「すとーりーもーど」 『0.ちゅーとりある』
今回より最強無敵の【UFA】、メア・スクイレルについての観察記録を始めます。
彼女の特異性を紹介するため、今回から長編記録になります。
主人公は一人の女の子、以前一度記録に登場した女の子だった人物です。
かなりの長編になりますがおつき合い頂けると幸いです。
「さて、今回の記録について語るにあたって、今回の事件を整理しましょう」
赤服で灼眼の眼鏡男は白いカップを片手に語りかける。
彼の名は「日野常磐」、数少ない【UFA】調査員。
そもそも【UFA】とは何か?
【UFA】とは未確認の架空生物の総称で妖怪や幻獣に近しい生物達。
彼等は架空の生物であるために現実世界に実体を持たない。
しかし、彼等は私達の社会に紛れて確実に存在する。
彼等はこの世の理にそぐわない異常な能力を持ち、我々の生活に影響を与え続けている。
その根拠となる記録の採取が調査員である彼の仕事だ。
「今回私は複数体の【UFA】を連れて行動する少女の情報を得て、彼女の調査を行いました」
「は、はぃ……、そうでしたね」
「もてぇ?」
彼は今、小洒落た小さな喫茶店「ペルセア」にて、一人の女性と一羽の鳥と同席している。
幸の薄そうな顔をしたパーカー姿の女性、その頭上に小さな青い鳥がちょこんと乗っている。
頭に鳥を乗せた奇妙な彼女の姿に周りの客や店員が疑問を抱くことはない。
何故なら昼時にも関わらずこの喫茶店に他の客はなく閑古鳥が鳴いていたのだ。
店員もカウンターの奥でグラスを磨きながらテーブル席の彼らを見守る青いバンダナの若店主のみだ。
「調査の結果、彼女を最強無敵の新【UFA】メア・スクイレルとして認定、その危険性に伴い追加調査が行われました。」
淡々と話を続ける日野に対し、組んだ腕を机に乗せ困惑気味に聞き続ける一人と一匹。
口元はへの字になっている。
「そしてその過程でもう一人、面白い人物に出会うことが出来ました」
淡々とした喋っていた日野は口元を緩め彼女に微笑みかける。
「へぇ……?」
「もぉて?」
おどおどしながら視線を逸らす一人と一羽。
「それがあなたですよ、秋谷冬華さん」
「……ど、どうも」
「もてぇ~」
唐突に名を呼ばれ赤面しながら俯く一人と一羽。
「身長154cm、体重55kg、24歳独身、半年前に仕事を辞め現在無職……」
「ちょちょ、ちょっと日野さん!!そんなこと堂々と言わないでくださいよ!!」
「もてもて!!」
淡々と話す日野に興奮気味に手をふりながら制止をかける一人と一羽。
「これは失敬 いつもの癖で調査報告風に語ってしまいました」
「うぐぅ……、そうゆうのいいですか!!」
「……冗談ですよ!」
にらみつけてくる一人と一羽に対して日野は少しはにかんで答えた。
日野の目の前にいる女性、彼女は秋谷冬華。
仕事で貯めた貯金をすりへらしながら暮らす少し疲れた女の子(24歳)。
そして彼女の頭上にちょこんと乗っかった青い鳥は【UFA】の一種、通称「もてもて」
ひよこのような体で首周りについたチャックが特徴的だ。
「……もう!なんですか日野さんは!!」
頬を膨らませる秋谷の様子を察し、その「もてもて」は小さな羽のような腕で彼女の頭を撫でる。
「もてもて!」
「もてもて」の健気な姿に秋谷は落ち着きを取り戻す。
「……ありがとう、もてちゃん」
「もて!もて!」
彼女が機嫌を治したことに喜ぶかのように羽をぱたつかせる「もてもて」。
彼女はこの「もてもて」の一個体を「もてちゃん」と名付け共存生活を送っていた。
「落ち着かれたようなので、手早く本題に移りましょう」
手にしていたカップを机に置き、笑い続ける日野。
「むぅ……わかりました。」
少しだけムスッとしながら秋谷は答える。
「では今回の事件記録『すとーりーもーど』について、あなたと【UFA】達との出会いから語っていただきましょう」
今回の事件記録「すとーりーもーど」は悩める二人の女の子達の物語。
【UFA】に出会ってしまう女、秋谷冬華。
最強無敵の【UFA】で謎の少女、メア・スクイレル。
この二人を巡る奇妙で優しい怪異譚……。




