558、一体、何故こうなった!?
前の話で少し『魔道具』の変更点があります。
今回の話は、そちらを見なくてもなんとなくわかる内容なので大丈夫だと思います!
完成した魔道具は、まるで雪だるま人形が座っているような形で鎮座していた。
ようやく魔道具が完成したので、俺はユーリに声をかけようと一瞬だけ目を向けてから、また魔道具に視線を戻すと、そこにはいつの間にか魔道具が無かった。
「えっ!?あの雪だるま、どこ行った!?」
俺は焦って周りを見渡して、どこかにいないかと探す。
すると急に、俺のパンツがクイクイと引かれた。
驚いて下を見ると、そこには雪だるまの見た目をした魔道具が、俺のパンツの一部を掴んで引っ張っていたのだ。
これには流石に3人とも驚いた。
だって作ったのは『魔道具』なのであって、『ロボット』を作ったわけじゃないのだから。
……少なくても、俺はそんなのを作るように念じた覚えはない。
俺がその『魔道具』を凝視していると、その魔道具も俺の方に顔を向けて見上げてきた。
なんとなく俺とそいつの視線が重なったような気がしていると、そいつは急に俺に向かって両手を広げた。
……抱っこしろと?
しょうがなく、俺はそいつを抱っこしてやる。
すると、そいつはまるで子供のように俺の首に手を回してきた。
……なんか、可愛く感じてきたかも。
そんな俺の気持ちが分かったのか、世界樹はまるで笑うかのように枝葉をザワザワといつもより少し激しめに揺すっている。
『ガハハハッ!我ら3人分の神聖力のせいか、その『魔道具』に命が吹き込まれてしまったようですね。シエル殿、その子に名前をつけてやってはどうですか?』
「えっ!名前……ですか?」
『そうですとも。その子はもう自力で物を考えられる能力を持っています。そなたもその子を鑑定してみてはどうですかな?』
俺は世界樹の言葉に従って、その雪だるまの魔道具を鑑定してみた。
『鑑定結果』
この魔道具は世界樹、神竜、神竜のパートナーの3人によって創造された、この世で唯一の『生きている魔道具』です。
本来は『ただの魔道具』となるはずだったのですが、あまりにも高い魔力と神聖力……あとほんの少しの『出来心』のため、命が宿ってしまったようです。
性能としては『浄化』の他に、『体力回復』、『魔力回復』、『状態異常回復』機能があります。
3人分の魔力と神聖力を付与されたので、半永久的に動き続けます。
この子はまだ生まれたばかりの子供ですので、名前を考えて、大事に育ててくださいね。
大切にすればするほど、知能は高くなっていき、様々なことが出来るようになりますよ。
……なんか、大変な事を聞かされたような気がする。
なにはともあれ、この魔道具は『生きている魔道具』とあった様に、もう既に自我というものがあるのだろう。さっき抱っこをねだったように。
俺が戸惑いながら腕の中にいる魔道具を見ると、その魔道具はこくりと首を傾げて「なあに?」とでも言いそうな雰囲気を出した。
「……にぃに、そいつを抱っこしたままはなんか嫌だな。僕も抱っこしてよ!」
ユーリが頬を膨らませて、俺に両手を広げてきた。
……いや、君はもう既に俺とそんなに変わらないほどの大きさだから『抱っこ』は無理だな。
でも俺は心の中でため息をつくと、「抱っこは大きすぎて無理だから、ハグで我慢しろよ?」と言ってギュッと片腕で抱きしめてやる。
ユーリはそれでも満足したらしく、とても嬉しそうだ。
「シエル様、その魔道具は名前を付けられたら、私がお預かりいたしましょう。」
セバスはユーリの顔をちらっと見た後、俺に目配せをして微笑んだ。
俺は目でセバスに「助かった」と合図を送り、すぐに名前をつけることにした。
「う〜ん……色は何だか虹色をしているから……『ラドゥガ』なんてどうだろう?」
俺はその魔道具と目線を合わせ、そう聞いてみた。
するとその子は少し首を傾げた後に頷いた。
よし、本人も納得したようだ。
「じゃあラドゥガで決まりな!……セバス、ちょっと抱っこしてやって。」
「かしこまりました。」
俺はその魔道具改め、ラドゥガをセバスに手渡す。
ラドゥガも大人しくセバスの方に手を伸ばしたところを見ると、この子には俺が言ったことを理解する認識能力がある、ってことが分かる。
そんな俺たちを見て、世界樹はまだ笑っているようで、風もないのにサワサワと葉擦れの音が辺りに響いている。
『……さて、全てが済んだのは良いが、悪い知らせもありそうだ。』
世界樹が急に柔らかな声から鋭い声へと変化させると、急ににどこからか轟音が響いた。
その途端に、警報のようなものが隠れ里に響き渡った。
俺達3人はすぐに戦闘態勢に入る。
一体、この里で何が起こっているのだろうか……?




