578、魔物を討伐しよう! 2
「じゃあ行ってくるよ!」
「大人しくその辺で、私らの作戦行動を見守ったってな〜。」
俺達2人は皆にそう言うと、一気に隠れていた場所から外へ出る。
もちろん俺達には何があるか分からないから、ラドゥガを連れてきている。
その為にみんなの結界に『隷属の魔法』に対抗できるような魔法を付与しておいたのだ。
『僕は腕輪の中で待機してますね。必要な時には顔だけ腕輪から出せますかね?』
ラドゥガは俺につかまりながら、すごいスピードで移動している俺達2人にそう声をかけてきた。
現在俺たちは通りがけに魔物を討伐しながら、魔物の群れの中へと突き進んでいる。
ある程度群れの中央付近まで来たら、2人で背中合わせになって殲滅魔法をぶっ放す事になっているのだ。
流石に大量の魔物がいる場所となると『隷属の魔法』がしっかりとかけられているだろうし、もしかすると神官達がいる可能性もある。
なので、とりあえずラドゥガが俺から落ちないようにしつつ、腕輪から顔を若干出してる状態でキープしている。
これならまず間違いなく敵の目には入らないだろうし、『隷属の魔法』を使われていると察知したらすぐに解除の魔法を使えるのだ。
その状態で魔物の中を猛スピードで進む事、数分。
ようやく目的地に到着した。
辺りは魔物だらけではあるが、この集団はやはり『隷属の魔法』で縛られているのか、こんな場所にまで来た俺たちのことを認識できていないところを見ると、現在の意識の程度は低そうだ。
「なぁ、シエルさん。こいつら全く私らのことに気づいてへん気ぃするねやけど、どう思とります?」
グリーさんは訝しそうな顔で辺りを見渡しながらそう言った。
現在俺たちは魔物に取り囲まれている状態なんだが、下手に『隷属の魔法』を解除してしまうと、この魔物たちが一気に意識を取り戻してしまって大変なことになってしまうため、ラドゥガにはまだ解除の魔法を使用するのは控えてもらっている。
「とりあえず今の状態で一発やっちゃいますか!」
俺はにやりと笑って、片方の掌の上に圧縮した炎の魔法を用意する。
そんな俺を見てグリーさんもウインクをして、両手を頭上に広げると「準備できとんで!」と言ってきた。
それから俺達は背中合わせになり、互いの用意した魔法を放つ。
まずはグリーさんの魔法、巨大な竜巻を発動してもらう。
この魔法は、その竜巻の風の中に細かいウインドカッターのようなものご無数にある。
だからこれだけでも周囲の魔物には大ダメージとなるのだが、そこへ俺の用意していた炎の魔法を後付けで纏わせた。
すると、それまでに細切れになっていた魔物の死骸も、全て俺たちの複合魔法によって灰へと変わっていく。
それからしばらくその魔法を俺たちはキープしていたが、広範囲で周辺の魔物を一気に討伐した事によって、ようやく魔物たちがかかっていた『隷属の魔法』が軽く解かれたようだ。
ただ、『隷属の魔法』が解かれたといえども知能は低いのか,シエル達を敵と認定すると自らが進んで俺たちの複合魔法の餌食になりにやってきた。
それにともない、どんどんと魔物の数は減っていき、とうとう俺の索敵魔法の赤い範囲は、最初の頃に比べると3分の1ほどになっている。
だが、それでもまだまだ数は多い。
どうしたらいいだろうか?と考えていると、グリーさんから「場所を移動せぇへん?」と提案された。
「そうですね、このままではさらに魔物の数を減らすのには苦労しますもんね。」
「そうやね。もう半分ほどになれば、全滅とまではいかなくてもめっちゃ脅威じゃなくなるわ。」
俺がうんうんと頷くと、同意するようにグリーさんもにっこり笑った。
それから俺達は背中合わせのまま素早く移動をし、もうここまで来たらラドゥガに『隷属の魔法』を解除するよう頼むことにした。
ラドゥガはやはり腕輪の中から外の様子を確認していたようで、俺からの頼みはあらかじめ予想していたみたい。
ラドゥガは素直に頷くと、両手を挙げて、その小さな体から強力な解除の魔法を放った。
すると辺りに漂っていた重苦しい感じの空気が一気に晴れ、もう辺りは日が傾き始める時間帯だというのに、まるで早朝の清々しい空気の中にいるような心地がした。
俺たちにはほとんど影響が出なかったが、やはりこの森の中では『隷属の魔法』がまるで結界の中で漂うように、常に薄っすらと存在していたようだ。
だがこれが、神官たちに気づかれてすぐに狙われる事になるとは、その時の俺たちは考えてもいなかった。




