576、例の森、再び
俺がスコットさんに「まだ時間あるから、この足でこの前森で探索した続きをしに行く?」と聞くと、スコットさんは少し考えた後に「じゃあ少しだけ確認しに行こう」と言った。
「じゃあ森の中のあの村までは転移で向かうとして……とりあえず皆は俺の腕輪に入ってもらっていい?」
俺は転移の為にみんなへ向かってそう言うと、みんなは頷いて同意してくれた。
皆を腕輪に収納すると、さっさと森の中の村へと向かった。
街中から一気に景色が森の中へと変化すると、俺はすぐに皆を腕輪から外へと出す。
ここまで来れば、いつ魔物と遭遇してもおかしくないからね。
すると、ゼフィアに乗ったラドゥガの頭がピクリと動いた。……何かに反応したのかな?
「ラドゥガ、とうした?」
俺はすぐにラドゥガに声をかける。
昨日みたいに勝手に何処かに行かないように、予め声をかけておいた。
これなら何も言わずに勝手に何処かへ行ったりはしないよね?
『ご主人様、この森は「隷属の魔法」で常に覆われているようです。僕の能力で解除しましょうか?』
ラドゥガは俺の顔を見てそう言ったけれども、この森全部を解除してしまったら敵にも気づかれてしまう。
「……なぁ、俺たちの周りだけ解除されるように範囲を指定することはできるか?」
『多分大丈夫だと思います!』
俺はラドゥガにそう聞いたのだが、どうやら可能なようだ。
これなら俺達は安全だし、敵にも気づかれにくいだろう。
『それではですね、範囲を僕を中心にして見渡せる範囲だけ魔法が解除されるようにしてみました!その中にいる限り、「隷属の魔法」の支配から逃れることができますよ!』
ラドゥガはそう言って胸を張った。
案外範囲広いから、十分ラドゥガから離れて戦えるね!
それから俺はまずこの森の中を対象に索敵魔法を使ってみた。
するとやはりこの前と同じようにネシア側の森の中に魔物が集まっていることが分かった。
「ねぇ、スコットさん。今、索敵魔法を使ってみたんだけど、この前と同じようにネシアの方の森の中で魔物が集まっているみたい。奴らはやっぱりネシアも狙うつもりなのかな?」
俺は昨日の出来事を考えながら、そう言った。
昨日までで『スノービーク』、『エルフの隠れ里』、『クレイン国の王都』、そして『ヒュサカ』が狙われたのだ。
今のところ全ての街で未然に防ぐことができているが、あの神聖法国の残党が狙っていた街はあと1つ。
ネシアだ。
その他には狙っている国はなさそうだが、彼らは母国の神聖法国へ行ってみたのだろうか?
俺が心の中でそう考えていると、リッキーが「行ってみたんじゃないか?」と口に出した。
「……やっぱり母国に帰ってみた可能性は高そうか?」
「ああ。高いだろうな。帰ったらあの女神に指示を仰ごうと思っているんじゃないかと思う。」
リッキーの言葉に、俺も納得した。
そうだよね、いつだったか忘れたけど、あの国の元神官が「もう長いこと帰っていない」的な事を言っていた記憶がある。
ならば一度この機会に国に戻って……という流れも無くはないだろう。
もしあの国に1度でも戻ってしまったら、あの国が崩壊してほとんど人がいなくなり、更にはもう女神があの国にいないことを目の当たりにすることだろう。
そうなった時、彼らはどうするのだろうか……?
俺がそんな事を考えて目を伏せていると、リッキーが突然俺の背中をバンッ!と平手打ちしてきた。……痛いよ!
「なぁ〜に考え込んでるんだよっ!今はそんな事を考えている場合じゃないだろ?あいつらがなんでネシアの近くに魔物を集めているのか、が重要じゃね?」
俺の背中を叩いたリッキーは、そう言って俺と肩を組んできた。
その言葉を聞いた俺はハッとした。
そうだよ、あの国、ネシアの獣人を奴隷にしていたじゃないか!
俺が奴隷をあの国からネシアへと救出した事で、あの国は崩壊した。
もしあの国の現状を見てしまったら、ネシアへ恨みを持っているかもしれない!
俺はすぐにその考えを話して、皆と情報を共有する。
皆もその事には考えが及んでなかったらしく、急に焦りだした。
そりゃそうだ。
あの国には俺たちの友人知人が沢山いるのだから。
「とにかく、あの魔物の集団がネシアに向かう前に何とかしないと。」
険しい表情でスコットさんがみんなを見回してそう言った。
それに対して俺たちは頷いて同意を示す。
「じゃあとりあえずは索敵魔法を使って近づき、少しずつ数を減らしていこうぜ!」
「そうよ、流石に森の中だから魔法で一気に……って言うわけにもいかないものね。特に私は火魔法が得意だけど、他はそこまで威力ないもの。」
リッキーの言葉にエミリーさんはため息をつきながらそう言った。
そうだった、エミリーさんは中々森の中では戦い辛かったんだ。
ならばここは俺が頑張らなければならないのか?




