570、真夜中の襲撃 7
「いや〜、助かったぜ!俺達だけじゃ、あまりに魔物が多すぎてジリ貧だったからな。グリーがドラゴンに戻れれば違ったんだろうが、街の連中をこれ以上パニックにさせたくなかったからしょうがなかったんだよ。」
リッキーはそう言うと、苦笑いをして隣りにいるグリーさんの肩を叩いた。
そっか、そうだよね。
街にいきなり魔物が大量に湧き出しただけでもパニックものなのに、そこへドラゴンが現れれば、それはもう大変な騒ぎになってしまう。
だからそういう意味では、グリーさんが元に戻らなくて良かったのだ。
「それはそうと、スコットたちは大丈夫なの?」
エミリーさんは少し心配そうに俺に聞いてきた。
もちろん俺はあちらの方も安全な状態にしてからスコットさんとセバスの2人に任せてきたことを伝えた。
「なら良いんだけど……。ところでこの魔物が出現した原因って何だったの?」
「そうだな、それは俺も気になっていたんだ。実は俺たち、あっちの広場からこっちに来るのにはグリーに運んでもらったからよく分からないんだよな。」
エミリーさんの言葉に同意したリッキーは、俺の方を見て何があったのかを話せと促してきた。
俺は1つ頷くと、ここに来るまでにどんなものを見たのかを話しだした。
「俺とユーリはスコットさん達のいる広場の魔物を殲滅させた後、転移ではなく走って移動してきたんだ。ちょうど北と南を分けている場所に、スノービークでも見た『黒い穴』があったんだよ。ただ、あれよりも一回り以上も大きい物だった。」
俺がそう言って苦い顔をしていると、リッキーも信じられないっていう顔をして俺を見た。
「いや、マジな話だ。それにあの『穴』、何処に繋がっているのか分からないけど、近づけば近づくほど妙な圧迫感のある空間になるんだよ。……どうする、行ってみるか?」
俺はリッキーたちの顔を見ながらそう聞いた。
すると皆も1度は見てみたかったらしく、一緒に行く事を同意する。
俺はすぐにユーリと並んで歩き、例の『穴』の場所へと向かった。
リッキー達がいた広場から『穴』のある場所まではそう遠くもなく、多分普通なら10分程度の道のりを、途中魔物の討伐もしながらだったので、倍の時間で到着。
俺はリッキーたちのところへ行く時に『穴』の周囲を殲滅しておいたのだが、どうやら俺たちが戻ってくるまでの間にまた魔物がちらほらとその『穴』から出始めるようになっていたようだ。
改めてまた『穴』の周囲にいた魔物を殲滅する。
今度は魔法で一気に消し去るのではなく、皆で手分けをして一体一体倒していった。
あらかじめ1度魔物を殲滅してあったので、今回の殲滅にはそこまで時間はかからずに完了した。
「……なるほど、確かにこの『穴』、スノービークの時のやつにそっくりだな。それにお前が言っていたように、『穴』からは得体のしれない何かも滲み出ているような気がする。」
リッキーはそう言って、『穴』を見上げている俺の隣に立った。
「……だろう?この先ってどこに繋がっているんだろうな。」
「おいおい、その『穴』の中に入ろうとするのだけは絶対にやめろよ?何処に繋がるのかも分かってないんだからな。」
俺はリッキーに中に入る事を止められたが、確かにそもそもこの穴に入ることができるのかも分からないんだと気づく。……鑑定してみるか。
『鑑定結果』
この『穴』の先は魔界へと繋がっています。
ですが、この『穴』は一方通行なので、こちら側から中に入ることはできません。
また、その『穴』からは魔物だけではなく、魔界の空気も一緒に流れてきていますので、長時間その『穴』のそばにはいない方が良いでしょう。
人体に影響を与えますので。
この『穴』を塞ぐには……しっかりと頼んでくださいね?
俺はその「鑑定結果」を見て、ため息をつく。
なるほど、こちらからは『穴』に入ることはてきないのか。それは少し残念だ。
向こうに行けるようなら調査ができると思ったんだけど。
俺は鑑定結果に少しがっかりもしたが、それと同時に安心もした、
そうか、消滅させるのに『例のあの人』に頼めば消滅させてくれるのか。
俺はそれが分かっただけで、心の底から安心することができた。




