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森のフォレスト

ジミーナ村はこれといった名物こそないが、都市から都市、国から国への移動の際にはどうしても立ち寄る位置にあるため、宿だけは豊富にあった。

勇者ルートヴィッヒと冒険者ピーチはその中のひとつ、最上級の宿に向かって歩いていた。


「部屋は別々、お金は勇者くん持ち、だぞ!」


「俺はお前の財布か!」


「私がいないと大魔王なんて倒せないと思うぞ。そのための謝礼と思えば安いものだぞ。」


「旅の間、ずっとこうやってたかられるのか……。さっさと大魔王を倒してしまわないとな。」


(その前に、失われた魔法や技術を誕生させないといけないのよね。)


冒険者ピーチに変身している天使モモエルが心の中で自分の目的を確認する。


「それにラルクの動向も気になる。」


「そうだぞ。ラルクくんに大魔王を倒されるのも勘弁だぞ。」


「ラルクのことだ。大魔王すら一撃でどかーんなんて……。」


ドカーンッ!!


ルートヴィッヒが入ってきた村の入り口の方で大きな音がした。


「くっ!?」


勇者ルートヴィッヒは踵を返し、歩いてきた道を猛ダッシュで戻っていく。






「ベーアベアベア!」


ルートヴィッヒが村の入り口に到着すると熊の姿をした魔族が高笑いをしているところだった。

少し離れたところには村の入り口を守っていた兵士が倒れている。

怪我の具合が広範囲に渡っていることから武器でやられたのではなく魔法で攻撃されたと推測される。


「お前は大魔王の手下か!?」


勇者ルートヴィッヒは聖剣を構えて、熊の魔族に向かって問いかける。


「そうだよ。ボクは大魔王様の配下にして四将軍のひとり、森のフォレスト。」


「相変わらず『頭痛で頭が痛い』みたいなネーミングセンスだな。」


以前、ルートヴィッヒが倒した四天王のひとりは『紫のヴァイオレット』だった。


「そういうキミは勇者ルートヴィッヒだね。四天王の紫のヴァイオレットを倒したらしいけどあいつは大魔王様の幹部の中でも最弱。ニンゲンごときに負けるなんて上位魔族の恥さらしだよ。」


そう言ってまた「ベアベアベア」と奇妙な笑い方をする。


「ボクはね、この場所に拠点を作ろうと思ってさ。だって、ここってニンゲンにとって交通の要所なんだろ?こんなところに魔族の拠点があったら……困っちゃうよね?ベアベアベア!」


「熊の魔族だからと『困る』を無理矢理に『くまる』みたいに言うのはやめろ。文字では伝わらん。それに……。」


勇者ルートヴィッヒの姿が消えたかと思うと次の瞬間には森のフォレストの目の前に現れ、聖剣を縦に振っていた。


「ダジャレは嫌いなんだ!」


森のフォレストは両手の爪をクロスさせ、聖剣での一撃を防ぐ。


ガキィィィイン!!


「ちっ!爪ごときで聖剣が弾かれるとは!」


「ボクは魔法が得意でね。爪に防御力アップの魔法をかけたんだよ。しかも、5回も重ねがけしてね!」


森のフォレストは本来なら全身の守備力を上げる魔法を爪に集中させ、さらに同時に5回も魔法を展開させていた。

それも無詠唱で、だ。

恐るべき魔力コントロールである。


「確かに、紫のヴァイオレットとは一味違うようだな!だが、守っているだけでは勝てないぞ!」


「ベアベアベア!ボクが守っているだけとは思わないことだね!『脚力アップ×5(五重のトウ)』!」


森のフォレストは脚力アップの魔法を5段重ねにしてつま先(toe)に展開。

恐るべき瞬発力で勇者ルートヴィッヒとの距離を詰める。

熊のような巨大な肉体がそのまま武器としてルートヴィッヒに迫る。

地面を蹴った直後にはつま先に展開していた魔法を解除し、先ほど聖剣を防いだ肉体の強化の魔法をかけ直している。

正面からまともに受ければ衝撃で大怪我をしかねない。


(しかし、かわしたり左右に逸らしたりすれば村の建物や人々に被害が出る……ならば!)


勇者ルートヴィッヒは体勢を低くし、手を高く構えて、聖剣を剣先が下がるように斜めにして森のフォレストを迎え撃つ。

森のフォレストが聖剣に当たる瞬間に聖剣を肩で跳ね上げるようにして、衝突の力を上方向に逃がす。

そのせいで森のフォレストの巨体が宙に浮き上がる。


(さすが、勇者くん!戦闘センスはバツグンね!)


冒険者ピーチは勇者の本気の戦いを見て、評価を改めた。


「あとはとどめだな!」


勇者ルートヴィッヒがスキルを使い、空中で無防備になった森のフォレストにとどめをさそうとする。


「ベアベアベア!なかなかやるね!今日のところはここで引き上げることにするよ。また、万全の状態で()り合おうよ!」


森のフォレストはそう言うと一瞬で姿を消した。


「ふん、瞬間移動の魔法か。」

作者のネーミングセンスが息をしていない!?

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