親 その4
「はじめまして、アルフレッド・カイメーと申します。僕を勇者様のパーティーに入れてください!」
あどけなさを残した金髪の少年が屈託のない笑顔で勇者ルートヴィッヒに声をかけてきた。
「いきなりなんだ、お前は。ん?アルフレッド・カイメー?」
「はい、アルって呼んでください!」
「いや、そこじゃない。カイメーの方だ。お前、カイメー家の人間なのか?」
「ええ、一応は。そのツテもあって、こうやって勇者様がこの街に現れたら連絡をもらえるようにしていたんです!」
「なんだか、勇者くんのファンみたいなんだぞ。」
「ファンだなんて恐れ多い!僕なんてただの信者ですよ!」
「それってどっちが上か下かよく分からないんだぞ。」
どちらにしろこの少年が勇者に憧れを抱いていることは確かなようだ。
その証拠とばかりに陽の光に照らされた金色の髪の毛に負けないくらい、ルートヴィッヒを見つめるその瞳が輝いている。
「知っていると思うが、俺たちはこれから大魔王の討伐に行くんだ。危険な旅になるんだぞ?」
「もしかして、僕の身を案じてくれているんですか!?や、優しい!感激です!」
アルフレッド少年はまた手帳を取り出し、何やらメモを取り始める。
「勇者様は大魔王を倒す旅に同行したいと言った僕のことを心配してくださった。ご自身は危険の真っただ中にその身を晒しているのにも関わらず。僕はそこに勇者様の優しさと強さを感じたのだった。」
「おい、何をしている。」
「あ、これは将来、勇者様の活躍を本にしたいと思っておりまして、そのためにメモをしていました!」
「そ、そうなのか。(足手まといだからついてくるなと言ったつもりだったのだが、勘違いを訂正しにくい雰囲気になってしまったな。)」
「僕のことなら心配いりませんよ!カイメー家の一員として、先祖の顔に泥を塗らないよう訓練を積んでいますから!」
戦争によりこの地をバナナイカ王国の領土とした将軍カイメーの血を引く者として、カイメー家の子供は武芸全般の訓練をさせられるという。
勇者ルートヴィッヒもその話は聞いたことがあった。
「だが、お前は何歳なんだ?見たところ子供のようだが。」
「僕は15歳ですよ!もう立派な大人です!」
確かに、市民の子供であれば15歳なら独り立ちしていてもおかしくない。
実家の生活に余裕がないため、それくらいの年齢になれば自分で自分の食い扶持を稼ぐ必要に迫られるからだ。
「しかし、貴族なら15歳でもまだ教育を受けたり、訓練を受けたりしている年齢でもあるはずだが。お前の親は何と言っているのだ。」
「そ、そりゃあ、勇者様のお役に立てるのならと両手を上げて喜んでいるとかいないとかそうだといいなと思っていたりとか。」
「つまり、親には話をしていないということだな。」
「は……はい。」
(正直、足手まといにならない程度の実力があるならこいつが勝手についてきて適当に野垂れ死んでも俺は構わないが、家柄が家柄だけに余計なトラブルは避けたい。)
勇者ルートヴィッヒはわざとらしくフウと息を吐き、アルフレッド少年に向かって言った。
「お前の家に行くぞ。両親を説得してみろ。あと、今日はこの街に泊まる。お前の家に空いている部屋があれば貸してくれ。」
「は、はい!勇者様に家に泊まっていただけるなんて光栄だなあ!」
嬉しさと緊張が入り混じった笑顔のアルフレッドを見て、勇者はもう一度ため息をつく。
(さて、こいつの親がちゃんと引き留めてくれればいいんだが。)
先ほどの広場からほど近い、街の中心にある大きな屋敷がアルフレッドの家だ。
「お城みたいに大きな家だぞ!」
冒険者ピーチが感嘆の声を上げる。
「ふん、城とは比べ物にならんだろ。これだから田舎者は困る。」
「大きい家を見たらとりあえず『お城みたい』って褒めるのが気遣いなんだぞ!そんなんだからパーティーメンバーに逃げられるんだぞ。」
勇者ルートヴィッヒの厭味に、ピーチも厭味で応酬する。
「そういえば、以前のパーティーとはメンバーが違うようですがどうされたんですか?」
「あいつらとは……方向性の違いというか、まあ前向きな意味で分かれたんだ。それぞれのスキルアップのためとかそんな感じでな。」
「音楽バンドの解散じゃないんだぞ。」
「そうなんですか!是非、お会いしてみたかったんですけどね、聖女マリヤン様に大魔導士ジキル様。あと誰かいたような……。」
「いや、いないぞ。俺のパーティーは3人だった。うん、間違いない。」
「そうでしたっけ?でも、3人だったということは僕が今のパーティーに加わればまた同じ人数に戻りますね!ちょうどいいと思いませんか?」
「いやあ、ウチのパーティーは社会人経験豊富な人を求めているんだよね。新卒や社会人経験の浅い人を採用する予定は今のところないかなあ。」
「なんで急に中途採用の面接に就職に失敗した新卒がきちゃった時の面接官の真似をしているんだぞ?」
「なんとなく。」
「まあまあ。とにかく中に入ってください。今日は父も母も家にいるはずですから!」
「それじゃあ、おじゃましますだぞ!」
アルフレッドに促され屋敷の敷地に入っていく勇者ルートヴィッヒと冒険者ピーチ。
その様子を見てアルフレッドは手帳に『勇者様は右足からカイメー家の敷地に入っていった』と書き記していた。
「その情報いる!?」
勇者にあこがれる少年。ファンダジーっぽくなってきましたね!(途中の比喩で台無し)




