294、これで安心だね!
「さて、結界もきちんと起動したのを確認したし、あとはその手にある『起動の要石』を使っての起動がちゃんとできるのかの確認だけだね。」
ルーシェさんはそう言って俺の手を見た。
そうだよね~、これが1番不安だよね。
とりあえずはウォールさんに渡す前に俺が試してみなくては。
まずはいま展開している結界を解除し、落ち着くまで待つ。
解除してから5分ほど経って、今度は『起動の要石』に魔力を流して起動させてみる。
すると最初は魔力を流すのに少し引っかかりがあったように感じられたけど、一気に魔力を流したらスムーズに流れるようになった。……なんか詰まっていたのか?
「うん、そっちの方も問題なさそうだね。正規の作り方とはちょっと違うから心配だったんだけど、大丈夫そうだ。」
……あれ?やっぱり問題ありそうだったのかな?
あの引っかかりはそのせい?
でもスムーズに流れるようになったから、問題はなくなったってことかな?
とりあえず俺は結界を解除する。
「……ルーシェさんもやってみます?」
「そうだね、作った本人が試すより、作った人以外が試すのも大事だよね。実際、使うのはここの領主なんだから。最後にはここの領主にも使ってもらおう。」
ルーシェさんはそう言い、俺から受け取った要石を手に握る。
そして自分の魔力を流して結界の魔道具を起動させた。
「……うん、大丈夫そうだ。魔力を流した時も何も異常は見られないし。これで完成したと言えるかな。」
そう言いながら、自分が起動した結界を見上げた。
そしてすぐに結界を解除する。
まだまだ仕事があるらしいルーシェさんとはその場で別れ、俺たちも屋敷へと転移で戻った。
そしてまずはウォールさんのいるシェリーさんの部屋へと向かった。
ドアをノックして声をかけると、中からウォールさんの入室許可の声がした。
俺達3人は揃って中に入る。
中ではウォールさんが産まれたばかりの赤ちゃんを抱っこしてデレデレとあやしているところだったようだ。
その脇ではベッドで体を起こしているシェリーさんが、そんな2人を優しい目で見守っている。
「やあ、シエルくん。どうかしたのかい?」
ウォールさんはそう言って俺の方を見た。
俺たちは3人に近寄って、結界の魔導具が完成したから設置して来たことを伝える。
「おぉ~、完成したんだね!それでどうだい、しっかりと結界は張られているのかい?」
「ええ、俺が2度、別な人が1度起動してみましたが、問題はなかったてす。ウォールさんも1度起動してみてもらえませんか?」
「ん?私もかい?ちょっと待ってくれるかな、この子をシェリーに渡すから。」
ウォールさんはそう言うと赤ちゃんをシェリーさんに手渡すと、俺の差し出した魔石を受け取った。
それからシェリーさんと赤ちゃん以外で窓際へと向かう。
「じゃあ起動してみるね?魔力を流すだけでいいのかな?」
「はい、流すだけで起動します。」
ウォールさんは俺の返答を聞くと早速六角形の要石に魔力を流した。
すると一瞬で街に結界が張られた。
「おぉ~、これは凄い!これなら何かあっても大丈夫そうだね。ありがとう、シエルくん。報酬は後で渡すから受け取ってくれ。」
ウォールさんはそう言うとすぐそばにいた執事さんに目配せをし、執事さんはすぐに部屋を出ていった。
たぶん報酬を取りに行ったんじゃないかと思う。
「ところで話は変わりますが、シェリーさんが抱っこしている赤ちゃんの名前、もう決めました?」
俺は赤ちゃんの名前を聞いてみたが、「まだなんだよ」との返事が。……え?結構日にち経ったよね?
「最初は私が名前をつけようかと思ったのだが、どうせならユーリくんに名前を考えてもらおうってことになってな。どうだね、ユーリくん、つけてもらえないかな?」
「……えっ、僕?」
思わぬウォールさんからの依頼に驚くユーリ。
確かにこれは驚くよね。っていうか、責任重要だよ!
しばらく「う〜ん」と唸って悩んでいたユーリだったが、顔を上げてウォールさんを見上げた。
「『ジン』なんてどうかな?」
「その理由は?」
「う〜ん……なんとなく?」
ユーリは首を傾げながらそんな事を言う。
……なんとなく、なの?
こんな思いつきで赤ちゃんの名前決めちゃって良いもんなの!?
それを聞いたウォールさんはにこやかな表情で頷き、シェリーさんが抱っこしている赤ちゃんに「お前の名前は『ジン』で決まったよ。良かったな、神竜様から名前をつけてもらって。」と語りかけながら頭を撫でた。
……そっか、そういう見方もあるね。
神竜がつけた名前なら『ご利益がある』かもしれないもんね!
そう言われた本人は一瞬きょとんとしてから、キャッキャ!と手を振って大喜びした。
まぁ……悪くない名前だから良いんかな。
それから俺達はウォールさん達に部屋に戻ると話して、自分に当てられている部屋に向かった。
「なぁ、あの名前本当に適当につけたのか?」
俺は何となく引っかかってユーリに聞いてみる。
するとユーリは横に首を振った。
「実はあの名前が良いんじゃないかって言われたんだよね。でもまさかそんなこと言えないから『なんとなく』って言ったの!」
「……。」
……誰だ、そんなこと言った奴。
でも『例のあの人』なら、確実にご利益ありそうだね!




