第108話 優勢な戦況と不気味な笑い! 捕らえられた三人の邪悪な魔術師
第108話 優勢な戦況と不気味な笑い! 捕らえられた三人の邪悪な魔術師
◆◆◆守護者たちの反撃
王宮前では、ヴェルザーク帝国の兵士たちと王国の騎士、魔術兵士たちによる激しい戦闘が続いていた。
「敵を押し返せ! ここを突破させるな!」
ガルが杖を掲げる。
「光の鎖よ、邪悪なる者たちを縛れ! ホーリーチェイン!」
青白い光の鎖が地面から伸び、敵兵士たちの腕や足に絡みついた。
「くそっ! また拘束魔術か!」
敵兵士が鎖を引きちぎろうとするが、ガルの魔術は簡単には破れない。
その隙に王国の騎士たちが前進した。
「今だ! 敵を押し返せ!」
「おおおっ!」
騎士たちは一斉に剣を振るい、敵兵士たちを後退させた。
一方、アルセリアは複数の敵魔術師を相手にしていた。
「私の魔術を甘く見ないでよね!」
彼女が両手を広げると、空中にいくつもの光の魔法陣が浮かび上がった。
「光の矢よ、邪悪なる魔力を貫け! シャイニングアロー!」
無数の光の矢が敵兵士たちへ向かって飛んでいく。
敵は黒い盾を展開した。
「闇の防壁よ、すべてを防げ!」
しかし、光の矢は盾にぶつかると、次々にその表面を貫いていった。
「なにっ!?」
敵兵士たちは慌てて後退した。
「やったわ!」
アルセリアは得意げに笑った。
その近くでは、セレスが冷静に戦況を見極めていた。
「左側の敵が集まっていますね……。あそこを崩せば、王宮前の防衛線を立て直せるはずです」
普段の天然な雰囲気は、すっかり消えていた。
セレスは杖を高く掲げる。
「天空の風よ、敵の進路を閉ざせ! 天翔風壁!」
巨大な風の壁が敵兵士たちの前に現れた。
敵兵士が黒い炎を放つ。
「焼き尽くせ!」
ゴォォォッ!
黒い炎が風の壁にぶつかる。
しかし、セレスは魔力をさらに高めた。
「甘いわ。風は一方向だけではないのよ!」
風の壁が渦を巻き、黒い炎を包み込んで上空へと押し上げた。
「今です! 騎士団の皆さん!」
「了解!」
王国の騎士たちが一斉に前へ進む。
敵兵士たちは、次第に押し戻されていった。
◆◆◆天界から来た三人の守護者
王宮の別の場所では、天界から送り込まれた三人の守護者も戦い続けていた。
エリシアは大きな聖なる盾を展開し、敵の攻撃から騎士たちを守っていた。
「聖なる守護よ、すべての攻撃を受け止めよ! ホーリーガーディアン!」
光り輝く巨大な盾が騎士たちの前に現れる。
敵兵士が黒い雷を放った。
バリバリバリッ!!
しかし、黒い雷は聖なる盾に触れた瞬間、光に包まれて消えていった。
「な、何だと!? 我らの魔術が通用しない!」
エリシアは騎士たちに声をかけた。
「今のうちに負傷者を後方へ運んでください! ここは私が守ります!」
「ありがとうございます!」
その隣では、ルシェルが剣を構えていた。
敵の魔術師が黒い刃を放つ。
「闇の刃よ、切り裂け!」
ルシェルは一歩も退かず、剣を振り抜いた。
「聖剣よ、邪悪なる魔力を断ち切れ!」
白い光が剣から放たれ、黒い刃を次々と消し去っていく。
さらにルシェルは敵との距離を一気に詰めた。
「これで終わりだ!」
光の斬撃が敵の魔術を打ち砕き、敵兵士たちは武器を落として倒れ込んだ。
一方、セラフィは広場に広がる邪悪な魔力を浄化していた。
「清らかな光よ、闇に染まった力を浄化せよ! セイクリッドピュリフィケーション!」
柔らかな光が広がり、黒い魔力が次々と消えていく。
敵兵士たちは魔術を使おうとしても、思うように力を発揮できなくなっていた。
「ばかな……! 魔力が弱まっている!」
「あなたたちの邪悪な魔力は、もう人々を傷つけることはできません!」
セラフィはさらに光を広げた。
三人の守護者たちの活躍によって、王宮周辺の戦況は少しずつ王国側に傾いていった。
3 優勢を伝える報告
やがて、一人の騎士がアレクのもとへ駆け込んできた。
「アレク陛下! ご報告いたします!」
「どうした?」
「王宮前の戦闘ですが、守護者たちと魔術兵士たちの活躍により、こちらが優勢になっております! 敵兵士たちは次々と後退しています!」
アレクは少しだけ表情を和らげた。
「そうか……。よく持ちこたえてくれた」
「はい! エリシア殿たちの守護魔術が非常に強力です。騎士たちもその援護を受け、敵を押し返しています!」
アレクはうなずいた。
「引き続き、負傷者の救護を優先しながら戦線を維持せよ。決して無理はするな」
「畏まりました!」
騎士が去った後、アレクは窓の外を見つめた。
王宮を守るために戦っている者たち。
町で負傷した人々を治療している医師たち。
そして、まだ避難を続けている住民たち。
「この戦いを、何としても終わらせなければならない……」
アレクは静かに拳を握った。
しかし、彼にはもう一つ、気になっていることがあった。
海上の船にいた三人の邪悪な魔術師。
彼らは本当に、これで終わりなのだろうか。
◆◆◆捕らえられた三人の余裕
そのころ、王宮の地下にある魔術封じの牢獄では、ザルヴェイン、バルゼルド、クロウの三人が漆黒の結界に閉じ込められていた。
三人は魔術を使うことができず、外へ出ることもできない。
それでも、彼らの表情には恐怖がなかった。
ザルヴェインは壁にもたれ、薄笑いを浮かべていた。
「まったく……。まさか、あのような方法で不意打ちを仕掛けてくるとはな」
バルゼルドは鼻で笑った。
「お前が船の中でのんびり楽しんでいたせいで、こんなことになったんだろう?」
「ふん。お前だって同じようなものだろう」
クロウは二人を見ながら、静かに笑った。
「まあ、いいじゃないか。少しばかり予定が変わっただけだ」
三人は顔を見合わせた。
そして、突然、大きな笑い声を上げた。
「ははははは!」
「ふはははは!」
「はははははは!」
魔術を封じられ、牢獄に閉じ込められているにもかかわらず、三人はまるで何も心配していないようだった。
牢獄の外に立っていた騎士たちは、その様子を不気味に感じていた。
「おかしい……。魔術を封じられているというのに、なぜあんなに余裕なのだ?」
「何か、まだ隠しているのかもしれないな」
そこへ、騎士団長が現れた。
「どうした?」
騎士の一人が報告する。
「捕らえた三人の魔術師ですが、先ほどから笑い続けています。こちらが話しかけても、まともに答えようとしません」
騎士団長は牢獄の中をのぞいた。
三人は彼に気づくと、さらに口元をゆがめた。
「おやおや、誰かと思えば……」
ザルヴェインがゆっくりと顔を上げた。
「陛下のお出ましか?」
騎士団長は眉をひそめた。
「何だと?」
三人はまた笑い始めた。
「ははははは!」
騎士団長は胸の奥に、言いようのない不安を感じた。
彼らは捕らえられている。
魔術も使えない。
それなのに、まるで自分たちが勝利したかのような態度を崩さない。
「……何かがおかしい」
騎士団長はすぐにアレクへ報告することにした。
◆◆◆皇帝アレクの尋問
しばらくして、アレクは騎士団長とともに地下牢獄へ向かった。
重い扉が開かれる。
その奥には、漆黒の魔術封じの牢獄があり、三人の魔術師が閉じ込められていた。
アレクは三人の前に立った。
「お前たちが、ヴェルザーク帝国の魔術師か」
ザルヴェインは薄く笑った。
「そうだと言ったら、どうする?」
アレクは落ち着いた声で尋ねた。
「まず聞きたいことがある。お前たちの皇帝は誰だ?」
三人は答えなかった。
「なぜ、これほど多くの国を攻めている? お前たちの目的は何だ?」
今度はバルゼルドが笑った。
「目的だと?」
クロウも口を開いた。
「そんなことを知って、どうするつもりだ?」
アレクは表情を変えずに続けた。
「お前たちの国は突然現れ、次々と大国を滅ぼしている。アーリー帝国も、オルガノス帝国も、お前たちによって倒された。何が目的なのか答えろ」
ザルヴェインはアレクを見つめた。
そして、ゆっくりと口を開いた。
「我々の目的は一つだ」
アレクは身を乗り出した。
「何だ?」
「この世界は、我々の皇帝様がお治めになる」
三人は顔を見合わせた。
そして、また大きな笑い声を上げた。
「ははははは!」
「ふはははは!」
「我々の陛下は、神も恐れるお方だからな!」
アレクの表情がわずかに変わった。
「神も恐れる……だと?」
ザルヴェインは笑いながら続けた。
「そうだ。お前たちのような小さな国の皇帝が、我らの陛下に逆らえると思うな!」
「我々の陛下の力を知れば、お前もすぐに分かるだろう」
バルゼルドが高笑いする。
クロウも黙ったまま、不気味な笑みを浮かべていた。
アレクはさらに質問を続けた。
「その皇帝はどこにいる? 名前は何だ?」
しかし、三人はそれ以上何も答えなかった。
何度尋ねても、返ってくるのは笑い声だけだった。
6 見えない敵への不安
尋問を終えたアレクは、騎士団長とともに地下牢獄を後にした。
通路を歩きながら、騎士団長が口を開いた。
「陛下、あの三人の態度は、どうにも気になります」
「私も同じことを考えていた」
アレクは足を止めた。
「魔術を封じられ、捕らえられているにもかかわらず、まったく恐れていない。まるで、まだ自分たちが勝っていると信じているようだった」
「はい。何か策があるのでしょうか?」
「分からない……」
アレクは考え込んだ。
ヴェルザーク帝国は、突然現れた。
そして、強大な軍事力と魔術によって、次々と国を滅ぼしている。
しかし、その皇帝が誰なのか。
どのような人物なのか。
どれほどの力を持っているのか。
何一つ分かっていない。
「神も恐れる皇帝……。あの三人は、なぜあそこまで自信に満ちているのだろう」
騎士団長は答えられなかった。
アレクは深く息を吐いた。
「敵の正体も、目的も分からないままでは、これから先の戦いを予測することもできない」
「陛下……」
「今回の戦いに勝ったとしても、それで終わりではないのかもしれない」
アレクは窓の外を見つめた。
夜空には、まだ黒い煙が残っている。
町の復旧、負傷者の治療、捕らえた敵兵士の管理。
そして、これからも続くかもしれない戦争。
「長い戦いになる……」
アレクはそう感じていた。
一方、地下牢獄に残された三人は、まだ笑っていた。
「陛下は、何も知らないようだな」
「そうだな。まだ始まったばかりだ」
「我らの皇帝様が動かれる日を楽しみにしていよう」
三人の笑い声が、冷たい地下牢獄に響き続けていた。
王国はまだ知らない。
ヴェルザーク帝国の背後に、どれほど大きな存在が潜んでいるのかを。
そして、その存在が本格的に動き出すとき、どれほど恐ろしい戦いが待っているのかを。




