320、神父と王妃の関係は?
俺達は祭りのテーブルで屋台で買った夕飯を食べ終わると、家に帰る前に教会のミサを見に行くことにした。
教会はエミリーさんの話の通り、王城の塀に隣接するように建てられていた。
そこの入口から少し離れた所から屋台が始まっていて、王城の塀をぐるっと回って教会の裏手まで続いている。
教会前にはたくさんの人で溢れかえっていて、どうやらミサは教会の中ではなく外で行われる様だ。
入り口のすぐ横には少し高くになっている台があり、その上に聖職者が着るような服を身に纏った身なりのピシッと整った男性と、その横に何故か王妃が立っている。
俺が不思議そうな顔をしていたのか、隣りにいるスコットさんとリッキーがこっそりと耳打ちしてくれた。
「この祭りはこの教会主催だが、王族が協賛しているんだ。以前は違ったらしいんだが、今はあそこに立っている神父と王妃が幼なじみだということもあって協賛しているんだって話だ。」
「まぁ、これだけ大規模な祭りだから、逆によく今まで協賛しなかったなって話だけどな。」
なるほど、確かにこれほどの祭りでは王家も何かしら参加していたほうが自然だ。
そう思って横に立っているリッキーを見上げると、何故か2人を見て眉間に皺を寄せているリッキーがいた。
「どうしたんだ?」
俺はリッキーにしか聞こえないほどの小さな声で聞いてみた。
するとリッキーが「後で話すから、黙って2人を鑑定できるか?」と言ってきた。……なんでだろう?
とりあえず俺は気が引けながらも2人を鑑定することにした。
俺はできる限り『人』に対しては勝手に鑑定をかけないようにしている。
なんか個人情報を盗み見ているような気がするからね。
まずは神父さんの方から鑑定をかけてみた……のだが、何故か鑑定結果は『今のレベルでは妨害されていて見れません』との事だった。初めてだね、こんな結果。
次に王妃の方を鑑定してみると、驚くべき結果が出た。
『鑑定結果』
クレイン国の第一王妃、名前はクイーナ。
彼女は正妃として第一王子セインを出産。その後、国王の子ではない女児を出産。現在2人の子の母親でもある。女児の父親は幼なじみの貴族。
彼女はあなた達の予想した通り、国王の挿げ替えを狙っています。目的は不明ではありますが、その事によって下手をすると神聖法国と同じような状態へと陥る可能性があるので、何とか阻止してください。
あと、もう少し頻繁にこの機能を使ってレベルを上げないと、今回の様に見なければならない時に見ることができないので意識して使ってくださいね?
……とうとう注意をされてしまった。
なんだよぉ、なんか変なこと言うから使いづらいんだってば。もっと普通にしてもらいたい。
俺が顔を顰めていたので、リッキーも俺が鑑定をしたことに気づいたようだ。
「……話は後でな?っていうか、さっきからあの神父こっちをじっと見てる気がしないか?」
リッキーの言葉に、俺は王妃から神父の方へと目を向けると、視線がかち合った……ような気がした。
神父は俺と目が合うと、逸らさずにさらにじっと目を見てくる。
俺も負けずに見返していると、少し頭が痛い気がしてきた。
俺は頭をブルブルっと振ると、どうやらその感じは無くなったようだ。……一体、何だったんだ?
すると神父は眉をひそめた後、俺から目線を外す。
次にユーリの方を見た神父は、俺の時と同じくじっと見つめた。
そんな神父にはお構いなく、ユーリは俺に微笑む。
そんなユーリを見てセバスも嬉しそうにニコニコしていた。……何だ???
すると神父は何かを諦めたかのように1つ軽くため息を着くと、会場を見回した。
「それではこれから『豊穣祈願』の祈りを捧げたいと思います。皆さんも目を瞑って祈りの仕草をとってください。」
神父はそう言うと、自らも両手を胸の前で組み、目を瞑った。
それに倣って周りの人達も同じ仕草をする。
もちろんスコットさん達もだ。
だから俺達3人も同じ仕草をする。
すると何だか身体から少し魔力が抜けたような感覚がした。
しばらくすると神父が何か唱えている声が聞こえる。
体感で10分ほどだろうか?
神父の声が聞こえなくなると、周りが一瞬光る。
「……はい、これで今年も無事に『豊穣祈願』が終わりました。お集まりの皆様方、ご協力ありがとうございました。」
神父はそう言うと両手を広げて軽く会釈した。
さっき少し魔力を抜かれたのはその儀式をするためだったんだね。
良かったよ、なんか変なことに巻き込まれているんじゃないかってチラッと思っちゃった。
とりあえず俺達は教会前での儀式後のミサは遠慮して帰ることにした。
なんとなく視線を感じたので振り返ると、またこちらを神父がじっと見ている。
俺は何だか気持ち悪くて、すぐに前を向いた。
なんかあの神父、目つきがとても嫌な感じがする。
一体何なんだろうなぁ?
「……なぁ、ユーリは神父と目を合わせると気持ち悪くならないか?」
俺は教会からかなり離れてからユーリに訪ねた。
「……にぃにも感じていたんだね?」
「ってことは、やっぱり……?」
「うん、あの人、僕やにぃにに隷属の魔法をこっそりかけてきていたんだよ。でもにぃにや僕の方が魔力も能力も上だったから成功しなかったんだよ。」
俺の質問に答えたユーリは肩を竦める。
……マジかぁ。通りで気持ち悪いと思ったよ。
っていうか、ユーリがそれにかからなくて良かったよ!
先代神竜の能力を吸収していて、本当に良かったね!




