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二章1-7 異端の王子(2)

 数日前。

 鉄壁に周りを絡められた城への侵入方法、国王奪還の失敗、名も無き村の住人が王族を護る騎士であること。これらすべての話を無言で聞き続けていた二人の王子は、二人とも違う反応を見せた。

「ってことはもう親父は逝ってるなー。俺が襲撃者ならそうするし、あのハロルドなら絶対にそうするだろうなー」

 特別悲しそうに声を振るわせることもなく、むしろ明るい声でドミニクが言う。ハロルドについても親交がある物言いだ。

「国王……後のことは私に任せ、安らかにお眠りください」

 胸に手を当て目を閉じるコルネリウスは、静かに父へ言葉を呟いた。

 コルネリウスは目を開き、自分を取り囲む集団を一人ずつ確認する。誰もが体のどこかに人ではない部分を持っている。『非人類』であることは見て取れる。

「まずは礼を言う。私と私の妹を護ってくれてありがとう。ドミニクは助けなくてもよかったがな」

「ありがとねーみんなー! ま、コル兄のことは助けなくてよかったけどねー」

 程度の違いこそあれ表面上二人は明るくにこやかな受け答えをしていた。だが足は相手の足をげしげしと蹴りあっている。

「お兄様、喧嘩はなさらないでください。そんなお兄様を見ると悲しくなってしまいます」

 アンジェリカの一言で二人は互いを蹴る足を止める。頭が上がらないらしい。

 一通り場所と状況を確認し終えた後、アンジェリカは二人を見つめる。

「最後に、お兄様に確認したいことがあります」

 声を低くして、

「お兄様にはもう私を、アンジェリカを見てくださいますか?」

 それはアンジェリカにしかわからない二人の兄へ向けた戯言だ。ルナでさえ真意を知ることはできない。

 コルネリウスとドミニクの二人は真意を知っているのか、一度視線を交わして頷いた。

「では良いのです。お兄様、おかえりなさい」

 おうと珍しく二人は同じ言葉で答えた。

 その後、当面どの部屋を使用するかという口論を繰り広げ、どちらがより良い部屋かという激論を超えて、ようやく決まった部屋に収まったコルネリウスとドミニク。

 二人はすぐに部屋を出て、互いに行動した。

 コルネリウスは地下を出て剣の素振りを始める。日課だとか言って、剣を振る。言葉通り毎日欠かさずに行っていることなのだろう、振っている剣の柄は黒く変色している。それが血が固まった故にできたものなのか掌の垢がこびり付いたものなのか、本人すら知るよしもないだろう。

 最初、剣を振るコルネリウスに話しかけていた名の無い騎士達も、何も答えず聞こえず剣を振る。それが自分の剣への愛だと言うかのように。感化された騎士達も口を噤みコルネリウスに並んで剣を振り始めた。

 ドミニクは部屋を出て地下を探検する。途中で出会う騎士達と言葉を交わし、巧みに輪の中に入りこむ。

 病的に人の輪に入ることが上手いドミニクは、新しい場所に訪れたときに必ずこういった関係の構築をする。自分にとって信じられるか信じられないかを図っているらしい。

 二人の王子は器用に、そして不器用に村へ馴染んでいき、その一日で完全に馴染みきってしまった。

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