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二章2-5 味方最強の敵(1)

 一線、二線、三線────剣が重なり合う度に金属音の甲高い音が響く。

「中々。日頃の鍛錬の程が伺えますな」

 ウルは剣戟の中でコルネリウスに声をかける。対するコルネリウスには答える余裕はなく、剣を振り続けることで返した。

 剣王であった者と剣王にもっとも近い者の間にある絶対的な壁、一朝一夕で越えられるものではない。

 しかしこの時この場合において賞賛されるべきは剣王であった者ではない。ウルが手加減などできるわけがない、一戟が重く確実にコルネリウスの体力を削っている。それを数十打ち合ってなお倒れないコルネリウスこそが賞賛を受けるべきなのだ。

「このような場でなければ胸が昂っていたのかもしれません。……なぜあなたのような人が敵になっているのですか!? あなたの力であれば逃げることもできたでしょう!」

「僭越ながら、騎士である私は国を見捨て逃げることなどできません。国を護る、私の立場は一貫してそれのみでございます。その目的を達するためであれば、敵にも回りましょう。これで、私と殿下のどちらが勝っても国は救われます」

 ならば、二人の戦いに勝者も敗者もでない。どちらに軍配が上がったところで導かれる結果は同じものだといえるだろう。

 コルネリウスにもそれは理解することができた。反論の余地はない。

「ですが、国が救われたとき、そこにあなたがいません。ウル!」

 声は遠くから、しかし張り上げられたのかとても近くから聞こえたような錯覚があった。

 離れた位置でルナに護られて立つアンジェリカの声だ。

「私はあなたとも一緒にこの国で過ごしたいのです! そのためにあなたを取り戻しに行きます!」

「──強い人だ。どうされますか殿下、貴方の妹君が私に勝つことを望んでおられますよ」

 勝敗ではなく互いの及第点を探す苦労をウルはやめる。幼い頃の話を掻い摘んで聞いているウルには、これからコルネリウスが言う答えを簡単に予測することができたからだ。

 コルネリウスは笑い、そして不敵な笑みを残したままウルへ斬りかかる。

「ならば私は妹の前に立ちはだかる壁の一切を壊すまでだ。それがたとえ国を思うあなたであっても」

「然り。ではお相手いたしましょう」

 ウルはコルネリウスの剣を真っ向から受け止めた。鍔迫り合いの末、コルネリウスが押し飛ばされる。

 二人の戦い、違う、コルネリウスの戦いは常に真正面からだ。彼の矜持がそうさせている。対するウルはコルネリウスに合わせて戦い圧倒することで、諦めさせようとする。

 どちらも譲れぬものがある。互いに斬り結びながら、自分こそが国を救うのだと、意地を貫き戦いは激化していった。


もう少し長くしよう。

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