残像
「お前、大魔王の手下と言ったな。」
カムトムシに似た霊獣アイコーが水色の肌をした魔族に向かって言う。
「そうですわ。ワタクシこそ大魔王様の配下のひとり、水のアクアですわ。」
「ということはこの山に魔素を振りまいて、動物たちを狂わせた犯人のひとりということだな?」
「あらぁ、ワタクシたちの大切な魔素を動物たちが吸ってしまったですって?それはその動物たちに罰を与えなくてはならないですわねえ。この世界では貴重な魔素なんですもの。」
アイコーの訴えに、むしろ自分たちこそ被害者だと言わんばかりの水のアクア。
「そうですわね、罰は……生きたまま魔素ごと魔獣に食べさせるってところですわね!」
水のアクアがそう言うと、再び地面から数十本の水の柱が噴き出し、水の塊が魔獣に姿を変える。
全部で50匹はいるだろう。
「何をする気だ!?」
怒気をはらんだ声で問いかけるアイコーに涼し気な声色で水のアクアが返す。
「この山の動物たちがワタクシたちの大切な魔素を吸ってしまったというので、取り返そうと思いましたの。体に取り入れた魔素を出させることはできませんから、魔獣たちに動物ごと食べさせてあげるのですわ。」
魔獣たちは水のアクアが指示を出せば今にも山の中を駆け巡り、動物たちを手あたり次第襲っていくだろう。
アイコーひとりでは50匹以上いる魔獣全てを止めることはできそうにない。
まして、目の前には元凶である水のアクアがいる。
こいつを放っておくこともできないのだ。
「ラルク、サンマ!魔獣の処理を頼んでもいいか?アタシはこの水色露出狂オンナを倒す!」
「誰が、サンマや!俺はアカシヤっていう立派な名前があるんや!」
見た目はサンマにニンゲンの手足が生えた霊獣アカシヤがカブトムシみたいな霊獣アイコーに猛抗議する。
「分かった。魔獣は俺たちで対処しよう。」
「頼んだぞ、ラルク!」
そんなアカシヤを無視して、ラルクはアイコーに魔獣の相手は任せろと答える。
それを聞いたアイコーは水のアクアの方に向き直り、彼女を睨みつける。
「あらあら、恐い顔ですわね。でも、たったふたりでワタクシの可愛い魔獣ちゃんたちを相手できると思っていますの?」
「魔獣たち?」
水のアクアの言葉にラルクが返す。
「そうよ、ワタクシの生み出した魔獣たちが見えなくて?もしかして、美しすぎるワククシしかあなたの目に映らないのかしら?」
そう言うと自慢の魔獣たちの姿を確認しようと水のアクアは自分の背後に振り向く。
「な、なんじゃこりゃああああああ!?」
水のアクアの水色の顔が真っ青に変化する。
振り向いた彼女の視線の先、そこには頭が吹き飛んだ50数体の魔獣の亡骸が転がっていたのだった。
「すごいね、これ。ラルクがやったの?」
「大したことはない。汚れた手を拭く時間の方が長かったくらいだ。」
水のアクアが生み出した魔獣を葬ったのはもちろん、ラルクの仕業だ。
常人の千倍のステータス、神をも凌ぐ力を持ってしまった彼にとって魔獣が50匹や100匹いたところで問題はない。
***
1分前。
“「分かった。魔獣は俺たちで対処しよう。」”
この瞬間にラルクは動き出している。
まずはガルチェ&ドッバーナのシャツのボタンを外す。
シャツとズボンとパンツを脱いだラルクはその場にきれいに畳んで洋服を置く。
“「頼んだぞ、ラルク!」”
残像のラルクにアイコーが声をかけている間に、ラルク(全裸)はすでに自分に近い方から5匹の魔獣の顔面をパンチして吹き飛ばしている。
ラルク(全裸)のパンチにより達磨落としのように頭だけ飛んでいった魔獣たちはまだ自分が死んだことに気付いていない。
“そんなアカシヤを無視して、ラルクはアイコーに魔獣の相手は任せろと答える。”
“それを聞いたアイコーは水のアクアの方に向き直り、彼女を睨みつける。”
ここでラルク(全裸……以下略)に頭を吹き飛ばされた最初の5匹の体が崩れ落ちる。
しかし、周りの魔獣たちは驚かない。
ラルクの『村人パンチ』によって彼らもまた頭を吹き飛ばされ、仲間が倒れる姿を見ることができないからだ。
最初の5匹からドミノ倒しのように魔獣たちが倒れていく。
すでに残っている魔獣は4匹。
“「あらあら、恐い顔ですわね。でも、たったふたりでワタクシの可愛い魔獣ちゃんたちを相手できると思っていますの?」”
ラルクは元の位置に戻りながら残った4匹の頭をパンチで弾き飛ばしていく。
水のアクアがその言葉を言い終わる前にサンマに似た霊獣アカシヤに手についた魔獣の体液をなすりつけるが、アカシヤ自身がヌルヌルしていて後悔。
仕方なく近くの木の葉っぱで手を拭ってから元の位置に戻った。
“「魔獣たち?」”
水のアクアの言葉に(魔獣の体液で汚れないように脱いでいた洋服を着終えた)ラルクがそう返したのだった。
全裸で動き回るとぺちんぺちんって当たるんですよね




