291、上手くいったかな?
次期領主の生誕のおめでたい話に加え、翌日の昼にはスコットさん達の結婚式が領主の館で執り行われた事が街中に広まり、さらなるお祝いムードが高まった。
2人はそんな街の雰囲気にとても恥ずかしがり、「前もって聞いていたらその計画は阻止したのに」と言われてしまったが……まぁ2人にとっては一生のうちに1度しかない事だろうから受け入れて欲しい。
そんなお祝い事が続いた数日後 、俺はとうとうこの街の結界の魔道具を完成させた。
この街に帰ってきてから、まずは俺の……いや、スコットさんの握り拳ほどもある巨大な魔石を精製するところから始めた。
これらの巨大な魔石はちょうどタイミング悪く『変換期』というイレギュラーな時期にとれた物だからなのか、非常に魔力が通りづらかったのだ。
だからまずは魔力が通りやすくなるようにルーシェさんのところへ習いに行ったりしたんだよ。
ルーシェさんもなかなかこんな魔石と出会うことはなかったらしく、良い経験になったと喜んでいたよ。
そして精製して魔力の通りやすくなった魔石に俺の魔力を注いで加工を始め、6個の魔石は全て魔法を中に入れる段階までで一旦は止めておく。
ルーシェさんの話だと、1つの魔法を複数の魔石で起動させるようならば一つ一つに魔法をいれるのではなく、みんな揃ってからまとめて入れるんだってさ。
6個揃ったところで一つの器に全て入れ、魔力と魔法を均等に入れていく。
実は意外とこれが難しい。
全く同じと言っていいほど同じ量を6個全てに注ぐのだ。かなり神経を使った。
しかも6個もあるから俺の魔力がみるみる減っていく。
だから俺は慌てて少しずつ入れていくようにした。
そうじゃないと自己回復する前に魔力枯渇でぶっ倒れてしまうからね。……もうあのドリンクは飲みたくない。
そしてやっと……やっと先ほど完成したのだ。
丸1日かけて、やっと完成したよ。
その間、俺は作業を中断するわけにはいかないので食事と水分は全くとってなかったんだよね。
とりあえず完成した結界の魔導具をルーシェさんの所へ持っていって見てもらわなきゃ。
俺は簡単に食事をとってから、部屋にいたユーリとセバスにルーシェさんの所へ行ってくると伝えてから転移する。
「おや、今度はどうしたんだい?」
転移の光が止むと、ルーシェさんにそう声をかけられた。
「やっと例の魔道具が完成したんで、完成したのかの確認をお願いに来たんです!」
「なるほど、完成したんだね。それにしてもよくできたねぇ。6個同時なんでしょ?魔力は大丈夫だったのかい?」
ルーシェさんは心配そうな顔をしていたが、今のところ俺が普通の状態なのでそこまでは心配しているわけじゃないんだろう。
「そうなんです、最初かなりの勢いで魔力を魔石に吸われたんで、途中から自己回復分の魔力でやってました。」
俺は苦笑いをしながらそう答えた。
するとルーシェさんは驚いたようで、「一体どのくらいかかったんだい?」と聞いてきた。
「……丸1日かかりました。」
「……。それは……大変だったねぇ。本当に頑張ったよね。」
俺の返答に苦笑いを返してきたルーシェさん。
そりゃそうか、普通は丸1日もかけないもんね。
おかげで魔力枯渇だけは避けられたけど。
「じゃあ早くゆっくりと休めるように、僕も早く確認してあげなくちゃね。」
ルーシェさんは俺が取り出した箱に入っている魔導具を次々手に取り、よく検分している。……駄目なのはないと良いな。
かなりの時間をかけてしっかりと確認をしていたが、1つ頷くと魔導具を箱に戻す。
「うん、かなりの良い出来だね。これなら街1つをしっかりと守れる結界が張れると思うよ。」
ルーシェさんはそう言って太鼓判を押してくれた。
よし、じゃあ明日にでも設置しようかな!
「その様子だと、明日にでも配置する気なんでしょ?なら僕も一緒にいて、おかしなことがないように指導してあげるね。」
おぉ~、ルーシェさんが直々に指導してくれるなら、街の防衛は完璧になるね!
その後ルーシェさんは明日の為の下見にと、一旦俺と一緒にスノービークへとやってきて、そのまま「どこに配置するのかを考える」と言って街の外へと転移する。
そっか、街の外のほうが結界の範囲が広がって良いよね!
俺はルーシェさんと別れて、部屋へと戻った。
……つ、疲れたぁ……。
俺はベッドにたどり着くとうつ伏せに倒れ込み、そのまま意識を飛ばしてしまった。……おやすみぃ……。
「……。にぃに、帰ってきたと思ったら寝ちゃったね。」
「それはそうでしょう。昨日は食事もとらず、一睡もせずに結界の魔導具を作成していたのですから。魔力枯渇ではなくただの疲労ですので、しばらくゆっくりと休ませてあげましょう。」
セバスがユーリに向かってそう言う。
ユーリは少し不服そうだったが、昨日のシエルを見ていたのでわがままを言うことはなかった。
「じゃあ僕も一緒に寝るよ。久しぶりにミニドラで抱きついて寝ようかな。いつもはこの姿だからくっついて寝るのは禁止されてるしね。」
「では私めはそこの椅子にでも座って本でも読んでいましょう。」
2人はそう言うと、それぞれ行動を開始する。
子竜姿になったユーリはシエルの胸の上へと移動してペッタリと胸に伏せると頭をぐりぐりとしてから目を閉じる。
セバスはそんな2人の様子を穏やかな表情で見ていたが、フフッと笑うと開いた本に目を落とす。
リッキーが「夕飯だぞ!」と言って起こしに来るまで、しばらくそのままの穏やかな時間が流れるのだった。




