」
「どうちて、せんそうがはじまること、リリにないちょにちてたのぉ?」
リリアの大きな瞳に、涙が浮かんだ。
「リリ、ぱぱとままがだいしゅきなの! みんながあぶないの、しらなかったの!」
「リリア、落ち着いて聞いてちょうだい」
アテナが話しかけた。
けれど、リリアは首を横に振った。
「やだぁ! おはなし、ききたくないの! どうちて、リリにおちえてくれなかったのぉ!」
小さな手が、ペンダントを強く握りしめる。
「リリ、みんなをまもりたいのに……。ぱぱも、ままも、アリアも、みんなも……」
とうとう、リリアの目から涙がこぼれた。
「リリだけ、なにも知らなかったのぉ……」
天界の神々は、すぐには言葉を返せなかった。
リリアを心配させたくなかった。
まだ幼いリリアに、戦争の恐ろしさを知らせたくなかった。
そう考えて、神々は戦争が始まることを伝えずにいた。
しかし、その判断がリリアを深く傷つけてしまったのだった。
◆◆◆神様たちの説明
「リリア……本当にすまなかった」
ゼノが静かに頭を下げた。
「私たちは、お前を怖がらせたくなかったのだ」
「でもぉ……」
リリアは涙をぬぐいながら、ゼノを見つめた。
「こわくても、リリ、しりたかったの。ぱぱとままがあぶないなら、いっしょにかんがえたかったのぉ」
アテナは悲しそうに目を伏せた。
「ペンダントが光らなかったのは、私たちが映像を見せるための力を制限していたからよ。戦争が始まる前から、リリアに余計な心配をかけないようにしていたの」
「じゃあ……かみしゃまたちが、光らないようにちてたの?」
「そうよ。私たちの判断だったわ」
「どうちてぇ……!」
リリアの声が震えた。
「リリ、もう赤ちゃんじゃないもん! みんなをまもりたいもん!」
「リリア、あなたが大切だからこそ……」
フィオナが言いかけたが、リリアは首を横に振った。
「だいしぇつだから、ないちょにちたの? でも、リリは、ないちょにされるの、いやなの!」
オルフェは、苦しそうに目を閉じた。
「私たちの判断が間違っていた。すまない、リリア」
そのとき、リリアはペンダントの映像に目を向けた。
黒い霧の中から、また敵兵が現れている。
倒された兵士も、傷ひとつない姿で立ち上がっていた。
「……あの兵士さんたち、どうちて何回も出てくりゅの?」
「黒い霧に、何か特別な魔力が込められているようね」
アテナが映像を注意深く見つめた。
「倒された者まで復活している。普通の魔法では説明できないわ」
リリアは小さくうなずいた。
「だれかが、わるい魔法で、兵士しゃんたちを生きかえらせてりゅの」
「その可能性は高い」
ゼノの表情が険しくなった。
「そして、リリア。お前が感じているものは何だ?」
リリアは胸に手を当てた。
「こわい神しゃまがいるの……。黒い霧のむこうに、こわい神しゃまがいるの」
「神だと?」
オルフェの表情が変わった。
「どんな姿をしているか、見えるか?」
リリアは何度も目をこすった。
「見えないの……。どこにいるのかも、よくわからないの。でも、とってもこわいの」
神々は顔を見合わせた。
黒い霧を操り、倒れた兵士たちを復活させる存在。
そして、リリアでさえ姿を捉えられない何者か。
神々の胸に、強い危機感が広がった。
3 守護者たちへの伝達
「ゼノ、すぐに守護者たちへ知らせましょう」
アテナが言った。
ゼノはうなずき、水晶の鏡に手をかざした。
「エリシア、ルシェル、セラフィ。聞こえるか」
戦場では、三人の守護者の前にゼノの声が響いた。
「はい、ゼノ様」
エリシアが応じる。
「リリアが黒い霧について知らせてくれた。霧の中から敵兵が次々と現れ、倒された兵士までも復活しているそうだ」
「復活ですか……?」
ルシェルが剣を構え直した。
「さらに、リリアは黒い霧の背後に恐ろしい神の気配を感じている。ただし、その姿までは見えていない」
セラフィの表情が引き締まった。
「神の気配……。やはり、この戦いには何か大きな存在が関わっているのですね」
「まだ正体は分からぬ。だが、アレクと人々を守ることを最優先にしてくれ」
「承知しました」
三人は力強く答えた。
「私たちが必ず守ります」
4 パパとママを守りたい
そのころ、別荘ではリリアが再びペンダントを見つめていた。
「ぱぱ……まま……」
小さな手が震えている。
「リリ、みえちゃったの……。ぱぱも、ままも、つかまっちゃうの……」
アリアが不安そうにリリアの顔を見上げた。
「リリちゃ……まま、だいじょぶ?」
「アリアぁ……」
リリアはアリアをぎゅっと抱きしめた。
「だいじょうぶにしゅるの。リリが、ぱぱとままをまもるの!」
ポポがそっと近づいた。
「リリちゃん、ポポたちも一緒なのだ!」
「ピピもいるよ〜! みんなで守るからね!」
リュリュも小さな体を光らせ、ノクスはリリアのそばに寄り添った。
リリアは涙をぬぐい、天界の神々を見つめた。
「かみしゃまたち……もう、ないちょにちないでね」
ゼノは深くうなずいた。
「ああ。これからは、分かっていることをきちんと伝えよう」
「やくしょくだよぉ……」
「約束だ」
リリアは小さな指で涙をぬぐった。
けれど、その瞳にはまだ不安が残っていた。
戦場では、黒い霧がさらに広がり、敵兵たちが次々と姿を現している。
そして、その霧の奥には、リリアでさえ姿を見ることのできない恐ろしい存在が潜んでいた。
戦いは、まだ終わらない。
リリアは大好きな家族を守るため、今度こそ自分にできることをしようと決意するのだった。




