120、あいつはいつ起きるのか?(リッキー視点)
領主の館からそんなに離れていない場所にある森の中の広場に、俺達は立ったままで呆然としている。
「……この魔物たち、どうすりゃ良いんだ?」
俺は思わず呟く。
だってそうだろう?
広場には黒い球から出てきた大量の魔物が討伐されて転がっているのだから。
……逆に言うと、良くこれだけの魔物を倒せたよな?
まぁ、かなりの数がシエルの倒したものだがな。
いや〜、シエルの戦闘は凄かった!
何が凄いって、流れるような動きで無駄なく敵を倒していってたんだよ。
もちろん俺たちも頑張ったよ?
そりゃあ命かかっているから、死にものぐるいさ。
怖いなんて言ってられない。
やらなきゃやられる、そのくらいの圧倒的な数の差だ。
一度俺たちはかなりひどい傷を負っていたが、その傷はシエルが完璧に癒してくれた。
その後シエルはあの黒い球の所へ向かったから、俺たちは結界で守られているリリーたちの方へ向かい、その近辺で戦っていたんだ。
魔物はかなりの数と強さがあったから、リリーにすぐ癒してもらえるようにという考えだった。
だが、それが良かったようだ。
黒い球の近くにシエルがいる時に、2度も白い光の柱が天から降ってきたからな!
あんなの、さすがに近くにいたら無事でいられないぞ!?
離れていてよかったと、その時ばかりは思ったさ。
全てが終わってシエルに駆け寄った時、あいつがユーリに抱えられてぐったりしていた時は肝を冷やしたよ。
まさか死にかけてる!?って。
だけど魔力の使いすぎだって聞いてホッとしたね。
そのシエルは、今もユーリに抱えられ眠って回復をしている。
「……燃やす…か?」
スコットが遠慮がちに言った。
森だから危険だけど、それしかないならやるしかないな?
俺が口を開こうとした時、空を見上げていたユーリが俺の代わりに答えた。
『んとね、できるだけ1箇所にまとめておいてくれだってさ!』
それを聞いて皆、首を傾げた。
なんか……誰かから言われたような言い方だな?
とりあえず言われた通りに皆で広場の中央に魔物を重ねるように山を作りながら1箇所に集めていく。
集め終わるとユーリが少し離れた所にいる俺達の所に来て結界を張ると、天に向かって『いいよ!』と叫んだ。
すると次の瞬間、天からまたもや白い光の柱が降り注いだ。
今回のは先の2回より巨大だったから、ものすごいビビったのはナイショな!
光が収まると、あら不思議!
あんなに山のようになっていた魔物たちが、綺麗さっぱり無くなっていた。
「……おぉ〜、処理が済んだな!」
「……今の光、一体誰が……?」
どうやらミストは変な所に気を取られたようだ。
気にしちゃいかん、気にしちゃ。
触れてはいけない事柄はいっぱいあるからな、気にするな!
俺はミストにそう言っておいた。
それから俺たちは領主の館へと戻る。
その時にユーリは子供に、シエルはスコットにおぶわれて戻った。
その時、ユーリが人化した姿を見てミスト兄弟がものすごく驚いていたな。
あ、あとセバスはこの件を4属性竜の長達に報告しに行ったから、しばらくは戻ってこれないそうだ。
転移魔法、使えないもんな、セバス。
「皆……この街を守ってくれてありがとう!特にユーリ、君は元の姿に戻ってでもこの街に結界を張って守ってくれた。感謝してもしきれない。」
「気にしなくて良いよ、僕はママの言葉に従っただけだからね!」
ユーリが領主である父さんに向ってそう言う。
父さんは頷くと、改めてお礼を言った。
「ところでミスト、ヘイズはどうしたんだ?3人一緒じゃなかったのか?」
父さんは不安そうな顔でミストに聞いた。
なんとなく、気づいているのだろうか?
「父さんは……魔物が溢れてくる魔道具を持ったまま、出てくる魔物に潰されて死にました。」
ミストはそんな父さんに向って、泣きそうな顔で言った。
父さんもそれを聞いて顔を歪め、手で顔を覆った。
「……そうか。この騒動の元凶はヘイスだったんだな……。ヘイス……どうして……。」
父さんは泣き声を我慢せず、大きな声で泣いた。
父さんのそんな姿を見たのは初めてで、俺はなんて声をかけて良いのか分からなかった。
「あなた……今はミスト達だけでもせめて生きて戻ってこれた事を喜びましょう?」
母さんのその言葉で、父さんも少しは落ち着いたようだ。
「そうだな、ヘイスは残念だったが、ミストたちは生きて戻ってきた。それだけは良かったと思う。だがミスト、フォグ。お前たちはこの後どうするんだ?」
父さんからやはりというか、そんな言葉が投げかけられる。
2人は今日、ヘイス叔父さんと一緒にこの街を出た身だ。
だがしかし、この魔物襲撃の原因は、3人が向かう予定だった神聖法国だ。
このまま神聖法国に行っても殺されに行くだけだろう。
「ウォール伯父上、俺達は……できればこの街で暮らしていきたい。先程の出来事と、ユーリ様の存在などに触れ、俺たち兄弟は改心しました。もう、街の人達に迷惑はかけないし、しっかり生きていきたいと思っています。」
そうミストが言った。
そうか、2人はやっと改心できたのか。
多分自分達が神だと信じていたものが実は邪悪なものだったのだと気づいたのと、それとは反対にユーリ達のような神聖な存在を感じてしまったんだろうな。
父さんはしばらく2人を見ていたが、2人の真摯な目や様子を見て、また街に住むことを許可した。
ただし、また過去と同じ事をした時点で街から追放をするという条件付きでだ。
2人はそれを承諾した。
街の皆への説明は父さんがしてくれたので、俺たちは領主の館で早めの夕飯を食べて、それぞれの家へ帰宅した。
俺はシエルをお姫様抱っこして部屋へと連れて行く。
ベッドに寝かせるとしっかり布団をかけて、頭を撫でた。
「今日はお疲れ様だったな。夕食には起き出してくるかと思ったんだが、まだまだ起きそうにないな?……早く回復しろよ?」
そう言って、最後にもう1回頭を撫でた。
「ユーリも、今日はありがとう。おかげで街のみんなも無事にいられた。それに……あの光。あれはあの『自称神様』なんだろう?」
俺がそう言うと、プク〜ッと頬を膨らませた。
「『自称神様』じゃないよ!この世界の創造神だよ!」
「……わかってるって。言ってみただけだよ。」
怒ったユーリの頭をぐしゃぐしゃと撫でると、俺は笑う。
そうだよな、あんな力があるくらいだ。
俺や友梨佳、悠騎さん、恵美さんをこの世界に転生させるなんてわけもなかったよな。
俺はあの時の『自称神様』の姿を思い浮かべながらそう思った。
「ところで明日は日本ではクリスマスだけど、プレゼントは取りに行ってきたか?お前のプレゼントもそうだが、俺たちのシエルへのプレゼントもちゃんと預かってくるんだぞ?」
俺がユーリにそう言うと、ユーリは「あっ、忘れてた!!」と慌てだした。
「今から取りに行ってこいよ。俺がシエルを見ているからさ。」
「うん、わかった!ママをよろしくね!」
ユーリはそう言うと、竜に変身していそいそと鞄へ入っていく。
……何で竜に一旦戻った???
俺の中でそんな疑問が残ってしまった出来事だった。




