第103話 反撃作戦始動! 三人の魔術師に託された使命
第103話 反撃作戦始動! 三人の魔術師に託された使命
◆◆◆地下シェルターでの作戦会議
黒雷の攻撃が止まり、王宮にひとまずの静けさが戻った。
しかし、地下シェルターに集まったアレク皇帝や騎士団長、魔術師たちの表情は険しいままだった。
敵の攻撃は一度止まっただけで、戦いが終わったわけではない。
ヴェルザーク帝国の船には、ザルヴェイン、バルゼルド、クロウという三人の強力な魔術師が残っている。
彼らが次にどんな攻撃を仕掛けてくるのか、誰にも分からなかった。
アレクは会議に集まった者たちを見渡し、静かに口を開いた。
「先ほどの黒雷は、ガル君たちの魔術によって止めることができた。しかし、敵にはまだ三人の強力な魔術師が残っている。このまま守り続けるだけでは、いずれ王国が危険にさらされるだろう」
騎士団長たちがうなずく。
「陛下のおっしゃるとおりです。敵の魔術師たちは、こちらの防御を上回る攻撃を仕掛けてくる可能性があります」
「だからこそ、こちらから動かなければならない」
アレクは地図の上に置かれた敵の船を示した。
「まずは、あの船にはりめぐらされている結界を壊す必要がある。敵に気づかれないうちに結界を破り、攻撃される前に、こちらから先手を打つのだ」
「しかし、敵の船を守っている結界は相当強力です。簡単には破れないでしょう」
魔術師の一人が心配そうに言った。
その場にいた者たちは、すぐには意見を出せなかった。
敵の結界を壊そうとすれば、当然、敵にも気づかれる危険がある。
そのときだった。
「あの~、私なら結界を壊すことができますよ!」
声を上げたのは、アルセリアだった。
一同の視線が彼女に集まる。
ガルは驚いた顔でアルセリアを見た。
「お前、あの強力な結界を気づかれずに壊すことが本当にできるのか?」
周囲からざわめきが起こった。
「本当に可能なのか?」
「あの結界を破るとなると、かなりの魔力が必要なはずだが……」
しかし、アルセリアは自信たっぷりに胸を張った。
「もちろんよ! 私なら、敵に気づかれずに結界を壊すことができるわ!」
ガルは少し不安そうに眉を寄せた。
先ほどの黒雷の封印でも、アルセリアは一人で何とかしようとして失敗している。
今度は大丈夫なのだろうか。
そんなガルの心配をよそに、アレクはアルセリアを見つめた。
「そうか。では、アルセリアに任せよう」
「陛下!」
「ただし、失敗は許されない。敵に気づかれれば、こちらの作戦そのものが危険にさらされる。慎重に行動するのだ」
アルセリアは背筋を伸ばし、深く頭を下げた。
「陛下、畏まりました。私にお任せください!」
その堂々とした返事に、周囲の者たちは少し安心したようだった。
一方、ガルとセレスは顔を見合わせた。
そして、二人そろって小さくため息をついた。
「……大丈夫かな」
セレスが小声でつぶやく。
「まったくだ」
ガルも小さく返した。
アルセリアは二人の声が聞こえたのか、少しだけ頬を膨らませた。
「ちょっと! 二人とも、何か言いたいことがあるの?」
「いや、何でもない」
ガルはすぐに視線をそらした。
アレクはそんな三人の様子を見て、わずかに表情を和らげた。
だが、まだ重要な問題が残っていた。
結界を壊した後、敵の三人をどうやって倒すのか。
アレクは再び地図に目を向けた。
◆◆◆セレスとガルの提案
「結界を気づかれずに壊すことができたとして、次はどのように攻撃するべきか……」
アレクは腕を組み、考え込んだ。
敵の三人は、これまでの魔術兵士とは比べものにならないほど強力だ。
船を攻撃するだけでは、三人を倒せるとは限らない。
むしろ、船を攻撃したことで敵が自由に動けるようになれば、こちらが不利になる可能性もある。
そのとき、セレスがおずおずと手を挙げた。
「あの~、私も一つ提案があるのですが……」
ガルがセレスに目を向ける。
「なんだ、何かあるのか?」
アレクも優しくうなずいた。
「遠慮しなくてよい。話してみなさい」
「あっ、はい!」
セレスは少し緊張しながら説明を始めた。
「私の魔術に、敵に気づかれずに船を破壊し、沈める魔術があります。アルセリアが結界を壊した後に、私がその魔術を使って船を破壊したらどうかと思いまして……」
「船を破壊する、か……」
アレクは地図を見つめた。
確かに、敵の船を沈めることができれば、敵の動きを封じることができるかもしれない。
しかし、それだけでは不十分だった。
「三人は邪悪な魔術師兵士だ。船を破壊しただけでは、三人を倒したことにはならない。船から脱出して、こちらに攻撃してくる可能性もある」
「そう、そうですよね……」
セレスは少し残念そうにうつむいた。
すると、今度はガルが口を開いた。
「陛下。船を破壊した後、三人の魔術を封じて、生け捕りにすればよいのではないでしょうか」
アレクはガルに視線を向けた。
「魔術を封じることはできるのか?」
「はい。最初の作戦では、幻影王都に敵兵を閉じ込め、魔力を封じ込めました。あのときと同じように、三人の魔力を封じ込める魔術があります」
「それは、ガル君が使える魔術なのか?」
「はい。私が使えます」
ガルは迷いなく答えた。
「ただし、相手は非常に強力です。簡単に封じ込められるとは思っていません。船を破壊して動きを制限したうえで、三人の魔力を一気に封じる必要があります」
「なるほど……」
アレクはしばらく考え込んだ。
アルセリアが敵の結界を壊す。
その後、セレスが船を破壊する。
そして、ガルが三人の魔力を封じ込める。
三人の力を順番に使えば、敵を生け捕りにできる可能性がある。
しかし、少しでも手順を間違えれば、敵に反撃の機会を与えてしまう。
「隊長たちは、他に何か案はないか?」
アレクが騎士団長たちに尋ねた。
隊長たちは互いに顔を見合わせ、小声で相談を始めた。
「敵の結界を壊せる者がいるのなら、その方法に賭けるしかないのでは?」
「船を沈めた後に魔力を封じる。それ以上の作戦は、今のところ思いつかない」
「三人が連携して動くのなら、成功する可能性はあるだろう」
しばらく話し合った後、騎士団長の一人がアレクに向き直った。
「アレク陛下。現状では、三人の魔術師が提案した作戦を実行するしかないかと存じます」
別の隊長も続けた。
「我々も全力で支援いたします」
アレクは静かにうなずいた。
「分かった」
そして、アルセリア、セレス、ガルの三人を見つめた。
「アルセリア、セレス、ガル。お前たち三人に、この作戦を任せる。敵に気づかれずに結界を破り、船を沈め、三人の魔力を封じ込めるのだ」
三人は真剣な表情で返事をした。
「はい、お任せください!」
「必ず成功させます!」
「陛下のご期待に応えてみせます!」
アレクは三人に向かって力強く言った。
「頼んだぞ。王国の人々の命が、お前たちの作戦にかかっている。無理はせず、必ず三人で協力するのだ」
「はい!」
三人は深く頭を下げた。
そして、作戦の準備を始めるため、会議室を後にした。
3 三人に託された使命
会議室を出た三人は、廊下を歩き始めた。
アルセリアは、どこか得意げな表情を浮かべていた。
「ふふん! これで私の出番ね。敵の結界なんて、私が簡単に壊してみせるわ!」
ガルはすぐに釘を刺した。
「簡単に、なんて考えるな。相手は黒雷を操る魔術師だ。少しでも油断すれば、こちらが危険になる」
「分かっているわよ!」
「本当に分かっているのか?」
「もう! ガルは心配しすぎなの!」
セレスは二人の間に入り、苦笑した。
「まあまあ。今回は三人で協力する作戦なんだから、仲良くしましょうよ」
ガルはため息をついた。
「そうだな。とにかく、準備を急ごう。敵が次の攻撃を始める前に、こちらの作戦を実行しなければならない」
アルセリアも、今度は真剣な表情でうなずいた。
「分かったわ。絶対に成功させましょう!」
三人は、それぞれの役割を果たすために歩き出した。
一方、海上に停泊するヴェルザーク帝国の船では、三人の敵魔術師が静かに次の動きを待っていた。
王国側が反撃の準備を進めていることを、まだ彼らは知らない。
果たして、アルセリアたちは敵に気づかれずに結界を壊すことができるのか。
王国の反撃作戦が、いよいよ動き始めようとしていた。




