292、すごく疲れていたようです。。。
ちょうどベッドに寝ている俺の顔に陽の光が当たっているのか、目を閉じていてもとても眩しいと感じたことで目が覚めた。
……いつの間に朝になったの?
昨夜の事はほとんど覚えていないんだが、どうやら夕飯は食べたらしく、今現在お腹は空いていない。
……よっぽどたくさん食べたんだろうか?
「……大丈夫ですか?今朝は目覚めが悪いようですが……。まだ体調は戻りませんか?」
セバスはそう言って俺のベッドの脇に立って顔を覗き込んでくる。
俺が朝起きたのにぼ〜っとしているからセバスに心配されてしまった。
一人で考えていてもしょうがないから、昨日は何があったのかセバスに聞いてみた。
すると俺はどうやらお腹がいっぱいになったことでまたもや強烈な眠気がやってきて、そのまますぐに寝てしまったらしい。
……やっぱり相当疲れていたんだろうね。
そんな事もあったので、朝食を食べた後の午前中はのんびりとして体調を整える事になった。
なにぶん結界の魔導具を起動して安定させるのにもかなりの魔力が必要になるからだ。
一応その事をルーシェさんに伝えなきゃと転移しようとしたところでセバスに「まだ魔力を使うのはやめたほうがいい」と止められた。
「大丈夫ですよ。もしこの街にルーシェさんがいらっしゃったら、私の方からお伝えいたします。どうせ街の入り口付近に転移なさるのでしょう?そちらの方で私が待っていますので、安心してお休みください。」
セバスはそう言って部屋を出ていく。
でも……いつ来るかわからないんだし、長時間外で待ってなきゃならないんじゃないかなぁ。
そう思いつつも、俺はまだまだ身体がだるかったのでベッドへ潜り込む。
するとよほどまだ身体は休息を欲していたのか、意識が遠くなるような感覚で眠ってしまった。
「……にぃに、本当に疲れが取れてないんだね。僕の魔力って、にぃにに渡せるのかな?」
ユーリはベッドの脇に椅子を持ってきて座り、シエルの手をつかんで心配そうにそう呟く。
するとユーリの頭の中には、いつものように静かな優しい声が響いた。
『そうですね……君は彼の魔力で育っているし、大丈夫だと思います。ただ……今の君の中には先代神竜の力もありますので、それがどう影響するのかはちょっと前例がないので分かりませんよ?』
「……。でもにぃに、相当身体が疲れてるみたいだし、魔力渡さないと。」
ユーリは頭の中に響くその声に少し考え、返答した。
『君がそう言うのなら、それで良いと思います。ですが一気に渡すのではなく、溶け込ませるようなイメージでゆっくりと渡しなさいね。』
「はぁ〜い!」
頭に響く声はそれきり聞こえてこない。
だがユーリはその声の通りに、ゆっくりと溶け込ませるようなイメージで繋いだ手から自分の魔力を譲渡していく。
すると徐々にシエルの身体が薄っすらと青白く光りだし、しまいにははっきりと光っているのが分かるほどになった。
シエルは相変わらず眠り続けている。
しばらく待ってもその光は収まらないようで、ユーリは「このままだったらどうしよう……。」と焦りだす。
するとその時、部屋の中に転移してくる者がいた。
ルーシェと迎えに行っていたセバスだ。
2人はベッド脇でオロオロしているユーリと、ベッドで光っているシエルを見て訝しげに2人を見やる。
「セバスさんが『主様に何かあったかもしれない』なんて言うから来てみたんだけど……一体、君は何をシエルくんにしたんだい?」
2人を観察していたルーシェはユーリへそう聞いた。
隣ではセバスも頷いている。
「……にぃにに僕の魔力を渡したの。とても体が弱っているようだったから……。でも、言われた通りに少しずつ溶け込むように僕の魔力を流したら、こんな事になっちゃったの。」
ユーリは2人に経緯を話し、最後の方は消え入りそうな声でそう呟いた。
そんなユーリを見て2人はため息をつき、シエルに近づく。
近づいたルーシェはシエルに手を翳すと、病気などになった時に自身の魔力を流して患部を探る魔法を使った。
「……とりあえず大きな異変はなさそうだね。たぶん君が想定以上に魔力を流し過ぎたんだろう。君の魔力がシエルくんに馴染むにはもうしばらくかかると思うよ?」
魔法を使い終わったルーシェは2人にそう告げる。
それを聞いてあからさまに2人はホッとした表情になった。
「でもまあ、何かあると悪いから僕もここで一緒に彼が起きるまで待とうかな!」
「……仕事の方はよろしいので?」
「それを言っちゃあ、だめだよ!……仕方がない、戻るか。でも何かあったらすぐに連絡もらいたいんだけど、どうしたらいいんだろう?」
「そうですね……そういう連絡する手段はギルドには無いんですが?」
「……どうだったかなぁ?あ、でも確かギルド間でやり取りしていたはずだから、あるにはあるのかも?帰ったら調べてみて、今度シエルくんに作ってもらおうかな!」
「……ご自身で作るわけじゃないのですね?」
「だって彼のほうが繊細な作業得意なんだよ。魔力も豊富だしね!」
ルーシェとセバスがそんなやりとりをしている間、ユーリはずっとシエルの手を握りしめて心配そうに顔を見ていた。
「大丈夫だよ、そこまで心配しなくても大丈夫。夕方前までには元に戻っているはずさ。」
ルーシェはユーリにそう言うと「また来るね!」と言って転移魔法で帰っていった。
「……せわしない人ですねぇ。まぁギルドマスターというものは忙しいのが当たり前なんでしょうが。」
セバスはそう言ってため息をついた。
「さあ、ユーリ様。ユーリ様もシエル様にかなりの魔力を譲渡なさっているのですから、ご一緒にお眠りになられてはどうですか?」
「……良いの?」
「良いのもなにも、ユーリ様も魔力がかなり減っておいででしょう?」
「……。」
「さあ、お休みください。」
セバスはそう言って、ユーリをベッドに追い立てる。
ユーリも嫌ではないので子竜姿へと変わり、シエルの隣に横になった。
やはり疲れていたのかすぐに目を瞑って寝てしまった。
「では夕方までお休みください。ルーシェさんがいらっしゃったら起こしますね。」
そう言って2人に布団をかけ直し、先ほどまでユーリが座っていた椅子に座ったのだった。




