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親 その1

焚火を囲んで座るラルクとアカシヤ、アイコー。

手にはラルクがわずか12秒で狩ってきたイノシシの肉を焼いた串が握られている。


「ラルクはこういう奴やねん。」


サンマに似た霊獣アカシヤがアイコーに「慣れるしかない」と諭す。

アイコーも反論するより納得する方が簡単だと理解したのか何も言わず野性味の強いイノシシ肉を堪能していた。


「アカシヤは別れた奥さんとの間に子供はいたのか?」


「珍しいな、ラルクがそんな話を聞いてくるなんて。まあ、焚火ってのはそういう不思議な空気を作るからな。ええやろ、話そうか。」


アカシヤは大竹の霊獣シノブーとの結婚生活、特に魚と竹という種族の違い過ぎるふたりが共同生活する上でのギャップを面白おかしく話した。

そして、2人には最愛の娘がいて、別れた際にシノブーが引き取ったことは少し寂しそうに語った。


「でもなあ、俺に子育てなんて無理やからな。」


アカシヤの話からは終始、別れた家族への愛情が感じられた。

ラルクは心が温かくなった気がしたが、それが焚火のせいだけではないことも理解していた。


「ラルクの両親は健在なんか?」


「そうだな、育ての親なら2人とも元気でやってるはずだ。生みの親は俺が物心つくかつかないかってくらいに亡くなった。幼過ぎてなぜ両親が死んだかも俺は知らない。」


「そうなんか。ラルクも苦労したんやな。」


「どうだろうな。実の両親のことはあまり覚えていないし、死んだ時の記憶はうっすらとあるが悲しかったのかも分からない。それに育ててくれたダイク家の人たちも温かかったからな。」


「ん、ダイク?」


聖シリン湖の守護をするサンマに似た霊獣アカシヤはダイクという名字に覚えがあった。


「そうや、聖剣を作りにきた勇者の名前がルートヴィッヒ・ファン・ダイクやったな。」


「そうだ。俺はルーイの両親に育てられたんだ。」






「今日からここがキミの家だ、ラルク。」


「私のことはママ……ううん、お母さんって呼んでね。あなたのママはひとりだもの。」


「今までは『おとうとぶん』だったけど今日からは本当に『おとうと』だな、はははっ!」






初めてダイク家に向かい入れられた日のことを思い出す。

新しい両親は優しく、時に厳しく、実子であるルーイと同じように接してくれた。

いくら感謝してもしきれない。






「ラルクのパパとは昔から仲が良くてね。ふたりで悪さをしてはお互いの父に怒られたものだ。」


お父さんの思い出話の中の2人の父の冒険はいつもラルクをわくわくさせてくれた。


「ラルクのママとお母さんはね、幼馴染だったのよ。ふたりでお互いの家の厨房に忍び込んではつまみ食いばかりしていたの。」


お母さんたちの思い出話の中にはたくさんの美味しそうな食べ物が詰まっていた。


「お前は『おとうと』なんだから、俺が守ってやる!」


ルーイはいつもラルクの手を引っ張っていたずらをして回っては両親に怒られていた。

でも、ラルクに罪を擦り付けるようなことはしなかったし、ラルクは悪くないと両親に怒られないようにしてくれた。

ひとりで道を歩いていて、近所の子供にいじめられそうになった時はルーイがどこからか助けに来てくれた。






「そうだな。生んでくれた両親には申し訳ないが、苦労はしてないさ。」


「いい人たちに育てられたんやな。」


「それで、ラルクはなんでそんなに強いんだ?」


ここまで黙って話を聞いていたカブトムシに似た霊獣アイコーがこのタイミングを待っていたとばかりに質問する。

生まれや育ちにラルクの『強さ』の秘密があると思って聞いていたが、ここまでにその答えは出なかった。

とは言っても、ラルクと出会って間もないアイコーの考える『強い』は彼の本当の実力の100分の1も表せていないのだが。


「分からんが、ルーイと一緒に魔王を倒す旅をしている内にこうなっていた。」


「ステータスの最大値が高かったってことか。しかし、さすがに規格外だろう。見たところ全ステータス1000を超えているんじゃないか?」


実際は全ステータス15万で、常人の千倍のステータスなのだが。


「以前、簡易鑑定スカウターのスキルで見てもらった時は全ステータス150.000と言われたが。」


余談であるがその際に鑑定士は目を爆発させており、聖女の回復魔法で無事に視力は取り戻せたのだった。


「その身体能力で150だと?1500って言われても納得するんだが。」


「なんか特殊なスキルでも使ってるワケやないんやろ?」


「ああ、俺は何もスキルを持っていない。」


「それでこの能力……謎すぎるな。」


「謎すぎるで。」




こうして山の夜は更けていった。

ちょっと真面目な回。

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