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二章1-8 異端の王子(3)

 時は戻り、その日の夜。

 ルナとディグマンを含む数名の騎士達はウルが暮らしていた小屋に集結していた。部屋の真ん中に置いてある机を囲んでいる。

 アンジェリカとコルネリウスとドミニクには集まることは伝えていない。心配をかけないようにするということもあるが、別の理由が大きい。


 名も無き騎士は王族を護る剣。

 であるなら、王族を護るために刃を研いでおかなければ。

 

「さて、これからの方針を決めよう」

 ディグマンが夜の集会を開いた理由を口にする。

 王子を奪還してから数日が過ぎてまだ何も変化がない。ハロルドの軍が国中を捜索することも、横暴を働いているという噂も聞かない。表に出すことはないが静か過ぎることが逆に騎士達の不安を募らせる。

 だがディグマンは口には出さないがわかっていた。国王が言っていたことだ、ウルのことを今回は諦めろと。ウルが何をしているのか知っている、おそらくはアンジェリカを待っていた時と同様、頼まれたのだろう。ならば今、他の地域で横暴が起こることはない。ウルがそれを許さない。

「討ってでるか、護りに入るか。この場所以外で我等に生きる場所は無い」

 二択だ。逃げることはできない。逃げる場所がない以上その選択肢はない。無理をすれば逃げることはできるだろうが、一生逃げ続ける生活になる。それは王族に不穏な生活を送ってもらうということ、安全な生活とは程遠い。

 ゆえに騎士達は考える。アンジェリカと二人の王子が生活するために必要なことはなにかを。

「討ってでる」

 声が小屋に響いたのはその時だ。小屋の扉を開け、重たい響きのある声を発したのはコルネリウスだ。

 伝えていなかったはずだが、当然のように現れた。

「あそこには私の父上が、国王がいる。取り戻さなければならない」

「コルネリウス様! どうしてここに!?」

「ドミニクから聞いた。奴に秘密は通じない。私は自分が必要だと思い駆け付けた次第だ」

 コルネリウスは机の一辺に歩み歩み入る。

「私は討ってでる。やられたまま引き返す訳にはいかない。ドミニクの奴もやられたままでいるような奴ではない。いずれ奴なりの方法で討ってでるだろう」

 腰に下げる剣の柄に手をかける。方法などこれから考える。目標をたてるときに方法など考えるべきではない。

「私はフェルディナント王国に執着はないが、アンジェリカが安全に生きていくうえで障害となるなら、これを払わなければならない。我等兄弟の誓いのために」

「兄弟の誓い、ですか……?」


「私とドミニクは互いに殺し合っていた。次期国王になるべく本気で互いの命を奪いあった。奴が張った罠を打ち破り、私の攻勢を環境を操って食い止める。何度も繰り返ししていたが最後にアンジェリカが巻き込まれた。幸いアンジェは生き残った。以来私達兄弟はアンジェのために動くことを誓ったんだ」


 コルネリウスは話し、机を叩く。

 聞くだけではあまりに浅い理由であるが、それでもコルネリウスを動かすのはその理由だ。

「アンジェは王に相応しい。私のような剣しか取り柄のない者も、ドミニクのような策しか取り柄のない者も相応しくない」

「しかし国は滅びます。王に相応しくとも国がなければ意味がありません」

 国がなければ王は即位できない。王がなければ国は成立しない。どちらも先に出でず後に出ない。ある日、そこに誕生するものが国である。

「私はアンジェが王であればいい。国などなくていい。国なんてものがあるから大切なものを見失う。私はもう二度と過ちを犯さない」

 故に、

「討ってでる。誰かに国を滅ぼされるならば、私がアンジェにとって良い形で私が滅ぼしてくれる」


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