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異世界のんびり漫遊記  作者: カイ
第12章 新しい土地へ

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582、神官登場で絶体絶命!?

俺が魔物の残党集団との戦いで魔力枯渇を起こし、体力の限界まで討伐をしていた所へ、声をかけてきた奴がいた。

俺は嫌な予感を感じつつも、疲れ切った身体に鞭打って、すばやく声のした方向へと身体を向けた。


「……おや?まだそんなに動けるんだな?」


そいつは上空から地上へとゆっくりと羽を使って降りてきた。

その身なりは間違いなく俺が追ってきた神官の物だが、その姿形は全くの異形だった。


その体は細身の身体にゆったりとした神官服だったものが、纏っている服がはち切れんばかりの筋肉質なものに、真っ黒な短髪だった頭は真っ黒い角が2本生えているスキンヘッドへと変わり、その背丈もゆうに俺の1.5倍はあろうかという状態だ。


俺は眉間に皺を寄せ、目を細めて奴を見た。

目の前にいる神官は、どう考えても以前戦ったことのあるどの神官よりも相当強そうだ。


実はラドゥガのおかげでこの周囲は『隷属の魔法』を無効化されているのだが、その影響で先ほどまで俺に向かってきていた魔物達が、まるで蜘蛛の子を散らすように奴から逃げていく。

それを見ただけでも、奴がこの辺りにいる魔物なんか目じゃないほど強いのは分かるってものだろう。


俺は深い溜息を1つ吐くと、強力な結界を改めて張る。

……これなら万が一にもぶっ倒れても何とかなるんじゃないか?

それから俺は改めて武器を構える。



「フフフッ……なんだ、まだ根性を見せるつもりか?

そんなにふらふらなのに?今のお前が我に勝てるわけがなかろう?」


奴は片眉をくいっと上げると、嘲るように俺にそう言った。


……そんなのは、最初から分かってんだよ。

ここまで疲弊してる状態で立ち向かおうっていうのは、相当な無謀だってな。


だが、それでも……それでも、一矢報いて奴をこの場から完全にいなくなるように仕向けなければ、この森の中にいるスコットさん達やグリーさんが危険だ。


なにせ俺がここに倒れて動けなくなってしまったなら、同じくラドゥガもこの場に留まることになる。

そうなれば必然的に、仲間たちはたとえ俺の結界によって身の安全が保証されたとしても、それでも『隷属の魔法』への対処ができないのだ。


俺がまるで瀕死の獣が牙を剥くような態度で目の前の奴と対峙すると、その元神官はその顔を歪めて笑い出した。


「フッ…フハハハハッ!愉快だ。実に愉快!我は貴様のことを知っているぞ?テネブル様から聞かされていた特徴と一致するからなぁ!だが……貴様はどちらの方かな?貴様が神竜の方であるならば、都合が良いのだが。」


奴はそう言うと、俺の方に向かって両手を翳してくる。

そして何やら唱えているが、俺には奴が何をしているのか全く分からない。何も感じないからだ。


俺はそのままの体勢でじっと奴の動きを見ていたが、何かを唱えるだけで攻撃を仕掛けてくる感じもない。


俺が訝しげな表情で奴を見出すと、そこで初めて奴の顔に余裕の表情が消え去り、無表情になった。


「……貴様、何故、魔法が効かない?」


奴は目を細めて俺を見る。

その口調は明らかに苛立っているようだ。

俺はその目を離すことなく、無言で睨み続けた。


その瞬間、奴は「チッ!」と舌打ちをすると、一気に俺に向かって間合いを詰めてくる。

奴の武器はその両手の鋭い爪らしく、それはまるでゲームでよく見る「手に嵌める爪装備」のようだった。


その鋭い爪を振り上げ、俺へと一気に振り下ろしてくる。

俺はすぐに愛刀で受け止め、その峰で受け流した。

奴はすぐに反対の爪で攻撃を仕掛けてきたが、それもすぐに防ぐ。

先ほど奴が何らかの魔法を行使しようと詠唱してくれたおかげで、その間に乱れていた呼吸も整え、こっそりと自らの体に回復魔法をかけておいたのだ。

おかげで多少は体力が回復し、すぐに奴にやられるような無様なことにはならなくて済んだ。

俺は何度かの打ち合いの後、俺の方からも愛刀で斬りつける。

すると、奴の右の角をほんの少し斬り落とした。

それはまるでよく切れる包丁で豆腐でも切るかのように、手応えなくあっさりと斬ったのだ。


だが、それが奴のプライドに触れてしまったようで、一気に俺のほうが劣勢となった。

おかげで俺は防戦一方になり、徐々に呼吸も乱れていく。

奴は血走った目で歯を食いしばり、とても憎々しげな表情で俺を睨みつけている。


しばらくそうした後、俺は切り結んだタイミングを見て、一旦距離を大幅に取った。

俺は荒い息をつきながら、奴を見つめる。

それに対し、奴は少し呼吸を乱れさせた程度だ。

明らかに俺のほうが体力の消耗が激しい。


俺は改めて「どうやったら奴をこの森から退散させるか」を考えていた。

だがそれが一瞬の気の緩みにつながり、奴の攻撃を受け損ねる。


「しまった!」と思った時には、奴の爪が目の前に迫っていた。

ガキンッ!

そんな音を立てて、奴の爪が俺の結界に阻まれた。

するとそれに気づいた元神官は、一気に後ろへと飛び去る。


どうやらとうとう奴に、俺が結界を張っていたことがバレてしまったらしい。


俺はこっそりと軽く息を吐いた。

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