574、ごめんよっ!
翌朝俺が起きた時、まだ体が少し重い感じがしていた。
やはり昨日1日の色々な出来事が相当な疲労感となり、いくら深く寝ていたとしても体にまだ疲れが残っているのだろう。
俺はベッドから体を起こして周りを見ると、起きていたのはセバス1人だった。
そのセバスは俺がベッドの端に座ると、「おはようございます」と言って水の入ったコップを手渡してくれた。
「ありがとう、セバス。この水、しっかり冷えていて美味しいね!」
俺はその水を一気に飲み切ると、殻のコップを手渡しながら礼を言った。
セバスはにこりと笑って頷く。
「こちらは昨日世界樹から、世界樹の葉に溜まっていた雫を頂いたものでございます。昨日は相当な精神統一と魔力消費がございましたので、今朝に疲れが残っていた時のためにと冷やしておいたのです。どうです、体に残っていた疲労感は取れましたでしょうか?」
セバスはどうやら昨日の段階で世界樹から世界樹の雫を手に入れていたらしい。
……確かにとても冷えていて、雫が喉を通った瞬間から体の疲労感が薄らいでいき、今では魔力も気力も完全回復しているようだ。
俺はセバスにそう伝え、現在はいつ頃なのかを聞いた。
すると、どうやら1度リッキーがこの部屋に顔を出し、俺たちが起きているのかを確認に来たそうだ。
4人は俺たちが起きるのを待って食堂に行き、朝食を食べた後は少し街の状態を確認しに行くとセバスに伝言したらしい。
俺はすぐにユーリを起こし、4人と合流する。
4人とも昨日の俺が急に意識を飛ばしたことを相当気にしていたようで、口々に「疲れが取れていないようならもう一眠りしていても良いんだぞ?」と心配そうな顔で言った。
「いや、もう大丈夫っ!セバスに美味しい水を貰って飲んだら、すっかり回復しちゃったよ。」
「……そうか?なら良いんだが。だが無理だけはするなよ?」
スコットさんはそう言って俺の頭をくしゃっと撫でた。
それから俺達は揃って宿の食堂へ行き、朝食をとった。
その後、予定通りに街の被害があった地域へと向かう。
「おぉ~、もう復興の兆しが現れているんだな!」
リッキーは昨日破壊されてしまった宿から近い場所にある広場を見てそう言った。
そこには周辺の住民が力を合わせて元のような憩いの広場になるように、花を植えたりベンチを作っていたりと大忙しで動き回る姿があった。
……そっか、皆も早く昨日の出来事を忘れて、平和に過ごしたいんだね。
俺はそんな住民を見て微笑んでいたが、何かを忘れているような気がしてしょうがなかった。
だがちょうど『穴』があった付近へと来て、もう異常がないかの確認をしていた時に目に入ったものを見て、俺は思わず心が痛くなってしまった。
そこには、奇跡的に残っていたベンチの下で、誰にも気づかれずにひっそりと体育座りをしているラドゥガの姿があった。
ラドゥガは体育座りをして膝に顔を埋めていたので、この場を修理している住民たちには誰一人として気づかれていないようだった。
俺はそんなラドゥガに近寄り、声をかける。
「ラ…ラドゥガ…?そこで何をしているの?」
俺の戸惑った声に、他のメンバーも初めて気づいたようだ。
あ……セバスだけは元々気づいていたみたい。
俺の声を聞いたラドゥガはばっと顔を上げ、両手を広げて走り寄ってきた。
俺はラドゥガを抱きかかえると、何故ラドゥガがここにいるのかの説明ができる人がいないか顔を見渡す。
するとセバスが気まずそうに「ラドゥガは昨夜、『隷属の魔法』が使われたことに気づいたようで……」と話し始めた。
セバスの話ではこうだ。
『隷属の魔法』が使われた当初、魔力量が少ない者からその魔法にかかっていったのだが、魔法が使われたとすぐに気づいたラドゥガが己の力を解放してその魔法を無効化した。
更には、どうやら元凶を探しに勝手に何処かへ行ってしまったらしい。
ラドゥガに『隷属の魔法』を使った人物まで辿れる能力があることには驚かされたが、それよりも自分の頭で考えて行動することができることに驚かされた。




