302、あのダンジョンはどうなった?
冒険者ギルドの中に入るととても閑散していたが、ちょうど今が昼時で冒険者はみんな出払っているからだろう。
夕方前になればその日の依頼達成の受付で混雑するはずた。
皆でぞろぞろ行くのもなんだからとスコットさんだけ受付に行き、俺達はこの後の昼食のためにギルド併設の食堂へと向かう。
そこは意外と混雑していたので、もしかすると提供される料理が美味しいと評判なのかもしれない。
俺たちは空いているテーブルへと座り、足りない椅子は自前で鞄から取り出す。
「じゃあスコットが来るまでに料理を考えておこうぜ?」
リッキーはそう言うとウエイトレスの女性に声をかける。
ウエイトレスはメニュー表を手にこちらへとやってきて、それを置いていった。
どうやら注文が決まったらまた呼ぶらしい。
俺たちはメニューを見てそれぞれ食べたいものを選ぶ。
ちなみに俺はオーソドックスにオーク肉の野菜炒めにした。バランスは大事だよね!
みんなが注文を終えた頃、スコットさんが帰ってきた。
彼の分はリッキーと同じく、ブル系のお肉のステーキを頼んだよ。ちなみにリッキーの1.5倍だ。
「どうだった?やっぱりダンジョンで何かありそうなのか?」
スコットさんがテーブルにつくと、すかさずリッキーがそう聞いた。
余程気になっていたのだろう。
するとスコットさんは何ともいえない顔をして口を開く。
「いや、ダンジョンはそこまでの大変な状態にはなっていないらしい。俺達がダンジョンを去ってから暫くして『変換期』は終了したとギルドに連絡が来たらしい。だが、その後に一応軍が最下階層から最上階層までどんな魔物が出るのかや休憩所の被害がどの程度あるのかを調べているらしい。それに時間がかかっているらしく、まだ帰ってきていないんだそうだ。ギルドにまわっている噂によると、今回の『変換期』で最下層から10階層くらいまではそこまで急激な魔物の強さの変化は無かったらしい。そこから上は強さが以前より2割増しくらいだとの話もあった。とりあえず俺が収集してきた話はそんなところだ。」
なるほど、そんな大した問題が起こっているわけじゃなかったから、あんな表情だったんだね?
とりあえず俺達は大したことがなかったようでホッとした。
この分なら学校が始まる週明けにはリーシェさんは帰ってきて、教鞭を振るうはずだ。……多分。
「とりあえすダンジョンの方は大丈夫だったとして、だ。今度はシエルの件なんだが……この後、また学校に行ってソエル先生に直談判をしてこようと思っているんだが……お前らはどう思う?」
リッキーはそう言うとスコットさん達の顔を見回す。
皆は頷いて返答した。
それから俺達は運ばれてきた料理を堪能し、ギルドを出ようと受付前を横切っていると声をかけてきた人がいた。
「よう、もう帰るのか?もし時間あるなら手持ちの魔物の素材を売りに出さないか?」
その男性は受付のカウンター越しに、スコットさんにそう声をかける。
スコットさんはチラッとリッキーの顔を見ると、リッキーは頷いた。
「……よく俺達がダンジョンの品をまだ持っているって気づいたな?」
「いや、だってお前たち、他の街でもドロップ品を売ってないだろ?そういうのって案外ギルド同士で情報交換をするんだよ。……で、売ってくれないのか?」
その男性はスコットさんに向かって「頼むよぉ〜」と両手を合わせて頼み込んでいる。
……おかしいなぁ、軍からのドロップ品は無いのだろうか?
あんなに魔物を倒していたのに、回せないほど少なかった訳が無い。
俺がそう思った時、リッキーがその男性に対して話しかけた。
「ギルマス、軍が大量のドロップ品をギルドに回してこなかったのか?」
「そうなんだよ。俺たちとしてもかなり期待していたんだけど、今のところ冒険者が持ち込んだ物しか入荷していないんだ。一体どうしたんだろうな?」
リッキーの問いかけに、その『ギルマス』と言われた人が首を捻ってそう答えた。
「まっ、そういう事だからお前達がうちに卸してくれるのを期待しているんだよ。どうだ、売ってもらえるか?」
ギルマスは期待を込めた目で俺達を見た。
「まぁ……別に出し渋っているわけじゃなく、たまたまギルドに行く時間がなかったんだ。じゃあ聞くけど、どんなのが欲しいんだ?防具にできそうな物とか、武器にできそうな物とかのほうが良いのか?」
「おいおい、そんな色々とあるのか?」
「ああ、あそこのダンジョンは一番上まで行ったからな。そこに行くまでの間は魔法師団長のリーシェさんと一緒に行動していたから、俺達が倒した魔物のドロップ品の半数近くは渡したんだけど、それでもかなりの数があるぞ?」
「本当か!?じゃあ……防具用の素材と魔石なんかもあるか?武器用素材は少量でも良いんだが、この所強めの魔物が街の外にも出るようになってな。それで防具用の良い素材があれば、討伐に向かう冒険者が多少は安全になるから助かるんだ。」
「……なるほど。じゃあフォレストアントと25階層の熊の毛皮と爪のドロップ品を譲るよ。この熊の毛皮、リーシェさんの話だと刃物が通らない程の丈夫さらしいから良い防具になるんじゃないかな。」
「……熊?」
「そう、熊。名前はよく分からん。」
「とりあえず奥の解体場に来てくれ。あそこなら大量の品を受け取れるからな。」
ギルドマスターはそう言うと、俺達を連れてギルドの奥へと向かった。
さて、あの量のアントの外殻や熊の毛皮を見たらどんな顔をするかな?
俺はこのギルドマスターの驚く顔を想像してクフフフと笑ったのだった。




