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親 その3

大魔王の配下である四将軍のひとり森のフォレストを見事に倒した勇者ルートヴィッヒは国境の街『サー・カイメー』に来ていた。


「この街は大昔、バナナイカ王国と隣国『アイーダ』が戦争になった時に活躍した騎士カイメーにちなんで名付けられたんだぞ。今も街の中央にはカイメーの子孫が住んでいるんだぞ。」


ときどきやけに説明口調になる冒険者ピーチがそう言うとルートヴィッヒが相槌を打つ。


「この国で教育を受けた者なら誰でも知っている話だ。」


当時、この地はアイーダの領土であり、バナナイカ王国との国境はずっと西だった。

しかし、長く激しい戦争の末、バナナイカ王国がここまで領土を広げ、今の大国の礎を築いた。

その時に活躍したのが騎士カイメーなのだ。


「戦争に参加した時は無名の騎士だったカイメーだが、戦争中に活躍が認められ、この地を攻める時には将軍になっていた。そして、この街を占拠した際にはアイーダ国の住民にも配慮し、兵による略奪などは許さなかったという。」


「そして、バナナイカ王国の別の街から移住してきた人たちとアイーダ国時代から住んでいる住民との調和の肖像として、カイメーがこの街を治めるようになったんだぞ。」


それがこの街『サー・カイメー』の由来である。


ここバナナイカ王国から大魔王が待つ東のコクバル王国に行くためには両国の間にある『アイーダ』を通らなくてはならない。

そして、アイーダに行くためのルートのひとつが『サー・カイメー』である。


「サー・カイメーは代々領主の方針でバナナイカ王国だけでなく敗戦国であるアイーダ国の文化も大切にしてきたんだぞ。それを知って色々な国から人々が集まってきて、今ではこの大陸の縮図みたいになってるんだぞ。」


人種、服装、食べ物。

デカイ大陸の各地から集まったそれらの中にはバナナイカ王国の他の街ではあまり見られないものも多くある。

それぞれは調和も何もないような個性を主張しているが、街全体を見るとそれがひとつの巨大なエネルギー体として見事に機能していた。






***


「森のフォレストが死んだ……か。」


「四将軍の中でも魔力量では右に出る者はいないというのに!?」


「あいつはバナナイカ王国を任されていたはずだろ!?ってことは勇者のしわざか?」


「ナント イウ コト ダ。」


仲間の死を感じ取った大魔王の配下である四将軍の残りのメンバーがテレパシーで話をする。


「四天王の紫のヴァイオレットが死んで喜んでいたが、まさか我々にも死者が出るとはな。」


「ええ、先に大魔王様に造られたというだけで大きな顔をしている四天王の無能さを嘲笑っていたところですのに。」


「チクショウ!四天王のことを笑えなくなっちまったじゃねえか!」


「森ノふぉれすと ノ カタキ ハ オレ ガ 討ツ。」


「鉄のアイアン。お前は大魔王様より別の任務を承っていたはずだ。ついでに勇者を討つには方向が違い過ぎる。」


「ウフフ、それならワタクシの出番ね。ワタクシはバナナイカ王国と隣接するリナート帝国の侵略を任されているから近いし。」


「おっと、待ちやがれ!水のアクアには悪いがここは炎のフレイム様に任せてもらうぜ!俺様が任されているのはアイーダ国。ちょうど勇者が向かってくるところだろうからな。」


「それでは炎のフレイム、お前に任せるとしよう。」


「ああ、任せろ!だがな、風のウインドウ。お前がリーダー面しているのは気に入らねえ。勇者を倒したら俺様が四将軍のリーダーってことを認めてもらうぜ!」


「別にリーダーの座など求めておらぬ。お前たちにまとまりがなさすぎるからお守りを大魔王様から仰せつかっているだけだ。」


大魔王が従えし上級魔族からなる四将軍。


森のフォレスト。

鉄のアイアン。

水のアクア。

炎のフレイム。

そして、風のウインドウ。


彼らは気付いていなかった。

四将軍なのに元は5人いたことに。


※『風のウインドウ』の名前は将来、主人公か勇者につっこまれてキレるまでが様式美です。

 賢明な読者諸兄は気付いていると思いますが、知らないふりをしてあげてください。






***


サー・カイメーの街の中心付近には大きな広場がある。

その中央には若き日のカイメー将軍の石像が建てられている。


「これがこの街のシンボル『若き日の英雄の像』なんだぞ!」


「将来は俺もこんな像を作られるんだな。」


「勇者くんはすでに魔王を倒したことになっているから、たぶん石像か銅像を作ってもらえるんだぞ。大魔王に殺されてそれが墓標にならないといいんだぞ。」


「縁起でもないことを言うな、この胸なし女!」


「はあ~?勇者くんなんてラルクくんに敵わない能無し勇者のくせに!」


「俺がいつラルクに敵わなかった!?」


「後ろから斬りかかって怪我ひとつ負わせられなかったの、知ってるんだぞ!」


「それはちゃんと戦って負けたわけじゃないからノーカンだ!」


「その考えは都合がよすぎるぞ!勇者くんが倒せなかった魔王もラルクくんが倒したんだからラルクくんの方が強いに決まってるぞ!」


「じゃあ、グーはチョキより強いけど、チョキより弱いパーにも勝てるって言えるのか!?」


「今はジャンケンの話はしてないぞ!」


「この世はジャンケンで出来ているんだよ!」


「さすが、勇者様!仰っていることが深い!なるほど、『この世はジャンケンで出来ている』ですか。ふむふむ。」


「「は?」」


醜い言い争いをしている勇者ルートヴィッヒと冒険者ピーチに話しかける者がいた。

金色の髪、まだ幼さを残した品のある顔つき。

身に着けている物を見てもどこかの両家の子息に間違いはなさそうだ。

先ほどの勇者の言葉をメモした手帳をしまうと改めてルートヴィッヒの方を見て言った。


「はじめまして、アルフレッド・カイメーと申します。僕を勇者様のパーティーに入れてください!」

10月に入りましたが我が家のカブトムシはまだ元気です。

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