霊獣 その3
その頃、ラルクは……。
「なあ、ラルク。ホンマに行くんか?別に俺たちが行かんでもええんちゃうか?」
サンマのような霊獣アカシヤと一緒に山登りに来ていた。
乗り気でないアカシヤがなんとかしてラルクを考え直させようとする。
「魔界の入口とやらに興味があってな。」
ラルクとアカシヤは魔界の入口が現れたと精霊たちが噂していた山に来ていた。
「そうは言うてもなあ。その門とやらももう閉じてるらしいから、行っても見られないと思うで。」
「だが、暇だし行ってみるくらい問題ないだろう。魔界の入口が閉じているならアカシヤも怖くないだろう?」
「俺は魔界の入口からバケモンが出てくるのが恐くて渋ってるワケちゃうで。」
「そうなのか?」
「せやで。この山には会いたくない奴がいるんや。」
だから、この山に来ることに乗り気ではなかった。
しかし、ラルクに道案内を頼まれたので仕方なくついてきたのだ。
全ステータスが15万と常人の千倍あっても、人間であるラルクが自然界に住む精霊と話をするのは難しい。
魔界の入口を発見したという精霊を見つけ、その場所まで案内してもらうように交渉することがサンマに似た霊獣アカシヤの役目である。
「ふーふーふーん、ふふーんふーふーん、ふふふふふ、あたしはかーぶとーむしー。」
その時、どこからともなく甘い匂いに誘われていそうな歌声が聞こえてきた。
「この歌は……あいつや!」
「待て、歌なんて歌ったら音魔王デスラックがやってきてしまうぞ!」
珍しく慌てた様子のラルクが大声を上げる。
勝手に歌を歌うとジャス……もといデスラックという怖い魔王がやってくるというのはこの世界の子供たちが親からの躾の一環として習うことだ。
「大丈夫。ジャスラ……デスラックがやってくるのは商業目的の演奏の場合だけのはずやで。」
「つまり、この小説が書籍化しない限り大丈夫なんだな?」
急にメタな話し始めたね、キミたち!
「なあに、書籍化しても文字ならどうにでも誤魔化せるやろ!」
ということで出版社の皆様、書籍化のお話は絶賛受付中です!
「じゃあ、アニメ化しなけりゃ平気か!」
「そうやで!」
困っちゃうなー。
アニメ化なんてしたら困っちゃうなー。(まんじゅうこわい的な意味で)
そんなこんなしてる間に歌声の主がラルクとアカシヤのところにやってきた。
「久しぶりだな、アカシヤ。」
「お、おう。久しぶりやな、アイコー。」
水の霊獣でサンマのような見た目をしているアカシヤに対し、アイコーと呼ばれた生き物は巨大なカブトムシのようだった。
二足歩行しており、顔や手足は人間っぽい。
「また、やってくれたみたいだな。」
「な、なんのことや!?」
「お前、回復魔法を使ったろう?」
「ぎ、ぎくぅ!?し、知らんで。回復魔法なんか使うとらんで!!」
「じゃあ、突然あたしの背中が痛みだしたのはなんでだと思う?」
「と、歳のせいちゃうか?お前も俺も長く生きてるからな。体のあちこちにガタがきとるんやな。」
あくまでも知らないと主張するアカシヤから、アイコーはラルクに会話の相手を移す。
「そこのニンゲン。このサンマが回復魔法を使うところを見なかったか?」
アイコーの死角からアカシヤが人差し指を立てて口を塞ぐジェスチャーをする。
ラルクにはアカシヤの言いたいことがすぐに分かった。
視線だけで「任せておけ」と返す。
アカシヤはこの時ほどラルクを頼もしく思ったことはなかった。
「ああ、1回しか見てないぞ。」
「ちゃうわ!!」
ラルクはアカシヤのジェスチャーを「1回だけ」と訴えていると勘違いしたのだった。
アカシヤの回復魔法は「いたいのいたいのとおくのおやまにとんでけー」の詠唱と共に、痛みを山の霊獣アイコーに勝手に肩代わりさせるという呪いに近いものである。
いや、アイコーにしてみればもはや呪い以外の何物でもない。
「やっぱり、回復魔法を使ったのか。おい、アカシヤ。この恨みな……。」
「は、はい……」
「しょーおーがいー、わーすーれるー、ことはないでーしょーおー!」
「だから、歌ったらデスラックがきちゃうってば!」
全ステータス15万のラルクでも音魔王ジャスラ……デスラックは怖いらしい。
音魔王JASRA……デスラックとは一体!?




