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霊力

「リーフカッター!」


カブトムシのような見た目の霊獣アイコーがそう叫ぶと周囲の木々から無数の葉が舞い、鋭い刃となって水のアクアを襲う。

この葉っぱの刃はアイコーが守護するこの山々の聖なる力、霊力が具現化したものであり本物の木の葉ではない。

なので、やろうと思えばどこからでも葉っぱの刃を作り出すことができるが、イメージしやすい木の枝に生み出す方が簡単で強さも増す。

また、こうすることで相手に木のある所からしか出せないと思い込ませることもできる。


「無駄ですわ。」


刃とかした数百の木の葉が自身の体に届く前に水のアクアは姿を水の塊に変える。

プシュッ、プシュッと水の中を木の葉の刃が通り抜ける小さな音が聞こえる。


「水の魔力で体が構成されたワタクシに、物理攻撃は効かないと言ったはずですわ。」


「何事も自分で試してみないと納得できないタチなんだ。」


アイコーが霊力から作り出した木の葉の刃。

今回の攻撃は、これが物理攻撃にカテゴライズされるのか確かめるためのものだった。

先ほど、相手の動きを止めるために同じように霊力で作った木の葉や根に効果がなかったことから予測はしていたが、やはり霊力で具現化したものも物理攻撃に入るらしい。


「では、納得していただけましたか?」


「ああ。確かに物理攻撃は効かないみたいだ。」


「では、降参なされたらいかがですか?そうしたら少ししか苦しまないように殺してさしあげますわ。」


「それは無理な相談だな。山々を守護する霊獣として命を懸けてこの自然はアタシが守る!」


「そうですか。それではワタクシの可愛い魔獣ちゃんたちの命を奪った罪を悔いながら苦しんで死んでくださいな!」


今度は水のアクアが攻撃を仕掛ける。


(魔獣を倒したのはアタシじゃなくてラルクだぞ!)


あまりの速さにラルクが魔獣を倒すところを視認できなかった水のアクアは自分と戦っているアイコーがこの3人の中のいちばんの実力者であり、自分の魔獣を殺した犯人を決めつけていた。


「見苦しく踊り死になさい!水のワルツ!」


水のアクアが人差し指をタクトに見たてて一定のスピードで宙に三角形を描く。

するとアイコーを囲むように水の刃が現れ、三拍子のリズムで順に飛んでくる。

必死にかわそうとする者がワルツを踊っているように見えることから水のアクアはこの技を『水のワルツ』と名付けていた。


「食らうか!タモサン!」


アイコーを囲むように地面から生えたタモの木が水の刃から彼を守る。

しかし、硬いタモの木といえど三拍子のリズムで次々と放たれる水の刃に少しずつ削られていく。


「いつまで耐えられるかしら?浅はかにも魔力切れを待ってらっしゃるの?残念ですけどその木を全部削ってからでもあなたを切り刻むくらいの魔力はありますわよ。」


「アカン、このままじゃジリ貧や!」


戦いを見守っているサンマに似た霊獣アカシヤが焦りの声を上げる。


「ラルク、助けてやらんのか!?」


「これはアイコーの勝負だ。あいつが手を貸してくれと言うまで俺は手を出せん。」


「助けを求める前に死んでしまうで……。」


「大丈夫、あいつの目は死んでいなかった。」


ラルクは水の刃が飛び交う中、アイコーを守るタモの木の中を上から覗き、様子を見てきたのだった。


「お前、規格外にも程があるで。」


アカシヤが呆れてツッコむ。


「アイコーは何かの準備をしている。そして、準備が整うのはもう間もなくのはずだ。」


ラルクの言うとおりだった。

アイコーはタモの木の中で霊力を練り上げていた。

膨大な霊力を使った()()を作り上げるには十分な時間が必要だった。


「できた!」


アイコーがそう叫ぶのとタモの木が水の刃で切り裂かれるのは同時だった。

水の刃に切り刻まれながらもアイコーは霊力で作った()()を解き放った。


「『星のない世界!』」


その瞬間、水のアクアは漆黒に押しつぶされた。






「いてて……。」


水の刃に体中を切り裂かれ、傷だらけのアイコーをアカシヤが手当てしている。


「ちちんぷいぷいいたいのいたいのちかくのおれにとんでけー☆」


サンマに似た霊獣アカシヤがそう唱えるとアイコーの体の傷が柔らかな光に包まれて消えていく。


「いったああああ!めちゃくちゃ痛いで、これええええええ!!」


傷を治すと共に、痛みを他人に肩代わりさせるアカシヤの回復魔法だが、今回はアイコーの痛みをアカシヤが自分で肩代わりした。


「助かったぞ、アカシヤ。だが、これで痛みを肩代わりさせられる側の辛さも理解できたろう?もう無暗にアタシに肩代わりさせるんじゃないぞ。」


「いったああああ!いたいいいいいい!!」


アカシヤは肩代わりした痛みの大きさに地面を転げ回っている。


「ダメだ。アタシの話を全く聞いてないな。」


ため息をつくアイコーの肩にラルクがそっと手を置く。


「まあ、許してやってくれ。しかし、こいつはすごいな。」


ラルクの見上げる先にはつい先ほどまではなかった、巨大な山があった。


「ふっ、ラルクを驚かせたなら気分がいいな。」


この山はアイコーが霊力で作り出したものである。

山々を守護する霊獣であるアイコーは霊力で山にあるものを作り上げることができた。

作り上げることができるものの範囲は山そのものにも及ぶ。


「山を作ってその中に敵を閉じ込めたのか。」


「ああ。水になれば物理攻撃は効かないといっても、土に埋められてしまえば水はどんどん浸透していき、いずれ魔力は尽きる。あいつの体を作る水も、普通の水のように木の根に浸透してきたのは攻撃した時に感じていた。だから、土にも浸透するだろうと思って作戦を立てたんだ。」


また、アイコーは水のアクアの魔力を消耗させるためにギリギリまで攻撃を受け続けた。

万が一にも土の中から出て来られないように。


「だが、これでは地図が変わってしまうな。」


アイコーが守護する山脈の上に、新しい山ができた。

おそらく、この大陸でいちばん高い山だろう。

珍しい戦闘パート。

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― 新着の感想 ―
[良い点] アカシヤ優しい! でもどっちもどっちのいいコンビ
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