65、パン屋さんに行こう!
パン屋さんに着くとまだまだ『朝』の時間なのでパンがいっぱい並んでいた。
フランスパンや食パン、黒くて硬い冒険者御用達の安い堅パンもある。
だが日本のようないわゆる『菓子パン』や『惣菜パン』と言われるようなものは見当たらない。
どうやらこの世界にはそういう発想は持ち込まれなかったようだ。
「……お店に『こんなの作ってくれ』って注文ってできるのかなぁ?」
「できますよ?何が欲しいですか?」
俺が小さな声で呟くと、どうやらすぐ後ろにいたらしいお店の人が答えてくれた。
慌てて振り向くと、とても優しそうな顔をしたおじさんが立っていた。
「あっ……じゃあ、例えばなんですが『これをパンの中に包んで焼いてくれ』とか、『これをパンの上に乗せてくれ』とか、『こんな形を作ってくれ』っていう注文は受け付けてくれますか?」
「う〜ん、あまり難しいのでなければ受けるよ?どんなパンがいるんだい?」
「えっとですね、簡単なのでいうと……この丸いパンをこのくらいのサイズの細長いものにして欲しいんです。」
俺はよく屋台で間に具を挟んて売っているパンを指差し、身振り手振りでサイズを伝えてコッペパンを作ってもらえるか聞いてみた。
これなら大きさを変えて焼くだけだから簡単だろう。
「ああ、それならすぐできるよ。あとはどんなのが欲しいんだい?」
そう言われた俺は、鞄に手を突っ込んで中に入れる具材を探した。
おぉ〜、案外色々あるな!
「いっぱいあるので何処かにそれらを出せる台はありませんか?」
俺がそう言うと、店主は店の奥をクイッと親指で指し「奥へ一緒に来てくれるか?」と言った。
スコットさんたちはどうするのかと思ったら、リッキーさんだけ俺についてくるけど他の3人は邪魔になるからと店内で品物を見ているとのこと。
なら早めに戻ってくれるようにテキパキ行動しなくちゃね!
中へ入るとそこはパン生地を作ったりする広い台の他に、材料を置いておく台もあった。
「何か出したいのならこの台の上に出してくれないか?」
おじさんは材料とかを置いておく台を指差してそう言った。
俺はさっそく鞄から色々材料を取り出す。
「えっと……まずはあんことチーズ、チョコレート……あ、この前作ったハンバーグもいいな!あとは……ピザ風なのも面白いだろうからチーズの他にピーマンやウインナー、ケチャップも取り出して……っと。」
それらを台の上に乗せると、おじさんもリッキーさんも目を丸くした。
「……なんか、知らないものもいくつもあるな?」
リッキーさんは何か言いたそうにお俺を見るが、気にしない気にしない!
「えっとさっき言ったパンの他に作って欲しいのは、この豆を甘く煮た物を包んで焼くパン、この白くて小さくカットされたチーズを包んで焼くパン、このお肉を焼いたものを包んで焼くパン、そしてこの茶色い板を溶かして生地に練り込んで作るパンと、平たく広げたパンの上に俺がカットしたものをのせて焼くパン?を作ってもらいたいんです。」
「なるほどなぁ……もしだったら君、見本を作れるかい?」
「見本ですか?良いですよ!」
「じゃあ今パン生地を持ってくるな。」
おじさんはそう言うと部屋の奥にあるドアに入っていった。
しばらくして戻ってきたおじさんの手には結構大きめのパン生地があった。
「じゃあ試しにやってみてもらえるかい?あ、ちなみにさっき言ったパンはこのくらいで言ったサイズのものになるからね?実際のサイズより小さめに作るんだよ?」
「わかりました!」
俺はさっそくまずは包む系のために小さく千切って丸めたものを量産した。
そしてそのパンを少し平たくして中にあんこやチーズ、ハンバーグをそれぞれ単品で入れて包んでいく。
ハンバーグにはステーキ醤油も少しかけておいたよ!
それが出来上がると今度はチョコパンに取りかかる。
ホントはチョコを湯煎してパン生地に練り込みたいんだけど、流石にここでお湯を沸かすわけにはいかないので、チョコを粉々に砕き、それを生地に混ぜ込むものにした。
出来上がったのは見た目はまるでチョコチップをまんべんなく入れたようなパンだった。
最後に取り掛かったのはピザ風のものだが、ここで野菜を刻むのはOKもらえるかな?
「すみませんが、ここで食品を切っても良いですか?」
「いいよ、その台の上だけならどうぞ。」
許可がもらえたので、まずはピーマンのヘタの部分を切ったら中にスプーンを入れて種を取り、そのまま薄く輪切りにしていく。
そしてウインナーを斜めにそぎ切りみたいに切っておく。
材料が揃ったら薄く伸ばしたパン生地の上にトマトケチャップを伸ばし、そこにチーズ、ピーマン、ウインナーを適当にのせていく。
これで5種類のパンの出来上がりだ!
それぞれ見本を1つずつだから早くできたよ。
「こんな感じのものなんです。あとはこれを焼くだけですよ。」
おじさんはずっと俺の手元なんかを見ていたのでやり方とかを覚えていたのかもしれないな。
「……すごいな、こんな小さな子があっという間に作るなんて。しかも見たことのないパンばかりだ。とりあえず包むものは中に入れる具さえあれば楽だし、最後に作っていたものも具をのせて焼くだけだから楽だし、なにかを混ぜているものも簡単だ。これなら材料さえあればいっぱい作ってあげられるよ。」
おじさんがそう言ってくれたので、俺はホッとした。
「これをそれぞれ30個ずつとさっき言った細長いパンを50個ほど欲しいんですが、いつ頃までに作れますか?」
「そうさなぁ〜……そのくらいなら一度に全部焼けるからお昼に焼くとして、昼過ぎにはできてるかな。」
「じゃあその頃にまた来ますので、お願いできますか?」
「わかった、作っておくよ。」
おじさんにあんことチーズ、ハンバーグ、先ほど余分に刻んだピーマンとウインナーを渡し、パンを作ってもらうことになった。
それから俺はついでに大量のパン種も作ってもらえるよう交渉し、それら全てを前金で料金を払ってから店を出た。
皆と一緒に店を出てしばらく歩くと、リッキーさんが俺に聞いてきた。
「……あのパンって、もしかしてお前のいた国のものか?」
リッキーさんは周りに知らない人がたくさんいるのでぼかしてくれたようだ。
「そうなんです。俺の母国のパンなんですよ。美味しいので楽しみにしていてください!」
「ああ、楽しみにしている。なにせ東の草原で作っていた物もあったしな。」
リッキーさんはホントに楽しみにしているらしく、とても嬉しそうだ。
「なんだ、そんなに美味しそうなパンを頼んできたのか?それは楽しみだな!いつ頃焼き上がるんだ?」
「お昼すぎなら大丈夫だと言われました。なのでお昼を食べたら受け取りに行かないと。」
「じゃあ、それまでまだ時間がかなりあるけど、これから何をする?」
エミリーさんにそう聞かれた。
む〜、どうしようか。
お昼は今日もらったブルの肉を食べてみたいし、この前みたいに東の草原に行く?
俺、確かバーベキューセットを持っていたから、炭はこっちで購入できるかな?
「お昼にブラックブルの肉を食べてみたいと思いませんか?」
「……そうだな、それも美味しそうだ。よし、じゃあ肉のために東の草原にまた行くか?」
皆はそれに対して喜びの声を上げた。
俺もあの肉を食べるのはとても楽しみだよ!
「じゃあまずは炭を買いたいんですが、どこで売ってますか?」
それから俺達は炭を購入し、早足で東門へと向かった。
さあ、こっちでのバーベキュー、楽しみだな!




