「ジダイノオワリ」
先に前置きを一つ、「ジダイノオワリ」に出会えたあなたは幸運です。
「ジダイノオワリ」は巨大な……、それはそれは大きな魚です。
その大きさは銀河を飲み込むほどであり、ビルや街など比較にもなりません。
世界中の海水を飲み干しても、彼は喉を潤すことが出来ないでしょう。
この魚にい思いを馳せたかつての人々は多くの伝承を残しました。
世界を支える大きな魚、イスラムでは彼を「ルティーヤー」、またの名を「バハムート」と読んだそうです。
「ジダイノオワリ」は歴史的改変が発生する時、宙の彼方を遊泳しその姿を見せます。
歴史的改変とは、例えば年号が変わるだとか、多くの人が長年共有している「何か」が別のものに変わるときです。
遙か銀河の果てを泳いでいるので人間に目視することは出来ませんが彼の通った道筋は星が踊って避けるため、夜空を眺めていれば出会うことが出来るかもしれません。
「ジダイノオワリ」が私達の前に現れるのは食事のためです。
彼は歴史的改変が起きたとき、宙の彼方から口を開け吸引を始めます。
この吸引によって歴史的改変の対象である「何か」を食し、食べ終わると再び泳ぎ去っていきます。
「ジダイノオワリ」の吸引によって世界は揺れ動き、「自震」が発生します。
この「自震」とは地面が揺れる地震とは異なり彼をみた全ての生き物が中身から震えだす現象です。
とても大きな「ジダイノオワリ」ですが地球からは遠い遠い銀河の先に暮らしているため「自震」によって起きる揺れは僅かなものです。
その震えは貧乏揺すりよりも微弱な僅かな揺れです。
それでいて怯えて震える時にはない不思議な高揚感を貴方に与えてくれます。
それは彼をみた時、私達の中に生まれる感情は「恐れ」ではなく「期待」だからです。
果てしなく広がる宙の先に、果てしなく巨大な彼をみたときに、果てしない未来が見えるからです。
人々は不思議な高揚感を訴え、何かが起きるかも知れないという根拠のない期待を胸に抱きます。
その結果として人々の動きは活発になり、多くの場合経済的に良い影響が発生する傾向があります。
だからといって彼が与えてきた期待が必ずしも実を結ぶということはありません。
大きいからといって別に神様ではないのです。
彼からすれば砂粒にも満たない地球という星に住む人間なんて眼中にはないのかもしれません。
「ジダイノオワリ」はこれまで何度も世界にその姿を見せてきました。
それは時として突然に、時として穏やかに、時として劇的に……。
長い長い時の流れの中に彼はいました。
「ジダイノオワリ」に出会えたあなたは幸運です。
先人達が語り継いできた大きな大きなその魚に出会えたのですから。
あなたの前に現れた時、あなたはきっと何かを「期待」するでしょう。
その「期待」をよいものにするためには動くことが大切……、私はそう思います。
「ジダイノオワリ」だって食事のために動いているのですから。




