581、神官と魔物の残党集団
かといって俺が叫んでもグリーさんは駆けつけてくれないしなぁ……。
ユーリをスコットさん達の所へ置いてきてしまったのが、今になって悔やまれる。
あの時は、もしかすると魔物の数が大幅に減ると神官たちが出てくるかもしれないと思い、ユーリの安全を確保する為、スコットさん達のいる場所に置いてきたのだ。
そしてそんな事を胸の内で考えながら神官を追っているうちに、とうとう魔物の残党集団のいる場所へと到着した。
まだ奴らからは少し距離があるので、木々に隠れるように身を潜める。
今のところ魔力量は3分の1を切っている。
……これはたとえ後で体調を崩したとしても、もう1本飲んでおくべきだろうな。
俺は覚悟を決めて例の魔力量回復薬を飲み、表情を引き締める。
ここから先はスノービーク以上に、相当な修羅場になるだろう。
魔力量が足りないから休憩を!なんて言っていられない。
それでも暫く魔物達の様子を見て、ギリギリまで魔力量を回復させるつもりだ。
そうやって魔物たちの出方を目視で様子見していると、突如魔物達が移動し始めた。
一瞬、俺の存在が見つかったのか?と思ったのだが、どうやらそうではないようだ。
それにしては進む方向が違うのだ。
俺が改めて索敵魔法を使うと、どうやら魔物達は改めて森の外を目指しているように思われる。
それも、ネシア方向に向かって、だ。
これはもしかすると、俺たちが魔物達を討伐し始めていることで計画が頓挫するとまずいと思って、計画を前倒しにして強制的に進めようとしているのかもしれない。
俺は魔力量が半分程まで回復できた事でこれ以上姿を隠すことを諦め、移動をし始めた魔物達へと突進して行った。
俺は魔力コーティングを施した愛刀で、舞うように魔物達を一刀両断に斬り伏せていく。
だがそれも、この見渡す限りの魔物の前にはほんの微々たるものでしかない。
俺は改めて魔力枯渇も辞さない覚悟を決めて、魔力を圧縮したものを掌に集めていく。
そしてそれを、まるでレッカさんが扱うような爆発的な威力も付与された業火へと変換してから、できるだけ遠くへと放り投げた。
するとそれが一匹の魔物へとぶつかった瞬間、巨大なドーム状の超爆発が起こった。
俺は投げる瞬間に森への影響も少し気にはなったが、そんな事を言っていられないと思い直して投げたのだが……この結果を見るとやっぱり少しだけ後悔をした。
なにせ俺の目の前には、その大爆発と猛烈な炎のせいで一瞬にして森が消し飛び、あまつさえ巨大なクレーターが出来上がっていたのだ、
俺自身は己の張った結界のおかげで無傷ではあるが、それでもあまりの爆風の衝撃波でかなり遠くまでふっ飛ばされてしまった。
結界を張っていたから痛くはなかったが、背中を何本もの大樹にぶつけてやっと止まったのだ、相当な威力だったのが分かるってものだ。
俺はなんとなくぶつけた背中とお尻をさすりながら、地面から立ち上がる。
すぐに索敵魔法を使い、どのくらい減らせたのかを確認すると、先程の魔法で魔物の残党集団を3分の1程に減らせたようだ。
……よしよし、ここまでくれば後は魔力温存のためにも、炎の魔法剣で斬り伏せて燃やそうと考える。
実は先ほどの魔法でせっかく半分まで回復していた魔力量が、俺の総魔力量の5分の1以下になってしまったのだ。
このままでは確実に魔力枯渇を引き起こしてしまうのは避けられない。
周りに味方がいない以上、それは命の危険も考えられるのだ。
魔力枯渇気味でかなり体の切れは良くないが、それでもまだまだこの魔物の集団くらいは倒せるはずだ。
俺は必死に、愛刀に魔力コーティングと炎の魔法を何度も何度も纏わせながら、数多の魔物を討伐していく。
朦朧としだした意識の中、俺は例の神官がまた現れるかもしれないと警戒をしてはいるが、今のところは見かけていない。
「はぁ、はぁ、はぁ……。まだいるのかよっ!」
俺はかなりの疲労感でふらふらに、それでもなんとか襲ってくる魔物を屠りながら、そう叫ぶ。
そろそろ限界が近い、そう思った時。
「……まだ、くたばってなかったか。」
空中から冷たい声が聞こえた。




