293、結界の魔導具を起動させてみたよ
日が傾きかけた頃、俺はセバスに起こされた。
どうやらルーシェさんが来たらしい。
セバスの話によると、1度来た時に、何らかのトラブルがあって夕方に出直すってことになったらしい。
「良かった、元に戻っているね。」
ルーシェさんは開口一番そんな事を言った。
……どういうこと?
俺が不思議そうな顔をしていると「なんでもないよ」と苦笑いして首を横に振った。
それから俺たちは4人揃って街を出る。
設置場所は街の塀の外になるからだ。
「一応僕なりに地形を見たりして考えておいたんだけど、君の方で結界の魔道具をどう置くかは考えてある?」
「はい、一応は。ただ、現地に行ってから作ることになります。」
「じゃあやっぱりしっかりと魔力回復しておいて良かったよ。結界の魔道具を1度は起動させないとならないからね。ああいう類いの魔道具は大事な時に発動しなかった、では大惨事になるからさ。」
ルーシェさんは歩きながら俺にそう説明する。
そりゃそうか、大量の魔物とかが来たから起動して防ごう!と思ったのに起動しなくて全く役に立たなかった、じゃ目も当てられないよね。
「さて、1つ目はやっぱり入り口の門の近くにする?それとも最後に回す?」
「それの違いってあります?」
「大いに違いはあるよ?1番最初ならそこが起動するための要石にできるからね。門のところなら門番が異変を感じたらすぐに起動できるでしょ?領主が起動の権利を持っていたとしても、そこまで情報がいくのは時間が経ってから。門番なら一番最初に気づけるからちょうど良いと思わないかい?」
……なるほど、それは確かに。
でも万が一……そう、万が一だが、起動する前に門番が倒されてしまったら、起動するどころの騒ぎじゃない。
これの対応ってどうにかできないかなぁ……。
「ルーシェさん、この結界の起動ってその『要石』じゃなきゃできませんか?」
「ん?どういう事だい?」
ルーシェさんはそう言って首を傾げる。
なので俺は先ほど考えた事を話すと「なるほど、確かにね。」と頷いた。
「そっか、その事は頭になかったよ。その『万が一』に備えるにはどうしたら良いかなぁ……本来はその6個の魔導具用の魔石の他に小さな魔石も混ぜて一緒に同じ魔法をかけることによって小さな魔石を起動の要石にすることができるんだけど、今回はもう作っちゃったしなぁ。……少し削るか?」
えっ……削るの!?
驚いてルーシェさんを見ると、さらに何やらブツブツと呟きながら考えていた。
その考えがまとまると、俺の方を見て「ちょっと見ててね?」と言って、少し自身の魔力を流すと6個の魔石から少しずつ削り取り、それを俺に手渡してきた。
「はい、これをシエルくんの魔力を込めて捏ねて1つにまとめてね。まとめたら自分の思い描く『起動の要石』の形にするといいよ。」
なるほど……最初に魔石の形を整える時と同じ感じなのかな?
とりあえず俺はその魔石の破片をまとめて捏ね、形を整える。
ウォールさんに渡すのだからとあまり可愛らしい形にせずに、この結界の形にしてみた。つまり六角形だね!
「ただ形を整えれば完成ですか?」
俺は疑問に思っていたことを聞いてみると、「そうだよ」と肯定の返事が返ってきた。じゃあこれで完成だね!
「後は結界の魔導具を順番に置いていき、きちんと起動するのかの確認をすればいいだけだよ。僕が昨日のうちに調べておいた場所に置いていくだけだからそこまで難しくはないから安心して。」
ルーシェさんはそう言って胸をポン!と叩いた。
「とりあえずは入口の所に……この辺に1つ置こうか。シエルくんは一体どんな感じで結界の魔導具を設置するつもりなの?」
ルーシェさんは門番の人が立っている脇の壁際の場所を指さしてそう言う。
……壁際か。いっその事、飾りみたいに壁に埋め込む?
それなら一体感があるから、魔石を埋め込む時の周りの強度さえ高めれば結界の魔道具だって気づかれなくて済みそうだよね!
俺は一応ルーシェさんに相談してみると、なかなか良い案だと言ってもらえた。よし、それで行こう!
とりあえず門の向かって左側の柱付近の壁に、土魔法で結界の魔導具をはめ込んだ石を埋め込む。
……埋め込む穴を作るのに軽くパンチをしたのは、みんなには内緒だ。
「……なかなかワイルドにいったねぇ。僕はてっきり、もっと繊細な感じではめ込むんだと思っていたよ。」
ルーシェさんは呆れた顔でそう言った。
それからルーシェさんの先導による「結界の魔導具を埋め込む」作業もどんどんやっていき、スノービークの塀を一周してまた戻ってきた。
「こうやって歩いてみるとよくわかるけど、この街ってかなり広いよね。まあ僕がいる街もかなり広いけどね!」
そう言いながら胸を張る、ルーシェさん。
「……さて、これで結界の魔導具を6個全て均等になる場所に設置してきたね。あとは起動できることの確認だけ。さあ、起動してみてよ!」
ルーシェさんはワクワクした顔で俺を見てくる。
そうだよね、これだけ広い場所を覆うように結界魔法が発動するのを確認できたら完成だ!
俺は早速手近な魔石に魔力を流して起動する。
すると一気に結界が壁に沿って上空まで上がり、上空では天井みたいに結界が蓋をしていった。
……この分なら一応は完成したようだ。
良かった、問題なく発動してして。
俺はホッとして安堵のため息をついた。




