301、ラブさん夫婦の赤ちゃん
執事さんに案内された部屋はこの屋敷の談話室なんだそうな。
部屋の中に入ると、中にはソファーに座った2人と赤ちゃんの姿があった。
赤ちゃんは頭も体も布で包まれているのでこちらからはどんな赤ちゃんなのかは全く分からないのだが、赤ちゃんの方を見てあやしているフォードさんの顔を見れば『可愛い』のは間違いないだろう。デレデレな顔だもん。
同じく赤ちゃんの顔を見ていたラブさんが俺たちに気づいて声をかけてきた。
「あら、いらっしゃい!こちらにはいつ来たの?」
「実は今朝こちらに来ていたんですが、ゆっくりと時間取りたかったので、まずはどうしてもやらないといけない事をこなしてから来たんです。」
「あら、どうしてもやらないといけなかった事って何なの?あっ……私が聞いても大丈夫だった?」
「ええ、大丈夫ですよ。実はリッキーの従兄弟が王都にある国立学校に通うんですが、俺も一緒に入学することになったんです。まぁ、俺だけ短期間の体験入学みたいな感じらしいですが。」
「あら、そうなの?じゃあしばらくはこっちにいるのね。それだったらたまには遊びに来てね!楽しみに待ってるわ。」
ラブさんはニコニコととても嬉しそうにそう言った。
「そうだな。この子も産まれたし、ラブの実家にも見せに行きたいし、ちょうど良かったね。」
フォードさんはウンウンと頷いてそう言う。
そっか、そうだよね。
赤ちゃんが産まれたんだから、ラブさんの実家に見せに行かないと!
まぁ赤ちゃんとは言え、もう産まれたのだから一気に転移で行けるんじゃないかな?それなら一瞬だし大丈夫だよね!
俺達はずっと入り口で話していたので、揃ってラブさんの近くへと向かう。
するとラブさんが俺たちに向けて赤ちゃんを見せてくれた。
顔の感じは……フォードさん似かな?
おくるみから見えている髪の毛がふわふわとした、目がくりっとした赤ちゃんだ。
「ほら……この子、私にそっくりなのよ?」
ラプさんはそう言って頭の部分のおくるみを取ってくれた。
すると前髪同様にふわふわとした髪の毛の中に、なんとウサギの耳が!
そっか、『ラブさん似』っていうのは髪の毛とかの事じゃなかったんだね!
「可愛いだろう?特にこの耳なんて、触り心地も良いんだよ?ふふっ、可愛いなぁ。」
フォードさんはそう言ってその子の頭を撫でつつ、耳もさわさわと撫でている。……よほど気に入ってるんだね?
するとラブさんはそんなフォードさんに「そんなに耳を触ったら嫌がられるわよ?」と注意をする。
するとその途端に赤ちゃんが「ふえっ!うぅ〜!」と言って涙目になってしまった。……言わんこっちゃないね。
「ごめんよ、ライク!あまり触らないようにするから泣かないでおくれ?」
そう言ってフォードさんはラブさんから赤ちゃん……ライクちゃんを受け取って抱きしめた。
その途端にライクちゃんは「だぁ~うっ!」と言って頭をフォードさんの肩に叩きつけた。
ちょっと痛かっただろうに、それでもフォードさんはデレデレの顔で頭を撫でている。
そんなフォードさんを見てラブさんは呆れた顔をしながらも嬉しそうだ。
「この人、産まれてから本当に『ライク命!』みたいな人になったのよね。もちろん私も大切なんでしょうけど、息子が一番なんでしょうね。」
ラブさんはそう言って、自分もライクちゃんの頭を撫でた。……おや、男の子だったんだね!
「ところで獣人と人族の子供って、両方混じった姿で産まれてくるんですか?」
俺は気になったのでラブさんに聞いてみると、どうやらそうじゃないらしい。
ラブさんの話によると、赤ちゃんはそれぞれの親の種族ごとの姿で産まれるとの事で、混ざって産まれることはないそうだ。
だから今回ラブさんが産んだのはウサギの獣人の子らしい。
その点ではラブさんは少し残念だったようだ。
「もちろんこの子は私たち夫婦の子供だからこの国の戸籍を取得できるわ。でも、人族の赤ちゃんって見たこと無いから密かに楽しみにしていたのよ。まぁ、次の子に期待するわ!」
ラブさんはそう言って両手を胸の前に持ってきてガッツポーズをした。
……うん、ラブさんまだ若いし、子沢山になりそうだね。
そんなこんなでしばらくラブさん達といろいろ話をしてから屋敷をあとにする。
ラブさん達とは俺が学園生活を終えるまでの間に1度ネシアへと3人を連れて行くことになった。
もちろん俺の転移でね。
赤ちゃんはその時、何かあると困るので俺が抱っこをして、他の人は俺につかまるという事になった。
俺たちが玄関へと出ると、すぐに俺達が乗ってきた馬車が玄関の所にやってきた。
それに俺たちが乗り込むと、馬車が走り出す。
先ほど乗る時にリッキーが御者に「冒険者ギルドへ寄ってくれ」と言っていたから、そこへ向かうんだろう。
しばらく走ると、馬車がまた停まった。
どうやら目的地に着いたらしい。
また皆で馬車を降りると、そこはちょうど冒険者ギルドの目の前だったらしく、物珍しいらしくてとても注目を集めてしまった。
なんかちょっと恥ずかしかったので、そそくさとキルドの建物の中へと入った。
……このあと馬車はどこで待っているんだろう?
そんな疑問が残ったが、とりあえずこの好奇の目から逃れたかったので気にしないことにした。




