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異世界のんびり漫遊記  作者: カイ
第12章 新しい土地へ

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559、隠れ里への襲撃 1

俺が世界樹の助けで魔道具のラドゥガを完成させたあと、急に何処かで轟音が起こり、更には隠れ里中に警報音が鳴り響いた。

俺たちが一体何が起こったのかと思っていると、こちらにラーシェさんが転移してきた。


「良かった、こちらには被害はなさそうですな。」


ラーシェさんはほっとした顔でこちらを見ている。

「こちらには」ということは、里の方には何かあったのだろうか?


「ラーシェさん、里の方には何か被害があったんですか?」


俺の緊張した態度に、ラーシェさんは緩く首を振った。


「いや、今のところはまだ里に被害は出ておらんよ。ただ、里を守っている結界が一部破壊されただけじゃ。結界はまだ3重残っておる。最終結界はわしが張ったから、そう簡単には破れまい。」


ラーシェさんは結界が1つ破られたのに、あまり焦った様子は見られず、落ち着いている。

……俺もこっそり張っとく?


俺がそんな事を思った時、世界樹の全身が淡く光り、明滅を繰り返しだした。

それを見たラーシェさんは訝しそうな顔をしている。


「どうしたのですかな、世界樹よ。何ゆえにそんな事を……?」

『何、ちょっとした贈り物をシエル殿に託そうかと思ったのだよ。』


ラーシェさんが世界樹を見上げながらそんな事を言うと、世界樹はそう言って、全身の明滅を緩やかになった。


その明滅はすぐに止み、ふと世界樹を見上げた俺の目の前に、光り輝いている苗木がゆっくりと下りて来た。

俺はその苗木を受け止め、世界樹に「これは?」と聞いた。


『これは私の分身です。記憶や能力、その他全てを、今の私と半分にした唯一の苗木ですので、貴方がしっかりと管理していてもらえますか?』

「えっ!そんな大事な物を俺に託して良いんですか!?」

『ええ。逆に言えば、貴方ほど適任な方はいませんよ。……よろしくお願いしますね。』


世界樹はそう言うと、もう黙ってしまった。

俺はもう一度世界樹を見上げると、心の中で「大切に預かっておきます」と言ってから、その苗木を腕輪にしまった。


その瞬間、2回目の轟音の衝撃が走る。

多分2枚目の結界が破られたのだろう。

俺は焦り、広範囲で結界を張ろうとしたのだが、その瞬間に世界樹から『結界は里の方だけにしてください』と鋭い声で言われた。……えっ?どういう事?


だが俺は考えるよりも先に、まずは言われた通りに里の方だけに強固な結界を張った。

これはいつも通りにこちらの攻撃は筒抜けで、相手の攻撃は物理も攻撃魔法も通さないものだ。

これならばもう安全だろう。

だがその代わりに世界樹が存在する方には俺の結界は張っておらず、かなり不安が残るのだが。


とりあえず俺は結界を張って一息つくと、世界樹の方を見上げる。

その時、ふと違和感を感じた。

何だろう、この何とも言えない不安感は……?


次の瞬間、先ほどよりも近い場所でまたもや轟音が鳴り響いた。

すると、俺の『違和感』の理由が分かった。

こちらから見た世界樹の左上の空間にひび割れがあったのだ。

俺は驚きに目を見開いているうちに、そのひび割れはさらなる衝撃によって大きくなっていく。


「なっ……何だ、あれ!?」


俺が無理やり声を振り絞ってそう叫ぶと、セバスはラドゥガを床に置くとユーリの目の前に立ち、自らの体を盾にした。

そしてラドゥガはそのひび割れを見ると、両手を頭の上で広げて何かの魔法を使ったようだった。


俺はそれを見てハッとし、自分も臨戦態勢に入る。

少なくてもあのひび割れはどんどん広がっており、その隙間からは薄暗い景色がちらりと見えた。


……あれ?

もしかしてここの景色って、外と隔離されているから結界の外と違う景色が映っているのかな?


そんな事を考えている間にもどんどんとひび割れが開いていき、その隙間は人が通れるほどの大きさまで広がっていく。


そしてついにはそこから、ゆっくりと人が入ってきた。

その姿は、以前俺がスノービークで対峙した神官に服装が酷似している。

まさか予想していたように、この森の中にも本当に例の国の神官がやって来るとは。


そいつはこの空間に入ってくると、まずは世界樹を見て、それからその近くに立っている俺たちを見下ろした。

そして俺とユーリを見て目を細めると、何かを考える素振りをする。


「……貴様らはテネブル様の警戒していた奴らか?」

「……何の事だ?」


その神官の言葉に、俺はとぼけた返事を返した。

もしそうだったとしても、こいつらに知られるわけにはいかない。


だが奴はそんな俺の返答には構うことなく、全身から威圧感を伴う『何か』を出し始めた。

だが一向に俺達に変化が起こらないことに首を傾げると、奴は眉間に皺を寄せて呟いた。


「何故、お前達には効かないのだ?」

「……何のことだ?」

「これはドラゴンにも効いた術なのだぞ?人族であるお前達に効かないはずがないのだが?」


俺はその言葉で、先ほどの威圧感の原因が『隷属の魔法』だったことを知った。

それと同時に、ちょうど俺たちの足元に立っていて奴から見えない位置にいるラドゥガの先ほど放った魔法が、この空間で『隷属の魔法』を無効化しているのではないかという考えに至った。

この事は絶対にこいつには知られるわけにはいかない。

ラドゥガの存在は隠し通さなければ。


もしラドゥガが『隷属の魔法』に対して対処のできる存在だと気づかれて狙われたら。


俺はそう思うと、気が気でなかった。

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