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異世界のんびり漫遊記  作者: カイ
第12章 新しい土地へ

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571、真夜中の襲撃 8

「ユーリ、ちょっといいか?」


俺は少し離れたところで『穴』を観察しているユーリに声をかけた。

するとユーリはこっちに小走りで駆け寄ってきた。

そこで俺はユーリとリッキーに鑑定結果を話すことにした。


「なぁに、にぃに?」

「いやな、この『穴』を鑑定してみたんだが、どうやら魔界という所につながっているらしいんだよ。ただ、向こうからこっちに来るだけの一方通行らしいけど。そして、どう塞ぐのかも書かれていたんだけど……名指しはされてなかったけど、前回のスノービークでの出来事を考えるとユーリから『例のあの人』に頼んでもらわなければならないらしい。」

「……なるほど、あの時って『自称神様』がなんとかしたんだっけ?」


俺の話を聞いて、リッキーは少しとぼけた顔でそんな事を言った。……もう忘れたの?


「あの時って確か、俺が『穴』の前に行った時に腕が突きだしてきたんだよ。で、その瞬間にユーリから離れろって言われてすぐさま離れたら、その直後に空から巨大な光の柱が振り注いできたんだよな。……覚えてるか、リッキー?」

「……。」


……リッキー、気まずそうな顔をしているってことは、覚えてないんだな?

俺は1つため息をこぼすと、ユーリを見た。

どうやらユーリは覚えていたらしく、顎に人差し指を当てて小首を傾げた。


「あの時は急に話しかけられたんだよね。にぃにに危険が迫ってるから対処しなければ……って言われたの!」


なるほど、それであんなに急だったんだね?

じゃあ今、目の前にあるこの『穴』、そんなに危険がないってことで消滅はさせてもらえないのかな?

でもこのままだとまた大量の魔物が魔界から押し寄せてくるかもだし、危険が無いわけじゃないよね?


「なぁ、この『穴』、ユーリが頼んだら消滅させてもらえないのか?」


俺はダメ元でユーリに聞く。

すると「う〜ん……どうだろ?」と言われた。


「その『どうだろ?』って、駄目ってことか?」

「違うよ、にぃに。そうじゃない。ただ、僕が頼むよりにぃにから頼んだほうが効果的なんじゃないか、って思っただけだよ。」


ユーリはそう言って苦笑いをしたが……俺が言ったってそう変わるわけじゃないと思うんだけどね?


とりあえず俺は空を見上げると、両手を組んで「この『穴』を塞いで欲しいです!」と口に出して真剣に頼んでみた。

すると急にユーリがピクリと体を震わせる。

そしてユーリも空を見上げた。


「ぇ〜……?また〜!?勘弁して欲しいんだけど!」


上空を見上げているユーリは、少しぷりぷりと怒りながらそう言った。

……もしや、また『体を貸せ』と?

でもそれはユーリの身体に結構負担かかるよね。


それを考えると、前回みたいに上空からの光の柱で良くないか?と思うんだけど、駄目なのかな?


俺が心の中でそう思っていると、ユーリから「それはできるけど最終手段、なんだってさ」と嫌そうに言われた。


「……最終手段?」

「そう、最終手段。本当は切羽詰まってなければあの人はこの地上に関与してはいけないんだよ。でも例外としてにぃにの為なら……って言ってる。でも、できるなら僕の体を借りて、あの人が関与してるって思わせないようにしなければならないんだって。」


ユーリは何とも言えない顔をすると、1つため息をついた。


そうか、人目につきすぎるから、ユーリを間に入れるならまだしも、そう何回も直接的に介入できないのか。

……まぁ確かにあれはいかにも『神の怒り』って感じの力技だもんね。


俺が目を瞑って悩んでいると、急に袖をくいくいと引っ張られた。

俺が目を開けるとユーリが俺の顔を見ながら苦笑いをしていて、「しょうがないなぁ」と言った。


「良いよ。にぃにの為に僕の体を貸すよ。その代わり、にぃには僕に常に魔力を流して供給してね?そうじゃないと僕、またすぐにダウンしちゃうから。あの人、全然僕の体のことは考えてくれないんだよね。」


ユーリは口を尖らせてそんな事を言った。

……もうちょっと考えてあげようよ、自分の憑依先でしょ?


それからユーリの肩に手を置き、いつでも魔力譲渡ができるように準備をした。

俺の準備ができると、ユーリは何かを口の中で呟く。

すると次の瞬間、ユーリの体から力が抜け、崩れ落ちそうになった。

俺は瞬時にユーリを抱えると、ユーリの顔をじっと見た。

次の瞬間、ユーリは目を覚まし、俺を無言で見る。

その目は世界樹のところで見た、憑依されたユーリの顔だった。


それからユーリは無言で立ち、すぐさま黒い球体の『穴』へと視線を定める。

そしてちらっと俺の方を見ると、魔力譲渡の準備をしろと目で訴えてきた。

俺は慌ててまたユーリの方に両手を置き、準備をする。


準備ができると、ユーリは両手を『穴』へと翳す。

するとその掌から眩いほどの銀色の光が迸り、その真っ黒い『穴』へとどんどん吸い込まれていった。



しばらくそうしていると、ユーリの肩に置いた俺の両手からどんどんと魔力が吸い取られていっている。


もの凄い勢いで奪われているのだが、これはユーリが『例のあの人』に使用されている魔力なんだと思うと、譲渡を打ち切ることも出来なくなった。

……最後までもつかな?

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